ホモってホントにいるんだね…
ははは、更新が遅れた理由はPSOやってたからではない!断じて違う!
人気のない迷宮は、驚くほど静かだった。
ただただ、足音だけがこだましている。
無機質な構造が、余計に寒々とした雰囲気を加速させていた。
だが、その静寂の中、息遣いだけが妙に耳に届いていた。
ひどくストレスにさらされた精神は、その息遣いがパーティーのものなのかそれともモンスターのものなのかにわかに判断しづらくなっている。
疑心暗鬼に陥り、すぐそばにモンスターがいるのではないかと錯覚する。
だが、隣にいるのが味方だという理性が、本能の―恐怖の暴発をかろうじて押さえている。
そんな重苦しい空気に徹たち一行も支配されていることもなかった。
「あーもう、あれから何もモンスターでてこないとか、どうゆうことなの?迷宮仕事ろしろよ。あれか?ストライキか?俺たち訪問者と体張って闘ってるからもっと危険手当出せよとかか!?んでもって、ディーナシーのほうはどうせ死ぬんだからいらねーだろっていってんだろー」
トオルの能天気な声が鳴り響いていた。
「もう、もう少し緊張感と言うものを持ってもいいんじゃないの?」
パーティーの前の方から、ため息とつっこみが入る。
「だって暇なんですもの!」
「暇って…キャンプからまだ10分しか歩いていませんよ」
「フィーネちゃん違うのだよ。ここで問題なのは時間ではないのだよ」
「なんだっていうんだよ」
エッカルトのイライラした声が、響いてくる。
2時間休んだとはいえ、エッカルトもフィーネも完全にいつもどおりというわけではない。
知らないうちに神経がささくれ立って、余裕を失っていた。
「それは、俺が暇だってことだ!」
「もっと緊張感を持ってください。今は迷宮のなかですよ!」
珍しくフィーネも徹に怒っている。
「なーに言ってんだよ。もっとリラックスしようぜ。何事も力が入りすぎるとよくないぜ。力が入りすぎて硬くなってんじゃないの?硬くていいのは、鎧とチンコだけでいいんだよ」
「おい!いきなり下ネタかよ!ここには、女の子だっているんだぞ!」
(おっと、エッカルト君の食いつき半端ねえ)
「ふふふ、エッカルト君はわかってない!女性だって、同じ人間。俺たちが、性に興味があるように女の子だって興味があるんだぜ。いやって言いながら、興味津々みたいな!」
「はいはい。そんなのカーマさんの妄想だろ」
「そんなことはないぞ。もともと、動物の中で万年発情型なのは、人間とウサギぐらいだぞ。しかも、男が常に精子を精巣に貯めて発情してるように女の子だって、卵巣からの成熟卵胞が排出するたびに発情が誘起されて、エロくなるんだぞ」
「詳しすぎてわからん!」
「それよりも、トオルはなんでそんなに詳しいのよ…」
「カーマさん…変態です」
トオルの専門的な説明にブーイングしか返ってこない。
「馬鹿な!魔術師として、科学的なあらゆることを知ることは大事なことだ。そこから魔術における心理へとつながっていくんだぞ!それにだな、ヴァニルクランの女連中なんて、珍しくカウンターに集まっていると思えばさ。おやっさんの彼氏の話を根掘り葉掘り聞いているんだぜ」
「ん?それがどうかしたのか?」
エッカルト君は、徹の話に気づかずに疑問の声をあげる。
だが、その隣でカシアとフィーネは、徹の言わんとしたことが分かったらしく少し頬を染めていた。
「あー、うちのおやっさんとアネット君は、いわゆる同性愛者ってやつだから」
「えっ…?ホモ?まさか…」
「いいや。ヴァニルクランの酒場の主人がホモっていう話はかなり有名な話だったよね。彼も隠そうとしていないし」
カシアが絶妙なタイミングでフォローしてくれる。
その口調は、徹の話に並々ならない関心があると物語っていた。
「そうそう。うちのクランは結構、性に対して寛容だからねえ」
「でも、ホモと女の子たちが何の話をしていたっていうんだよ」
「なにって、決まってんじゃん。寝技を聞いているんだよ」
「寝技?」
