8 礼拝堂
学園に戻ったカメリアは、礼拝堂を見学したいと言った。
礼拝堂を管理を担当しているガースン神父は、カメリアの願いを快く受け入れた。
「どうぞ自由に見ていただいて構いませんが、神聖な場ですのでお静かに願います。」
ガースン神父は一言そう断ってから、礼拝堂の扉を開てカメリアと私を招き入れた。
礼拝堂のなかは、ステンドグラスから注ぎ込む柔らかな日光が白い壁に反射して光で満たされていた。
「こちらの鍵は、他の部屋と違ってガースン神父様が管理されておりますの。」
カメリアの問いにガースン神父は「ええ、この場所に最も長くいるのが私ですから、その方が都合が良いのです。」と頷く。
「私は朝一番にここへ来て神に祈りを捧げます。
その後、生徒たちが清掃を終えると説教の準備をしなければなりません。
それから、一日の終わりにも祈りを捧げます。
ですから、礼拝堂の戸締りをするのは私の仕事なのです。」
「そうですか。」
カメリアは礼拝堂の中央を進み、光の降り注ぐ祭壇の前で止まった。
彼女はその板張りの床についた細い傷を凝視していた。
「どうかなさったのですか。」
ガースン神父が聞くと、カメリアは「いえ、大したことではございませんわ。」と微笑んだ。
「ただ、ヘアピンを落としてしまいましたの。」
カメリアはそう言ってしゃがみ込み、板張りの床から何かを拾い上げた。
ガースン神父の位置からは見えないようだが、私はそれがヘアピンではないことに気づいた。
それは、木製の珠だった。
「礼拝堂の清掃を担当されている生徒は、どなたですの。」
ガースン神父は少し考えてから、「たしかフリーデリンテとグレーテだったな。」と答えた。
その答えに、カメリアは納得したような様子だった。
「ガースン神父様からみたマヤは、どんな生徒でしたの。」
ガースン神父は遠くを見つめ、「成績優秀な生徒だったが、少々生意気で手を焼いた。」と話す。
「医者の娘だからか、神学よりも医学を好む子だった。
信仰を疎かにしてはいけないと叱ったものです。」
カメリアが顎に手をやったそのとき、扉を叩く音が聞こえた。
「フリーデリンテです。
ガースン神父様、おられますか。」
扉の向こうからフリーデリンテが声をかけた。
ガースン神父が「入るがいい。」と入室を許可するのを聞くと、フリーデリンテは扉を開けた。
「お取り込み中失礼致します。
ガースン神父にお話ししたいことがございましたので。」
頭を下げるフリーデリンテに、ガースン神父は「構わん。どうしたんだ。」と尋ねる。
「マヤの事件以来、生徒達は怯えています。
この学園内に犯人が潜んでいるのではないか、と。
このままでは勉学に手がつかないというものもいます。」
「警察とカメリア嬢が捜査を進めている。
時期に解決するだろう。
心配は無用だと皆に伝えろ。」
ガースン神父は宥めたが、フリーデリンテは「しかし、事件解決までの間学びが疎かになるのは由々しき事態です。」と食い下がる。
「我々生徒達で話し合い、この状況を打開する策を考えたのです。」
「それはなんだね。」
ガースン神父の問いにフリーデリンテは胸を張り答える。
「魔女裁判を行いましょう。
我々の手で、神の教えに背いた魔女を学園から追放するのです。」




