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千灯庵語り ———灯の向こう側———  作者: 卜部紘子


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2/7

第二話 今日は何色が、正解ですか?

今日は何を着たらいい?」

「どの選択が一番、運気がいいんでしょうか?」


そんなふうに、日々の小さな問いを「正解」で埋めたくなること、ありませんか?


占いは灯火のようなもの。

暗闇で足元を照らすためにあるけれど、のぞき込みすぎれば、目が眩んでしまうこともあります。


千灯庵に訪れた一人の少女と、霊視の主とのやりとりを通して、

「運気を上げる」の本当の意味を、静かに問いかける一話です。

千灯庵に、朝一番の訪問者が現れた。


頬を紅潮させた少女は、手にスマホを握りしめたまま、早口に言った。


「今日、白がいいって出たんです。

でも赤も気になって……

それって、自分の直感ですか?

それとも何かの“メッセージ”ですか?」


灯主は何も言わず、香箱から数枚の札を取り出した。

柔らかな彩りをまとった札たちが、畳の上に静かに並ぶ。


「この中で、いちばん“いい札”はどれでしょうか?」


少女の問いかけに、主は小さく笑って答えた。


「札に“良い”も“悪い”もないのです。

ただ、“今のあなた”が、必要なものを選ぶだけ。」


少女の眉がわずかに曇った。


「でも……間違えたら、運気が下がったりしませんか?」


そのとき、部屋の奥──

誰も触れていない小さな鏡が、ふいに陽の光を返した。

ひとすじの光が、札の上をすべり、

少女の胸元をやさしく照らした。


灯主はその光を指して言った。


「迷うときはね、自分が選んだ方を照らしてあげるのよ。

“どちらでも良い”のではなく、

“どちらでも、良くできる”。」


「選ぶことは、自由。

でも、選んだあとは──

自分の中で、灯を育てていくこと。

それが、“運を味方にする”ということです。」


しばしの沈黙ののち、少女はスマホをそっとバッグにしまい、

自らの手で一枚の札を引いた。


そこに描かれていたのは、

虹のように色を重ねた、一輪の花。


「……今日、私は赤を着ます。

白い花のピンも、添えて。」


灯主は頷いた。


部屋の隅で見守っていた背中に傷跡のある狐が、ゆるやかに尾を振った。


今日もまた、ひとつの灯が揺らぎ、

誰かの色が芽吹いていく。

【千灯庵・灯守のひとこと】

答えを求めすぎるよりも、

選んだあとに、自分の手で「よかった」と言える日をつくること。


それこそが、

千灯庵の灯が教えてくれる「運気の通し方」なのかもしれません。

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