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まといものがたり  作者: つばき春花
第壱章 五珠の御魂と月下の刀
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其之弐拾壱話 鬼力の片鱗

「舞美さん……あのね……実は…………僕は……」


涼介が舞美に何かを伝えようとしたその時!


「舞美ぃぃっ!!」


叫びながら羅神に跨った嫗めぐみが疾風の如く二人の間に割って入り飛び降りざま氷刀を振り切った。涼介は、後ろへ飛び退け膝を付き一瞬驚いた表情になったがすぐに体勢を立て直した。そして嫗めぐみは、刀を両手で握り脇構えを取ると、じりっ……じりっと間合いを詰めて行く。


『ジャリッ!』


土を踏みしめる音が一瞬聞こえたその時、めぐみが涼介の懐に風の如く入り込み刀を振る。しかし、その二撃目も難なく躱し後ろに立つ高い電柱のとっぺんにひらりと降り立った。


「その容姿……お前……嫗の子か……」


鋭い眼光で嫗めぐみを睨みながら呟く。二人が交えるその姿を見ていた舞美は、身動き一つできず内心激しく混乱し動揺していた。


(何故?……めぐみさん……彼を斬ろうとしたの?……何故?……嫗の子? 涼介君……めぐみさんの事しってるの?……何故……どうして……)


「彦様方がついていながら何と言う失態……迂闊でした……舞美……」


めぐみは、高い所から見下ろす涼介を見上げ悔しそうに呟き舞美に五珠の腕輪を投げ渡した。いつもであればオジイ達が宿る腕輪は、舞美の右腕に在るのだが塾の時間の間は、蛇鬼捜索に加わる為に嫗めぐみが身に着けていたのだった。しかしその強力な惡気の持ち主と長時間傍にいた舞美の身体にその気配を感じない程オジイ達は、落ちぶれてはいない。涼介は、その気配を微塵に感じられなくする程、完璧にその惡気を消していたのだった。


では何故、嫗めぐみはその完璧にまで消された涼介の惡気を感じ取れたのか……それは古の頃、めぐみは、蛇鬼との戦いの中でその醜く悍ましい惡気を嫌と言う程感じていたからである。めぐみにとって憎んでも憎み切れない親の仇、蛇鬼の惡気。涼介がその惡気をどのように消そうとしても感じ取れない筈はなかった。


オジイ達が慌てふためく声が錯綜した。


「舞美、儂らをもたばかるこの力! 尋常ではないぞ!」


「こ奴から、ものすごい惡気を感じる!」


「こここ、この惡気、桁違いじゃ!」


「舞美……もっと離れたほうが良い……」


「惡鬼め! 天罰を下してやる!」


舞美は、呆然としていた。


(あんなに……私に優しくしてくれた涼介君が鬼? 一緒に笑って一緒におしゃべりして……たった今だって……風鈴の……その涼介君が鬼?)


信じられない、信じたくない……その感情の重圧に舞美は、押し潰されそうだった。


めぐみは、刀を鬼に指し示し、目をを離さない様に後退りをしながら舞美に近づき言い聞かせた。


「舞美……あ奴は、鬼……人のなりをした紛れもない鬼です……。しかも彦様方が気付かぬ程、強い惡力を持った……恐らく奴は、蛇鬼が放った二つの悪しき魂の片割れ……」

 

続けて嫗が舞美に呼びかける。


「舞美、早く纏うのです……あの惡氣……私一人では、太刀打ちできません」


しかし、舞美は、めぐみの呼びかけに纏うどころか身動き一つせず唯、眼上に立つ涼介を見つめ、呆然と佇んでいるだけだった。


「ちっ……」


見かねためぐみは、姿勢を低くし、唸る羅神に攻撃を命じた。


「羅神っ!……神雷一矢……」


羅神の白い身体から白銀の火華が散り始める。


「ガウアァァァァァッ!!」


『バリッバリバリバリッバババリバリバリッ!バアァァァァァァン!』


羅神の雄叫びと共に大共鳴が響き渡り、幾本もの雷矢が涼介へ向けて放たれた。



続けてめぐみが舞いながら言の葉を唱える。


「氷刃舞……」


めぐみが刀を振ると刃身に纏った空気が凍てつき空気が凍てつき宙に氷刃が作られていった。そしてめぐみの刀が振り下ろされると同時に涼介めがけ一斉に放たれた。


無数の雷矢と氷刃が涼介を四方から取り囲む様に走る。しかし……鬼は、その場から動く事すらせず、片手で雷撃を弾き、もう片手で氷刃はをすべて粉々に砕き壊した。


そして……粉々になった氷刃が粉塵となり辺りが靄のようなものに包まれた。それが風に流され視界が元に戻った時、涼介の姿は、何処にもなかった。


辺りが静寂が戻る……めぐみは、元の学生服姿に戻りながら、まだ呆然としている舞美に歩み寄った。そして無言、無表情のまま右手を大きく振り上げ思いっきり左の頬を叩いた。


『パンッ!』


矢継ぎ早に左手を高々と上げ、今度は、右の頬を叩く。


『パンッ!』


そして呟く。


「舞美……鬼を相手に……腑抜けです」


めぐみの言葉に舞美は、ぐっと唇をかみ、こぶしを握り締めるとめぐみに背を向け逃げるように走り去った。


めぐみは、走り去る舞美の背中を見つめたまま今の思いを吐露した。


「蛇鬼の片割れでこの惡氣……あまりにも力の差があり過ぎた……」


そして……呟いた。


「今回は……見逃していただいたのでしょうか……」


つづく……

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