「やっぱり、男の気持ちいところとかしてほしいことを聞くのは、男に聞くのが一番効率いい。しかも、ホモだったら、男なうえにする側だから話がとても参考になるんだってさ」
「うわあ…」
エッカルトは徹の話にドン引きしていた。
「まあ、俺もかぶりつきでおやっさんの彼氏の話を聞いているやつらには引いたけどなー」
エッカルトは『まあそうだろうな』とうなずいている。
「しかも、俺が所在なさげに立ってるとなんか話振ってくるんだよ。俺は、どいてほしいんであって仲間に入れてほしいんじゃないんだよ!」
「それで、どうしたの?」
「んむ。俺の席を占領していたからな、いってやったさ!」
そこで、徹は一息ついて、拳を高く上げる。
「『そんなこと一生懸命聞いているけど、お前らにしてあげる相手なんているのか?』と!!!」
正直、徹に突き刺さるカシアとフィーネの軽蔑の視線が痛かった。
そして、見事に二人のセリフがはもる。
「「最低」」
「その反応もひどくね?俺はただ単に俺の席を無断で占領して、ホモ談義にむりやりノーマル人を誘ってきた輩に一言物申してみただけだぞ!」
徹の言いわけが虚しく迷宮に鳴り響いた。
「はいはい。それぐらいにしておいて。団体さんが来たよ」
カシアの言葉にパーティーメンバーにぴりっっと緊張感が走る。
徹も気配を探ってみれば、足音が5つ聞こえてくる。
どれも、両面宿儺だろうと辺りを付けた。
カシアが後ろに下がり、前線をエッカルトとコンラドが務める。
後衛にフィーネと徹がついて、完全に敵を待つ待ちの体制だ。
先制攻撃を加えるべく、フィーネが詠唱を始めた。
ゴズリ…ガッ…ゴズリ…ゴズリ…ガッ…
薄暗い迷宮の奥からモンスターがその姿を現す。
予想どおり両面宿儺が5体、それに追加して化陀が2匹ほど空中を待っていた。
「混合編成かよ…」
エッカルトがうめくようにつぶやく。
化陀には羽が生えているが、羽で飛んでいるわけではない。
体の内部に魚のように浮き袋という器官をもっている。
徹に言わせれば、『空中に浮く浮き袋って何さ、ヘリウムか?ヘリウムガスが詰まっているのか?しぬわ!』というところだが、どうも魔術的な何かではないかという話だった。
そして、羽の効果も推進力や方向転換に使われているが、音を立てづらい構造になっており、隠密性が高い。
このため、化陀によって、奇襲を受けることが多い。
敵が化陀のみの時はまだましだが、これが混合編成のときは、放置しておくと戦闘中に奇襲を受けるが、先に倒そうとするにも、空中を飛んでいるためになかなか倒しにくいという厄介な敵になる。
だが、今回は…
「…わが前にその怨嗟を表せ
ファイヤーストーム」
フィーネの魔術が敵を焼き尽くす。
敵を屠ることはできないが、両面宿儺は体が焼かれ動きを鈍らし、化陀は羽が使い物にならず満足に動けなくなっていた。
「う゛お゛お゛お゛お゛お゛」
肉が焼ける異臭が立ち込める中、間合いに入った両面宿儺に向かって最初に動いたのは、コンラドだった。
先ほどの戦いで、大槌をはじかれた一軒を反省したのか、今度は腰だめに水平に大槌を構えると緩やかな回転をかけながら両面宿儺に向かって突きを放った。
その突きは、見事に両面宿儺の体幹をとらえた。
両面宿儺は、よけることもできず、手に持っていた鈍器を交差してコンラドの攻撃をはじこうとする。
だが、はじかれたのはコンラドの大槌ではなく両面宿儺の鈍器の方であった。
―キィィイイン
とても澄んだ金属音が鳴り響く。
コンラドの大槌は、鈍器をはじいても全く勢いを減衰させることなく両面宿儺を弾き飛ばした。
弾き飛ばされた両面宿儺は、無様に壁にぶつかり、紅い跡を残してその床に転がり落ちる。
「ま゛ずはひどり」
殺した両面宿儺に見向きもせずに、鋭い眼光をほかの個体に向ける。
「ありゃすげえな…」
徹は、コンラドとエッカルトの戦いを眺めてつぶやいた。
「なんか、コンラドの戦い方に鬼気迫るものがあるね。めずらしい」
「多分、最初に戦った時に大槌がはじかれたのが悔しかったんじゃない。ああ見えて、コンラドはプライド高いからね。ああ、それとフィーネちゃんちょっと頼みがあるんだけど」
