第359話 目覚め始めた盾
一樹がセッチに優柔不断と言われて倒れ、俺はとりあえず他の2人からも話を聞くことにした。
「私は教わっていた武器や防具、夜城先輩がくれた"武器錬成"のスキルの他に、素材同士による効果や相性を教えられました。だけど言われて初めて違和感を感じたのが、教えてもらってない技術や製作、特殊な素材の加工、強化。ですね」
岩美が言った通り、武器や防具関連の事で、教えてもらってない記憶があるらしい。
「僕は基本的に大盾についての能力なんだけど、いつの間にか幾つかスキルがあったよ。"守護者"、"不動要塞"、それと"武器覚醒"だね」
ヤッさんは大盾使いとしての能力が増え。ただ単に守る為の大盾だけじゃなく、"武器覚醒"によって使っている大盾で相手を倒したり、同時に幾つもの盾を操つる事が出来るんだとか。
盾を同時に何個も操りつつ攻撃も可能なんてさ、確かにそれはそれで"不動要塞"感があってかなり良いと思う。
「だけど今のままだと同時に操れるのは2個までかな。もっと魔力のステータスを伸ばせばまだいけると思うんだけど」
「ちなみにどんくらい?」
「ん~……5個……、もしくは、10個?」
おいおいそうなったらまさに最強の盾じゃねえか。
「でもまだまだ時間は掛かるかな。それが扱えて当たり前、って認識になってたけど、どうしてそう思ってたのか……、言われて初めて不思議に思えた」
もしかしたら、記憶が変わってないって思い、認識すら出来てない奴がいるかも……。
始めにコイツは怪しいって思えたのは……。
志穂ちゃんだ。
よくよく思い出すと、最近の志穂ちゃんも言動が変わってる気がしていた。
怒ってるからなのかなんなのか解らない。だけどよく腕を組み、壁を背にして立っていたり。目付きが鋭くなった。
しかもギャルなのにギャルっぽくない、クールで静か。だから志穂ちゃんっぽくないって思ったのは俺だけかなって思ってると、そうでもない。
他の奴からの視線や気にしてるって感じの気配を感じる。
もしかしたら黒に近いかもな。
だけど誰も聞かないし、志穂ちゃんは志穂ちゃんで気にしてる感じがまったくない。
……なんか、不気味だ……。
「ねぇ」
「はいっ! なんでしょう!」
その志穂ちゃんが突然俺に目を向け、何か聞こうとしてるのか声をかけてきたからちょっとビクッとした。
「記憶改変の問題はそこまで酷いって訳じゃなさそうだけどさ。とりあえず玲司と華の能力を確かめない?」
なんか、志穂ちゃんがまっとうな事を言ってる?
「ねえ聞いてる?」
「はっ! 聞いております! 俺も実際に見て確認した方が連携も取りやすいでしょうし良いかと思われます!」
「なに? その口調……」
思わず自衛隊や軍人みたいな口調で答えたことで、志穂ちゃんに引かれた……。
その後俺達は訓練場に行ってヤッさんの能力を確認と、岩美の技術を確かめる為、ヤッさんの大盾や槍を壊した一樹の為に、岩美が念の為にと作っていた槍や大盾を持ってきてもらう。
だけど……。
「この大盾は前に山本先輩からオーダーを頼まれていた物です。こっちの槍は絶対また壊すと思い、簡易ですが念のために作り置きしてた物になります」
「……すいません」
「別に良いんですよ~? どこで変な槍を買おうと先輩の自由なんですから」
「ウグッ!」
「ゼオルクで買ったのならまだ許せますが、まさか違う所でなんてそんな、裏切るわけないですもんね?」
「カハッ!」
い、岩美さん?
