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聴こえる。  作者: AS
4/10

第4話

 クロネッカーの初舞台は散々なものだった。俺も西口も、あまりの緊張でろくに声も出せず、今にも倒れ込んでしまいそうなほど足が震えた。無論ネタも酷いもので、俺はネタ中に4回セリフを噛んだし、西口は一気にネタを飛ばして、15分の持ち時間をたった5分で降りてしまった。この事件は、今でも劇場の先輩や同期のネタにされている。俺はあの時に初めて、「舞台の上に立つこと」がいかに恐ろしいかを知った。そしてその日から、少しずつ俺の芸人人生設計が崩れ始めたのだ。



 人のいない観客席を見た穂乃果は、心を折りそうにそうになるも、必死で前を向き、笑ってこう言った。

「そりゃそうだ。世の中そんなに甘くない」

 何とか強がって見せたが、その目には大粒の涙が浮かんでいた。これまでやってきた努力が、学校を救いたいという願いが、スクールアイドルとして成功したいという自分の夢が。全てが無駄だったと言われているような気になった。それは、穂乃果だけでなく、穂乃果を信じてついて来たことりと海未も同様だった。

 3人の心が挫けそうになったとき、一人の女子生徒が慌てて講堂に入って来た。彼女は1年生の小泉花陽という生徒で、元々スクールアイドルに興味があり、穂乃果たちのステージも見に行くと約束していたのだった。花陽の姿を見た穂乃果は、涙を拭い、高らかに叫んだ。

「やろう! 全力で!」

 穂乃果の言葉に奮起し、3人は「START:DASH!!」という曲を全力で披露した。



 エンディングテーマが流れ、今は風邪薬のCMが流れていた。

 俺はテレビの前に体育座りをしたまま、呆然として動けなかった。目からは止めどなく涙が流れていた。逆境に立ち向かう穂乃果たちの姿ももちろんだが、彼女たちが歌った「START:DASH!!」の歌詞にも胸を打たれた。


「諦めちゃダメなんだ その日が絶対来る」


 観客がほとんどいないステージで、それでも前を向き、そう歌う3人の姿に、心が震えた。

 それから、俺はすぐに布団に入った。今日はぐっすりと眠れた。俺は気付いたのだ。俺の芸人人生は、まだ走り始めたばかりだった。


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