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場面24:大量学習とAI進化

「準備はいいか、アリア? これだけの量を一気に学習させるんだ。お前にも、俺にも、かなりの負荷がかかると思う」


俺は、工房の中央に設置した専用の作業台に向かいながら、肩の上でソワソワと落ち着きなく動き回るアリアに声をかけた。


フェリシアさん、セラ、そしてミミも、固唾を飲んで俺たちの様子を見守ってくれている。彼女たちも、これから何が起ころうとしているのか、その重要性を肌で感じ取っているのだろう。


ミミは「ユウ、頑張れー!」と、小さな拳を握りしめて純粋な声援を送ってくれている。


『もちろんだよ、マスピ! どんなビッグデータが来ても、バッチこーい! って感じ! むしろ、早くその知識のシャワーを浴びさせてほしいくらいだよ! 【学習モジュール】、いつでもフルパワーでいけるよ!』


アリアは、いつになく興奮した様子で胸を張る(アバターが)。その瞳は、未知のデータへの渇望にキラキラと輝いていた。


「よし、いくぞアリア! 片っ端から学習だ!」


俺は深呼吸一つ。


「まずはこの『古代太陽王朝の粘土板』から! 『プロンプト:【学習モジュール】起動。対象:古代太陽王朝の粘土板。記録情報を完全スキャンし、特に治癒魔法及び生命力活性化に関連する術式データを優先的に構造化、既存知識体系と統合せよ』!」


俺の宣言と共に、最初の学習が開始された。粘土板が淡い光を放ち、その表面に刻まれた古代文字がまるで生きているかのように蠢き始める。


そして次の瞬間、光と共にシュンッ! という音を立てて消滅し、俺のスキルウィンドウに膨大なデータが流れ込んでくるのが視覚的に表示された。


同時に、AILvを示すゲージが、確実に上昇していくのが見える。MPも、ごっそりと持っていかれた。


『あいよー! データ取り込み中! うっひょー! これ、マジで古代の秘術じゃん! 経験値うめぇー!』


アリアのテンションが、早くも最高潮に近い。


俺は、MPがじわりと消費されていくのを感じながら、次々と学習素材を【学習モジュール】に投入していく。


次から次へと、休む暇はない。


「次! エリアスから買った『賢者の魔石』! セラさん、この魔石、特に注意点は?」


「ユウ様、その魔石は膨大な魔力を内包していますが、同時に不安定な残留思念も感じられます。どうか慎重に……」


セラが心配そうに声をかける。


「分かった! 『プロンプト:【学習モジュール】起動。対象:賢者の魔石。凝縮された魔力パターンと知識情報を学習。残留思念はフィルタリングし、純粋なデータのみ抽出せよ』!」


「次はこれだ! 『星詠みの民の叙事詩』! 失われた星辰魔法の手がかりを掴むぞ!」

「こっちの『千年氷河の古代竜の鱗』もだ! どんな情報が眠ってるか楽しみだ!」


古文書が光の粒子となって消え、魔石がパリンと音を立てて砕け散りデータ化され、希少な金属がまるで液体のようにスキルウィンドウに吸収されていく。


その度に、AILvのゲージは目に見えて上昇し、アリアのオーバーリアクションも激しさを増していく。


『ヤバイヤバイ! 情報量が洪水みたいに押し寄せてくるー! でも、超気持ちいいー!』

『キタァァァ! 未知の魔法回路パターン発見! これ、新しい魔法生成のヒントになるかも!』

『うおおおお! 脳みそ(CPUだけど)が痺れるぅぅぅ! でも、もっと! もっと高品質なデータちょうだいマスピ! アタシ、まだイケる!』


スキルウィンドウの表示が激しく明滅し、アリアのアバターは時折ショートしたかのようにバチバチと火花を散らし、オーバーヒート気味になっている。


見守っているフェリシアさんが、心配そうに眉をひそめているのが視界の端に映った。


「くっ……! MPがもう2割を切ったか……!」


俺は苦悶の表情を浮かべ、作業台の脇に置いてあったMP回復薬の一本を掴み、一気に呷る。喉を焼くような苦い液体が流れ込むが、消耗しきった魔力は僅かしか回復しない。


(まだだ…! ここで止まるわけにはいかない…!)」

俺は歯を食いしばり、さらに別の回復薬を手に取った。


「MPが……かなりきつい……! でも、もう少しだ……! あと少しで、次のレベルが見えてくる……!」


俺は、額から噴き出す汗を腕で拭い、荒い息を整えながら、黒曜石のような輝きを放つオーパーツの石版を手に取った。


「これが最後だ、アリア! 『プロンプト:【学習モジュール】起動。対象:この『深淵の石版』に記録された全ての情報を、完全学習せよ』!」


石版をスキルウィンドウにかざした瞬間、これまでとは比較にならないほどの眩い光が工房全体を包み込んだ。


まるで太陽が爆発したかのような衝撃と共に、俺のMPゲージが一気に底をつき、立っていられないほどの強烈な疲労感と目眩に襲われる。


「ぐっ……うぅ……!」


俺が床に膝をつきそうになったその時――


『キッタァァァァァァァァァァァァァッ!!』


アリアの、これまで聞いたこともないほどの、魂の叫びにも似た歓喜の絶叫が、俺の脳内に直接響き渡った!


