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纏物語  作者: つばき春花
第壱章 五珠の御魂と月下の刀
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其之伍話 魔法少女じゃないけれど

 オジイ達から授かった『五珠の力』が影響しているのか舞美の怪我は、医師が驚くほど驚異的なスピードで治癒していった。そして入院一週間後には、普通に歩く事が出来るほどに回復していた。


 しかし、いつ何時『五珠の力』を奪いに悪霊共が襲ってくるのか分からない。そこでオジイ達は怪我を負い、まだ術師として未熟な舞美が療養している五階に『身隠しの結界』を張り、悪しき者達から舞美を隠した。


 その間にオジイ達が自分達の名前と一人一人が持つ力の属性を舞美に伝授した。


 オジイ達が持つ『五珠の力』は、属性の違いが色により分かれていたあ。


 眉毛が太い東城虎五郎は赤珠せきじゅ属性は、灼熱の焔。


 白髪髭の東城孫四郎は緑珠りょくじゅ属性は、自然と大地。


 卵のように頭が艷やかなのは、東城源三郎。青珠せいじゅ属性は、静水。


 目が細いおジイは、東城又二郎は黄珠おうじゅ属性は、剛。


 あまり喋らないオジイ、東城彦一郎は白珠はくじゅ属性は、浄化と治癒。


 オジイ達個々の力だけでも祓う力は、強力だった。


 そして青珠の源三郎が舞美の前に出で立ち話し始めた。


「舞美よ、お主が悪霊と対峙する時、主ら生身の体では、到底歯が立たぬ。そこで儂ら『五珠の力』を纏い、迎え撃つのじゃ」


 ここでようやく『纏』の意味を聞く事が出来た。


「『纏』って前から聞きたかったんだけど『儂等を纏う』ってどうゆう事なの?」


「まぁ待て。今からその作法をお主に伝授するからの」


 次に、又三郎が前に出て語り始める。


「まずは初歩の稽古だ。先ず丹田に氣を溜める事から始める」


「丹田? 氣を溜める?」


 そう舞美が聞き返すと又三郎は、自身の鳩尾辺りを両手で抑えながら説明をする。


「そうだ、ここに氣を溜めるのだ。自身のこの部分に氣を溜めるのだ。この呼吸法を儂らは『神氣しんきそく』と呼んでいる」


「神氣の息、まず胸の前で合掌し、七拍かけて鼻から息を吸い下丹田に氣を溜める。そして胸の前で素早く拍を打ち『てん』と称え溜った氣を一気に開放する。上手く「神氣の息」が出来ていればお主に変化が現れる」


「わかった! 合掌して鼻から息を吸って吐く! そして拍、手を叩くのね!」


 簡単に復唱する舞美。そして合掌しながら目をつむり、鼻からゆっくりと息を吸い「神氣の息」を始めた。


 一見するとなにも変わりがない舞美の姿、しかし舞美の身体から発する氣が徐々に高まっているのがオジイ達には見えていた。


 まさに神守の血筋 『清い力を持つ乙女』を目の当たりにした五人は驚きお互いの顔を見合わせた。


 そして舞美は、ゆっくりと両腕を広げ胸の前で素早く拍を打ち鳴らした。


『パンッ!』


 拍の音が室内に響き渡る、 そして続けざまに氣を一気に開放するように舞美が叫ぶ!


「纏!」


 すると右手の腕輪が眩く光り輝き、その光が舞美を包み込む。時にすると一瞬の事、その光の中から現れたのは、白く輝く白衣と緋袴を纏った舞美の姿だった。


 それは、神に仕える巫女の装い。そしてその腰には鞘に収められた短い銅剣が差してある。


「きゃー! なに! なんなの! これ? はずいけどカッコイー! しかも浮いてるし!」


 オジイ達が纏った舞美の姿を見て口をそろえて唸った。


(おおぉぉぉ……)


