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満月の夜
今晩は月が出ている。
冴え冴えと明るく地上を照らす満月だ。
魔獣達は、その光を嫌い、どこかに身を潜めているのだろう。
「…何を見ている?」
眠たげな声で、夫が尋ねてくる。
「月を」と、答えながら、サクラはカイの隣に身を横たえた。
すぐにカイの腕が伸びてきて、何も身につけていない肌がぴったりと寄り添い合う。
「…今夜は満月なの」
カイは頷いた。
「満月の夜は…静かだ」
そう、とても静かだ。
だから。
眠れるだろう。
「カイ様」
名を呟くと、口付けを求められる。
熱さを再燃させないように、そっと唇に触れて、それから額と頬にも。
「おやすみなさいませ」
ごゆっくりと。
しばらく許された時間に身を委ねましょう。
剣を真に納めて。
軍神は穏やかな…静かな…眠りにつく。
私の傍らで。
最終話です。
途中、何度と「まだ、焦らすか?」と自らツッコミを入れながら、書き上げた作品です。最後は甘々の大団円で。