その目は明らかに笑ってないから怖い。
「でも変なんですよね~、ゼオルクで売ってるデザインには見えないんですよね~」
「すいませんごめんなさい岩美が大変だと思って学園都市で売ってた槍を買っちゃいました許してください!」
「あ~あ、せっかく先輩が集めた素材でもっと良い槍が造れたのに。何にも言ってくれないし相談すら無いからありきたりな槍しか造れなくて残念です」
「ゴッハッ!!」
まさか怒るとここまで陰湿になるなんて……。
これからあまり怒らせないようにしないと……。
「ゆ、許してつかぁさい……」
「別に良いですけど、暫くの間はそれを使ってくださいね?」
陰湿になるまで怒ってる岩美の事だ。
この槍、絶対普通じゃない……。
「は、はい……。うっ?!」
床に置かれた槍を持ち上げようとした一樹の顔色が一瞬で変わり、そのまはま固まる。
ど、どうしたんだ?
「……くそ、重たい……」
あぁ……そうきたかぁ……。
どのくらい重いのか確認しようと俺も持ってみると、通常より遥かに重い……。
「それ、簡単に壊れないようにするため、鍛えるだけ鍛えたました。だから普通より倍は重くなってます。それなら投げれないですよね?」
「……はい」
陰湿過ぎる……。
「でも良いんじゃない? その重い槍を簡単に扱えるようになった頃にはもっと強くなったって事じゃない」
まぁ、確かに、そうかもしんないけど……。
「ん~……、ちなみにこれ、何で造られてんのかな?」
「タングステンなどを使ってます」
タングステンで頭をよぎるのはやっぱ軍事兵器ぐらいしか思いつかない。
重さてきにざっと15キロ。
槍としては普通に規格外だと思う。
まともに扱えるわけがねえんだけど、これは岩美から一樹への罰……、って事で他の槍を使うことは~、許してくれない。
「槍の名前は無いですから、好きにつけて下さいね」
「はい……」
「山本先輩、先輩の話を聞いて、ちょっと試してほしい事があるのでこちらを用意しました」
っと一樹の槍の他に岩美は片手剣とかに使う小型と中型の盾もいくつか用意していた。
「同時に盾を操れると言ってましたが、それって別に大盾に限った事じゃないですよね? つまり大盾じゃなく小型中型なら、その大きさによって操れる範囲が変わってくると思い、こちらも用意しました」
「確かにそうかも。んじゃ、早速やってみるね」
「あっ、そしたらちょっと微調整をしたいので、装備するの手伝いますね」
まずは小型の盾を2つ、ベルトで両腕に装備すると岩美がなにやらいじる。
「なるほど、それだと確かに操る時に外しやすいかも」
ヤッさんは岩美が何してるのか理解すると、今度は腰からも2つぶら下げる感じでベルトで装備。
「んじゃ、とりあえずこれでやってみるよ。"守護者"発動!」
「「お~!」」
4つの盾が外れ、空中に浮く。
それだけで? って思うかもだけど、素直に凄い事だから思わず声が出た。
だってさ、攻撃がどっからくるのか分かれば無駄な動きをしないで防御する事が出来るし、俺達を守りながらヤッさんも動く事が出来るんだぜ? それってめちゃくちゃ凄い事だって分かってくれるだろ?
「では次です」
それから中型も4つ操る事が出来た。
問題はヤッさんも言ってた大盾。大盾は他の盾に比べてかなり重いし、デカい。
結果的に伝えると。操る事が出来たのは2つだけ。
それでも結構デカい事だ。
「スキル"不動要塞"、それに"守護者"ってさ、いつかカズが言ってた通り"動く要塞"って感じがしてきたな」
「そうだね、あのカズが言ってたようになれるように、もっと頑張るよ」
「協力しますよ先輩。個人的に先輩の能力は面白いですし、考えによっては色々と幅広くなると思いますので」
これでヤッさんも本格的に攻撃出来るとなったら、誰も手がつけられなくなる。
カズが指し示してくれていた最強のチーム……。
後は……、あのカズ達に追い付けられるまでの実力をもっと……。