徹は、魔術で二人の援護をしようとしていたフィーネに声をかけて詠唱を中断させた。
「あの空に浮いているやつらを弓でどうにかできない?」
「えっと…はい。やってみます」
フィーネは、素直に魔術支援はあきらめて、弓を取り出す。
取り出された弓は、取り回しに便利なショートボウというものだ。
弓としては、もっとも原始的なものだが有効射程距離は90m~と長く、強い威力を持っている。
初矢は外れてしまうが、続けざまに放たれた矢は見事に化蛇を貫くことに成功する。
「やるねえ。さすが本職弓なだけあるね」
「トオル、ちょっといい?」
徹がフィーネの弓に感心しているときにカシアから真剣な声をかけられた。
「良いけどどうしたの?」
「うん。あそこを見て」
カシアが指差す床には、うっすらとへこみがあった。
「へこみ?あれがもしかして罠?」
「そう、あれが罠。ここからだと、何の罠なのかわからないけど、このまま戦闘を続けるとコンラドか、エッカルトのどっちかが踏んじゃう」
両面宿儺は、ぼろぼろになりながら後退していた。
そのために、もともと両面宿儺の後方にあった罠の位置へとコンラドとエッカルトは向かって行くかたちになっていた。
「エッカルト!その前方に罠があるのがわかるか?」
徹が叫ぶが、エッカルトは戦いに集中しており返事をする余裕がない。
「フィーネはこのまま残りの化蛇を頼む。カシアは、フィーネのことを」
徹はそれだけ言って、コンラドとエッカルトのところへ駆け出す。
徹は背中ごしにカシアとフィーネの返事を聞いた。
両面宿儺は、出会いがしらに味方を減らされたためにコンラドを警戒し、3人で囲んでいた。
残りの一人が、エッカルトを押さえている。
コンラドが攻撃しようとすれば、一人の両面宿儺が攻撃を受け、ほかの両面宿儺に側面を狙われるために、思い切った攻撃ができない。
大きく踏み込めば、両側の個体が攻撃を仕掛け、かといっても薙ぎ払いは武器を跳ね飛ばされた経験が躊躇させる。
そのために、先ほどから硬直状態が続いていた。
一方エッカルトは、一匹の両面宿儺によって、完全に足を止められていた。
エッカルトの回避能力は高いために、両面宿儺の攻撃を一切食らうことが無いが、攻撃力は以前と大して変わっていないために、倒すのにも時間がかかっている。
それでも、エッカルトと対峙している両面宿儺は、全身に浅い傷をいくつもいくつも作り血をしたたらせている。
「エッカルトはコンラドのとこへいけ」
駆け付けた徹はすれ違いざまに両面宿儺の首をはねる。
エッカルトとの戦闘で疲弊し、動きが鈍くなっていた両面宿儺は、碌な抵抗らしい抵抗すらできなかった。
頭部の二つのった首は、ころりと体から転がり落ちた。
残された体は、数秒経ってから、首がないことに気づいたように、鮮血を吹き出しながら崩れ落ちる。
その首から零れ落ちる血はどす黒い色を醸し出していた。
「カーマさん!」
「文句はいい。罠の位置がわからないなら、無駄に危ない橋を渡る必要はない。コンラドの救援にいくぞ。罠のある左側は俺に任せろ。エッカルトは右側を頼む」
それだけ伝えると、徹はエッカルトを連れだってコンラドのところへ向かう。
「コンラドは、正面の敵に集中してくれ」
コンラドの後ろから声をかけると、徹は左にエッカルトは右手に回る。
コンラドは、二人の加勢を得たために一気に勝負をかけにかかった。
それまで、コンラドの踏み込みきれない攻撃だけを何とかしのいでいた両面宿儺にはその攻撃をしのげる余裕はなかった。
他の個体も、エッカルトに攻撃を邪魔され、まるで舞を舞うがような身のこなしの徹によってその命を絶たれていた。
それまでの苦戦がまるで、嘘のようにその戦闘は一瞬で、かたがついてしまった。
両面宿儺を倒し終わり、振り向いてみれば、カシアとフィーネが、倒した化蛇の魔石と皮を楽しそうに回収をしているのが見えた。
「信用してくれているのはわかるけど。それは気を抜きすぎなんじゃないの?」