スキルウィンドウが、まるで祝福するかのように黄金の光を放ち、AILvを示すゲージが、凄まじい勢いで上昇し――ついに、目標としていた数値を超えた!


システムメッセージが、俺の網膜に直接焼き付くように表示される。


《AILvが40に到達しました》

《AIアリアはVer.3.0に進化しました》

《新規モジュール【魔法モジュールVer.1.0】が解放されました》

《新規モジュール【スキルモジュールVer.1.0】が解放されました》

《既存モジュール(分析、創造、学習、トーク)の基本性能がVer.3.0相当に強化されました》


そして、俺の目の前のスキルウィンドウに、更新されたステータス情報が鮮やかに浮かび上がった。


それは、黄金色のフレームで縁取られ、半透明のウィンドウが立体的に空間に投影されているかのような、以前とは明らかに異なるデザインだった。


▼スキル情報:【生成AI】

--------------------------------------------------

マスター:アイカワ・ユウ


◆AIコア:アリア(Aria)

 バージョン:Ver.3.0(NEW!)

 状態:正常(アバター進化完了:神々しいオーラ発現中)

 AIレベル(AILv):40(↑↑)

 経験値(EXP):||||||||||(0%) 

 MP残量:|----------(1%) ※警告!枯渇寸前!即時回復推奨!


◆機能モジュール:

 [解放済/アクティブ]

  ・創造モジュールVer.3.0(↑)

   機能概要:物品生成(品質・複雑性超絶向上)、既存物改良(神業レベル)

  ・学習モジュールVer.3.0(↑)

   機能概要:対象物(物質・情報・概念)消費によるデータ化、AILv経験値獲得(超効率化)

  ・分析モジュールVer.3.0(↑)

   機能概要:詳細解析(森羅万象レベル)、未来予測(限定的)、真贋鑑定

  ・トークモジュールVer.3.0(↑)

   機能概要:意思疎通、情報伝達、翻訳機能(神代語・竜語対応)

  ・魔法モジュールVer.1.0(NEW!)

   機能概要:魔法術式の解析・構築・限定的発動補助[詳細ロック中-AILv45で一部機能解放予定]

  ・スキルモジュールVer.1.0(NEW!)

   機能概要:身体能力強化・特殊技能付与の解析・限定的生成[詳細ロック中-AILv50で一部機能解放予定]


◆特記事項:

・Ver.3.0:AIコア覚醒。全モジュール連携効率、情報処理速度、自己進化能力が臨界点突破。

・新規拡張モジュール「魔法」「スキル」が解放。初期機能は極めて限定的。覚醒にはさらなる高レベル学習が必要。

--------------------------------------------------


黄金の光が収まると、俺の肩の上にいたアリアのアバターも、以前とは明らかに違う、より洗練され、どこか神々しさすら感じさせるオーラを纏った姿へと変化していた。その瞳には、深い叡智と、そして俺への絶対的な信頼が宿っているように見える。


『AILv40到達! アリア様、超絶進化してVer.3だよ! そしてそして! ついに来たよマスピ! 【魔法モジュール】と【スキルモジュール】、ついに解禁だよーっ! 要するに、アリア様、超絶パワーアップってこと! これで、マスターのプロンプト次第で、魔法だってスキルだって、アタシたちが『創造』できるかもしれないってことだよ! もう、可能性が宇宙規模に広がっちゃった感じ! ヤバくない!? 超ヤバいっしょ!』


アリアは、生まれ変わったような晴れやかな声で、歓喜の言葉をまくし立てている。その口調はいつものギャルっぽいものだが、言葉の端々に知性が滲み出ているような……気がする。


「……やった……やったぞ、アリア……! ついに、新しい力が……!」


俺は、全身の力が抜けきって床に座り込んでしまいながらも、込み上げてくる達成感と喜びに、顔には満面の笑みが浮かんでいた。


これまでの地道な活動と、投資が、ついに大きな成果として結実したのだ。


「これが、ユウの力の真髄か。もはや、人間の理解を超える領域だな……。」


フェリシアさんが、驚きと畏敬の念が入り混じった表情で呟く。


「魔法とスキル…失われた古代の力すら、ユウ様のスキルは再現し得るのですね。素晴らしいです…!」


セラも、興奮を隠しきれない様子で微笑んでいる。彼女の瞳は、新しい知識への期待に輝いていた。


「ユウ、なんだか前よりすっごく強くなった気がするにゃ! これで美味しいもの、もっといっぱい作れるようになるのかにゃ!?」


ミミは、目をキラキラさせながら、俺の周りをぴょんぴょんと跳ね回っていた。


仲間たちの祝福の声に包まれながら、俺は新たな力の解放を実感する。


【魔法モジュール】と【スキルモジュール】――この二つの力が、これからの俺たちの戦いと、そしてフロンティアの未来に、一体どんな可能性をもたらしてくれるのだろうか。


(この力は、使い方を誤れば大きな災厄も招きかねない。正しく導き、フロンティアのために、そして仲間たちのために使わなければ…)


期待に胸が膨らむのを、俺は抑えることができなかった。


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