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場面13:フロンティアへの旅(仮パーティ結成へ)

フェリシアさんが仲間(仮)に加わってから最初の夜。俺たちは少し広めの場所を見つけて焚き火を囲んでいた。

 

正直、食事は相変わらず例のキノコペーストを温めたものだが、一人よりは二人、二人よりは三人の方が、心なしか味もマシに感じる…いや、それは気のせいか。


フェリシアさんは、差し出したそれを最初は訝しげに見ていたが、一口食べるなり無言で勢いよく食べ始めた。相当、お腹が空いていたらしい。

 

(昼間の戦闘…オークは強かったが、俺もただ見ていただけではない。最初は粗末なものしか作れなかったが、今回はちゃんとした機能を持つアイテムを生成できた。どう指示すれば、どういう結果が得られるか…試行錯誤の中で、少しずつ見えてきた気がする。この調子でスキルを成長させていけば、もっとやれることが増えるはずだ)

 

AIスキルの可能性を再認識し、少しだけ自信を取り戻した俺は、意を決して本題を切り出した。

 

「フェリシアさん。昼間はありがとう」

 

俺が改めて言うと、フェリシアさんはぶっきらぼうに答える。

 

「いや、礼を言うのはこちらだ。貴公らの助けで、あの状況で一体でも数を減らせたのは確かだ。……かなり妙な道具だったが」

 

どうやら、俺たちが加勢したこと自体は認めてくれているらしい。

 

「それで……実は、俺たちがこの森にいるのには理由があって……隣にいる、この子のことなんだが」

 

俺はセラの事情を、知っている範囲で話した。

 

「詳しい事情は、まだ聞けていない。無理に聞くのも酷だと思って。ただ、彼女がエルフであること、そして、森で奴隷商人に追われていたところを、俺が助けたんだ」

 

俺がそこまで言うと、フェリシアさんは眉をひそめた。奴隷商人、という言葉に何か思うところがあるのかもしれない。

 

俺は続ける。

 

「……それで、彼女はどうやら『銀月の呪枷』っていう進行性の呪いにかかっているらしい。アリアが分析してくれたんだが、それを解くためには『月光の涙』というアイテムが必要で……」

 

俺の話を黙って聞いていたフェリシアさんは、最後に俺が口にしたアイテム名に、ぴくりと眉を動かした。

 

「……ふむ、『月光の涙』か。聞いたことがあるな」

 

彼女は何かを思い出すように顎に手を当て、

 

「それなら、ここから少し行った先の街――『辺境都市フロンティア』の近くにある『月光の祭壇跡』にある、なんて噂を聞いたことがある」

 

と言った。

 

噂……か。確かな情報じゃないかもしれないが、今の俺たちにとっては唯一の手がかりだ。信じるしかない。

 

「フロンティア……祭壇跡……」

 

俺の隣で話を聞いていたセラが、小さな声でその地名を繰り返す。セラの顔が上がり、驚きと、そして感謝を込めたような視線がフェリシアさんに向けられた。彼女の瞳に、再び希望の光が強く灯ったのが分かった。

 

「ありがとう、ございます、フェリシア、さん……」

 

セラが途切れ途切れながらも感謝を伝える。

 

「ありがとうフェリシアさん! すごい情報だ!」

 

俺は思わず声を上げた。目的地が見えた。フロンティアという街と、その近くにある月光の祭壇跡。そこへ行けば、セラを救う手がかりが掴めるかもしれない。

 

「それなら、お願いがあるんだ! 俺たちだけじゃ、フロンティアまで辿り着けるかも分からない。どうか、フロンティアまで一緒に行って、その祭壇跡の調査を手伝ってくれないだろうか? もちろん、報酬は…今はこれだけしかないけど、必ず払う!」

 

(……とは言ったものの、財布はほぼ空だ。フロンティアに着いたら、まず金を稼がないと!)

 

俺はサトウさんから託された(そして奴隷商人たちに大部分を奪われた)なけなしの金が入った袋を見せる。

 

フェリシアさんはしばらく黙って焚き火を見つめていたが、やがて意を決したように口を開いた。ちらりとセラの顔を見たような気がした。

 

「面白そうな話ではあるな。腕試しにもなるかもしれん。助けられた恩もるあし、それにお前のその奇妙な力も、少し興味がある」

 

 フェシリアさんはうんうんと頷きながら続けた。


「いいだろう、その遺跡を調べるまでは付き合ってやる。ただし、これはあくまで『一時的な協力』だ。勘違いするなよ? それに、報酬はきっちり弾んでもらうからな!」

 

「本当か! 助かる!」

 

やった! これで強力な護衛兼案内役(?)ゲットだ!

 

俺の肩の上で話を聞いていたアリアが、パッと羽を広げて喜びの声を上げた。

 

「やったー! これでフェリ姉ともダンジョン攻略だ! 超アツいじゃん!」

 

「誰がフェリ姉だ! やかましいぞ浮遊物! 足手まといになるなよ!」

 

「ひゃっ!? 浮遊物って言うなー! 私は超絶美少女AIアリアちゃんだ!」

 

アリアはぷんすかと怒っているが、これでひとまず、フロンティアまでの旅の仲間(仮)ができた。

 

俺は改めて、隣に座るセラと、そして新たに加わった頼もしい(?)剣士フェリシアさん、そしてやかましい相棒アリアを見回した。

 

目的地は決まった。あとは、そこへ無事に辿り着くだけだ。


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