 続けて源三郎が語る。


「纏った儂らの力は強大であるが故に生身の体では到底耐えられん。そこでそれに耐えうる衣、言わば甲冑を今、お主は纏ったのじゃ。


 そしてその衣はあらゆる邪気を跳ね返し、悪霊と対峙するお主を守ってくれるであろう」


 舞美は変身した自分の姿に感激し心が躍った! 何故なら子どもの頃から魔法少女の主人公になる事が夢だったからだ。 

 

 舞美は、纏っている衣を見ながら其れを確認するように何度も何度もくるくる回った。そしてそれは透き通るほど薄く、絹のような肌触りで衣全体からお香のような良い香りが漂っていた。


 続けて彦一郎が語り始める。


「舞美、今お主が纏っている純白の衣は儂らの力が交わっていないもの。その纏に儂等五人の属性が加わってこそ、その纏は真の力を発揮する」


 孫四郎が言う


「つまり我らの力をその衣と同時に纏うのじゃ!」


「それでは次に儂等の力の使い方を伝授するぞ。儂等の力は、相まみえる相手によって纏う力を見極める事になる。


 先程話した通り、五人が持つ『力』はそれぞれ違う属性を持っておる。対峙する悪霊の氣を見極め、纏う力の属性を瞬時に判断し纏うのじゃ。 


 それにより纏う衣も変われば使う得物も変化する」


「ついでに言っておくが儂らの力のせいでお主は、ちょっと面倒くさい事になっとるから、驚かれぬようにな」


(めんどくさいって何?) と思いつつも『変身して魔物と戦うなんて、まるで本当にアニメの主人公みたい!』と能天気な舞美の心は更に躍った。


「では、一度やってみるぞ。舞美、青珠の儂を纏って見せよ」


「よしっやってみる!」


 舞美は頷いて目をつむり合掌し『神氣の息』を始めた。


 そしてゆっくりと手を広げ素早く拍を打つ!


『パンッ!』


 そして唱える!


「青纏!!」


 すると光と共に緋袴が鮮やかな青い花柄に一瞬で変化し、腰の銅剣は黒光りする弓矢と変化した。


「いやったぁ! 出来たよね私っ!!」


 簡単な話だけで五珠を纏う事が出来た舞美に、言葉にならない程、只々驚くばかりのオジイ達。


「よいか舞美、まずは我らの力を理解し使いこなせるようにならんといかん。どのような悪霊と対峙するかもわからんからな。退院の日までこれを使いこなせるように厳しく指導するぞ!」


 怪我人の舞美に、五人のオジイ達から容赦ない激が飛んだ。


 そしてその日から退院の日まで五人から昼夜を問わず指導を受けた舞美。


 腰の銅剣は纏う者の意志で纏った力に応じて様々な形態に変えられる。鞭や刀槍や弓、対峙する悪霊によって自らの意思で変化させる。その為、悪霊の属性を見極める瞬時の判断力が要求された。


 舞美は言った。


「こんなエッチな格好で空を飛び回ってたんじゃ目立ってしまうよ!」


 そう言うと虎五郎が笑いながら返した。


「ハッハッハァ! なぁに心配はいらん! 儂等を纏ったお主の姿や悪霊も普通の人には見えはせんよ。因みにその五珠の腕輪も普通の人間には見えはせん」


 舞美は、虎五郎の言葉に安心した。何故ならこんな派手な腕輪を付けたまま、学校には行けない、と考えていたからである。

                 次回予告……



  そして舞美は暗がりの中、病室から正面に見えるであろう榊森に向けてじっと目を凝らした。


「何も見えないんですけど……」


「舞美……この暗闇、人の目で見える訳なかろう……纏うのじゃ」


「早く言ってよ!」(恥ずかしいぃ!) 


「纏!」


 舞美は、はにかみながら纏の言葉を唱えた。


 五珠の力を纏うと暗闇でも周りの状況がよく見えるようになる。そして舞美は正面に見える森をじっと目を凝らして見つめた。すると鬱蒼と茂る森の中に一本、ひときわ高い木が聳えているのが見える。


「あの森の中にあんなに高い木があったかな?」


           次回『其之陸話 鎮守の守と囚われし御霊』




                   ご一読よろしくお願い致します。


                           


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