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聴こえる。  作者: AS
3/10

第3話

 私立音ノ木坂学院に通う高校2年生の主人公・高坂穂乃果は、ある日A-RISEというスクールアイドルに出会う。”スクールアイドル”とは、学校の部活としてアイドル活動を行っている女子高生たちのことで、A-RISEは全国でも有名なスクールアイドルであった。

 A-RISEに憧れた穂乃果は、幼馴染の南ことり、園田海未を誘ってμ’sミューズを結成し、自分たちもスクールアイドルを始めることにする。

 そんな穂乃果たちに、ある事実が告げられる。彼女たちの通う音ノ木坂学院が、入学希望者の減少により、廃校になることが決定したのだった。自分たちの大好きな学校が無くなるのをどうしても阻止したい穂乃果たちは、スクールアイドルとして有名になることで、入学希望者を増やすことを決意する。

 目標が決まり、ますます気合いが入った穂乃果たちは、曲作りが得意な1年生、西木野真姫に曲を作ってもらい、振り付けも自分たちで考え、毎日朝から晩まで歌とダンスの練習を行い、クラスの友人たちに宣伝活動を手伝ってもらって、そして遂にμ’sのファーストライブの日が決まったのであった。


 ここまでが、第2話までのあらすじである。そして今日放送される第3話では、そのファーストライブが開催されるのだった。一体どんな展開になるのか、俺はにわかに期待が膨らんでいた。

 というのも、彼女たちが努力している姿を見ていると、自分が芸人を始めた頃を思い出すのだった。初舞台のときは、何日も前からろくに眠れなかった。不安だったからではない。楽しみだったからである。このネタを舞台で披露したとき、一体どれほど客は笑うだろうか。センセーショナルな新人が現れたと、芸人やお笑いファンの間で話題になるのではないか。邪魔な存在が出て来たと、先輩芸人たちに潰されそうになるのではないか。一気にM-1の決勝まで行ってしまうのではないか。そんな期待で胸がいっぱいで、ろくに眠れなかったのである。


 「ラブライブ!」第3話の放送が始まった。穂乃果たちの練習も佳境に入り、服作りが得意なことりは衣装を制作し、いよいよライブへと本腰が入りだす。恥ずかしがり屋な海未が短いスカートを嫌がるのを、穂乃果とことりがなだめるなど、幼馴染らしい和気あいあいとしたシーンが流れる。

 そしていよいよライブ本番。幕の後ろで並んだ3人は、お互いの緊張をほぐすように手を繋ぎ、笑い合う。

 「μ’sのファーストライブ。最高のライブにしよう!」

 穂乃果の言葉に、3人が頷く。

 「大丈夫。きっとうまくいく」

 3人の中にそんな思いが生まれたとき、幕が上がり始めた。

 目を閉じて幕が上がるのを待つ3人。上がり切るのを待って、ゆっくりと目を開ける。

 目の前に広がる光景に、穂乃果たちは言葉を失った。


 観客席には、誰一人座っていなかった。


 その瞬間、俺は思い出した。俺たちの初舞台で笑っていた客は、一人もいなかった。


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