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爆骨姉妹オシマイヨー・後編

 黒い少女が白い少女の後ろに回り込んだ。

「お姉様ー!」

「妹よー!」

 黒い少女が妹で、白い少女が姉だ。妹が姉の腰を掴んで持ち上げると、姉は両腕を伸ばして鉄鞭を水平に構えた。その仕草に和哉は魅せられて(注1)、対応が遅れる。

「「鉄器川(てっきがわ)姉妹の必殺技、オシマイヨー・マーブル・ドライバー!」」

 姉妹が声を揃えて技名を叫び、妹が姉の服の腰に巻いてあった帯を引っ張り回転を付けて姉を投げる。独楽のように回転しながら、白い少女が和哉目掛けて飛んで来た。

「竹とんぼかよ」

 地面に足が着いていない様子を見て毒づく。和哉は横っ跳びに躱したが、クルクルと回る少女が追尾して来た。しかし、再びフラフラとあらぬ方向へ飛んで行く。

「お姉様ー!」

香崙(ころん)、どこ?」

 目を回した白い少女は地面の上で伸びていた。香崙と呼ばれた黒い少女が和哉を睨み付けて来る。

「よくも、華蘭(からん)お姉様を!」

「いやいやいや」

 和哉は避けただけで、華蘭が倒れたのは目を回したのが原因だ。更に言えば勢いを付けて回したのは香崙であった。

「和哉ー!」

 そこへ部隊を率いたジョアンヌとクリスが駆け付けて来る。照美も合流して、部隊総数を倍近くに見せていた。

「香崙、敵はどこ?」

「何を言っているの、お姉様?」

 頭を振りつつ立ち上がる華蘭は、方向感覚が定まっていないようだった。対して妹の香崙は和哉の横に並び、さも味方のような顔をしている。

「さあお姉様、敵はあちらでしてよ!」

 香崙が指し示したのは自らの陣営だった。それを信じて姉の華蘭が鉄鞭を構えて突撃を開始する。呆気に取られている和哉たちの目の前で、華蘭は無双武将状態だ。

「お味方の大勝利ですね」

 香崙の台詞に和哉は少し考えた。

「戦うのが嫌なら帰れ」(注2)

「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ」(注3)

 帰投を促した和哉に対して、照美が茶化す。

「これで勝ったと思うなよ!」(注4)

 捨て台詞もそこそこに、香崙は泣きベソを掻いて遁走した。暴れ回る姉の華蘭に背後から妹が抱き着く。姉妹はそこで爆発した。

「何が、どうなっているのだ?」

「さあ?」

 ジョアンヌの問い掛けにも、和哉は満足に答えられなかった。


 その頃、北の果て。

「はにゃ、何をしているのかな?」

 埴輪のお面を被った喜久代が、机に向かって作業しているモリモットに声を掛けた。

「弥生殿の依頼で、新しい銃を作っているでござるお」

「ふ~ん」

 しげしげとモリモットの手元を見詰める喜久代。彼の手の中では小さな拳銃が組み立てられていた。

「それ、使えるの?」

「大丈夫でござるお。世界一小さい拳銃は五センチメートルぐらい(注5)でも撃てるでござるし、指輪形の銃(注6)もあるでござるお」

 モリモットの解説に喜久代は驚く。

「ほえ~、世界は凄いんだね」

 モリモットは小さな拳銃を横に置くと、次は太い鉄パイプを持ち出した。

「それは?」

「ライフル銃の銃身でござるお」

 直径三十ミリメートルの鉄筒(注7)は存在感が半端ない。

「全部、弥生ちゃんの依頼?」

「そうでござるお。後は機関銃でござるお」

 モリモットは楽しそうな表情で銃の製作を続けた。

「浩くんは、昔から何かを作るのが好きだったよね」

「趣味が高じて、造形作家(モデラー)になったぐらいでござる」

「浩くんも和くんも、どうして結婚しなかったのかな?」

 喜久代は素朴な疑問を口にした。

「喜久代姉さんがあの時、遠慮せずに和やんと結婚すれば良かったと思うでござるお」

 モリモットは作業の手を休めずに言い放つ。

「それは、そうだけど。でもあの時の和くん、見ているだけで辛かったし」

「結局はあの時の出来事が原因で、和やんは結婚できなくなったでござろう。あの事に関しては拙者も悪かったと反省しているでござるお」

「ううん、あの時、浩くんが励ましてたの、お姉ちゃんも知ってるから」

 喜久代は首を横に振った。落ち込んでいた和哉を励まそうとして、モリモットがアニメ漬けにした事実も知っている。

「浩くんには感謝しているんだよ。お姉ちゃん、浩くんのお嫁さんでも良かったかな?」

「喜久代姉さん……」

 モリモットは作業の手を止めると、彼女の方へ振り向いた。真剣な眼差しで彼女を見詰める。喜久代はドキッとした。

「拙者には嫁がいるでござるお。ただ恥ずかしがり屋で画面の向こうから出て来ない(注8)だけでござる!」

「ほえ~」

 喜久代はズッコケる。少しでも期待した自分自身が許せないと同時に、オタクの模範解答をしたモリモットも許せなかった。

「浩くん、お姉ちゃんを揶揄って楽しい?」

 埴輪のお面で表情は窺えないが、モリモットは激しく後悔していた。喜久代は怒ると手が付けられない。

「星に代わってお仕置きよ」(注9)

 喜久代の右手には見慣れない棒が握られていた。星とサクランボで飾られたその棒の先端から発せられた七色の光がモリモットを包む。

「浩くんには明日、和くんと戦って貰うからね」

 光を浴びて気を失ったモリモットに、喜久代はそのお面の下から笑い掛けていた。

声の想定(ボイスイメージ)

・桐下  和哉  鈴木達央さん

・聖女クリス   小林ゆうさん

・ジョアンヌ   河瀬茉希さん

・モリモット   関智一さん

・武藤   龍  玄田哲章さん

・尾藤  大輔  稲田徹さん

・佐藤  竜也  櫻井孝宏さん

・山岡  次郎  下野紘さん

・藤井  照美  伊藤かな恵さん

・藤井  羅二夫 うえだゆうじさん

・佐藤  由貴  芹澤優さん

・ペンテシレイア 日笠陽子さん

・樋口  鞆絵  喜多村英梨さん

・井ノ元 喜久代 丹下桜さん

・尾藤  弥生  沼倉愛美さん

・長野  恵梨香 原由実さん

・鉄器川 華蘭  竹達彩奈さん

・鉄器川 香崙  悠木碧さん



注1 魅せられて

 ジュディ・オングさんのヒット曲『魅せられて』の衣装は、両腕を水平に伸ばすと、袖と身頃を繋いでいる布が大きく広がった。本来はこの生地に映像を転写する予定だったらしい。

 この動きを布団やカーテンなどを被って真似した人は手を挙げなさい。


注2 嫌なら帰れ

 アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』で司令官の碇ゲンドウが、出撃を拒否する息子のシンジを突き放した時の台詞。


注3 逃げちゃダメだ

 アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』で主人公の碇シンジが、目の前の困難に立ち向かおうと、自らを鼓舞した時の台詞。


注4 これで勝ったと思うなよ

 アニメ『まちカドまぞく』で主人公の吉田優子が発する捨て台詞として話題になった。


注5 世界一小さい拳銃は五センチメートルぐらい

 「SwissMiniGun」というスイスのメーカーが製造している銃「Model Nr. C1ST」はギネスにも認定されている世界一小さな銃で、大きさは5.5センチメートル。

 構造は回転弾倉(リボルバー)銃で、引き金を引くだけで発射可能なダブルアクション機構を備えている。口径はわずか2.34ミリだが実弾を発射できる。威力はさほど高くない。


注6 指輪形の銃

 指輪形の銃は19世紀初頭のフランスで製作された。

 直径4mmの鉛の弾を黒色火薬で撃ち出す、六連装の単発銃である。威力はブリキ缶の厚み一枚を貫通する程度で殺傷力はほとんどない。

 「Le Petit Protector(小さな守護者)」と名付けられた男性用と、「Femme Fatale(魔性の女)」と名付けられた女性用が存在する。

 婚約指輪にこの銃と、夜店の指輪飴(リングキャンディ)のどちらかを選ぶよう迫られたら、どちらを選ぶかで性格が分かりそうである。


注7 直径三十ミリメートルの鉄筒

 ライフル銃、小銃とも呼ばれる小火器は、近代化された軍隊に必須の武器となっている。

 かつては口径を太くしないと充分な威力を得られなかったが、技術の進歩でライフル銃の口径は細く、銃身は短くなり扱いが容易になった。

 特に明治時代に我が国で開発された『有坂銃』は6.5×50mmセミリムドの三十八年式実包を使用し、日露戦争では主力兵器として活躍した。

 当時のロシア軍は『モシン・ナガン』を制式採用しており、この小銃の弾丸は7.62mm×54Rを用いていた。

 有坂銃は弾薬重量だけを見るとロシア軍の六割程度であり、資源の節約にも繋がり、戦線維持に多大な貢献をしたと言える。

 この優秀な有坂銃は幾度かの改良や改造を施されて二次大戦終結まで生産、輸出された。

 なお現代において制式採用されている口径の大きなライフル銃は、28mmの対戦車ライフルになる。


注8 画面の向こうから出て来ない

 いわゆる二次元嫁である。

 食事しない、老化しない、経費がかからないなどの利点がある一方で、家事全般をしてくれないなどの欠点もある。

 世の中には『俺の嫁召喚装置』を用いて、本気で二次元嫁と結婚した人も存在する。


注9 星に代わってお仕置き

 武内直子さんの人気漫画『美少女戦士セーラームーン』の決めゼリフ、「月に代わってお仕置きよ」のパロディ。

 元々は時代劇などで「天に代わって成敗致す」と使われていた。

 なお『セーラームーン』では他のセーラー戦士たちも決めゼリフを持っている。

 マーキュリー「水でも被って反省しなさい」

 マーズ「火星に代わって折檻よ」

 ジュピター「痺れるほど後悔させるよ」

 ヴィーナス「愛の天罰、落とさせて頂きます」

 他にもあるので興味のある人は全話を観賞しよう。

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