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禁忌の第七王子と精霊の少女─その恋は王国の理を覆す─  作者: 七天宮 凛


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第60話 光絶の儀――王子は“最後の一人になるまで殺し合う”

 玉座の間を出て、しばらく。

 足音だけが、静かに続いていた。


 誰も、すぐには口を開かない。

 リアンは、ふと足を止めた。


 それに気づき、皆の足も止まる。


 レイヴンだけが、わずかに遅れて足を止めた。


「……レイヴン」


 名を呼ぶ。


 振り返らない。

 だが、レイヴンは聞いている。


「封光石は、儀式に使われると聞いた」


 短く、言葉を継ぐ。


「その儀式とは、なんなんだ」


 静かな問いだった。

 レイヴンは、すぐには答えなかった。

 少し遅れて、振り返る。

 その視線が、リアンへと向けられる。

 淡い青の瞳が、リアンを捉える。


「……儀式か」


 低く、落とすような声。


 視線が、一斉にレイヴンへと向いた。


 ルカの表情が、わずかに強張る。

 誰も、口を挟まない。


 レイヴンは、わずかに目を伏せる。


 そして――


「光絶の儀」


 静かに、その名を告げた。


「次の王を決めるための、王位継承の儀式だ」


 淡々とした説明。

 その先は、語らない。

 リアンは、目を逸らさない。


「……どうやって、決める」


 問いは、短い。


 レイヴンの視線が、再び上がる。


 そして――


「王子たちは――戦う」


 静かな声。


「一人になるまで」


 その言葉が落ちた瞬間、

 リアンの思考が、一瞬止まる。


「……殺し合う」


 言葉が、落ちた。

 空気が、凍りつく。


 誰も、動けなかった。


 その意味だけが、遅れて胸に落ちてくる。


 ――殺し合う?


 レイヴンは、淡々と続ける。


「……それだけでは終わらない」


「封光石は、特別な石だ」


 声に抑揚はない。


「封光石で造られた――光絶の儀の間では」


 ルカの目が、わずかに揺れる。


「死んだ者の力は、討った者へと移る」


 静かな声だった。

 だが、その内容はあまりにも重い。


「奪われるのではない」


 淡く、言葉を重ねる。


「……吸収される」


 ティアラが、息を呑む。


「最後に残った一人が――」


 ほんのわずかに、間を置く。


「すべての王子の力を、その身に宿す」


「……そんなものが、王位継承だというのか」


 リアンの声が、わずかに低くなる。

 理解しようとした。

 だが――

 受け入れられない。


 ルカの手が、わずかに強く握られる。

 そのまま、ゆっくりと口を開く。


「それが……代々続いてきた、王位継承の形だ」


 静かな声だった。

 肯定でも、否定でもない。

 ただ、事実を告げる声。


 リリスの指先が、小さく震える。


「……そんな……」


 言葉が、続かない。


「兄弟を……戦わせるなんて……」


 かすれた声だった。


 ティアラは、静かに顔を上げる。


「……そんなの……間違ってる」


 小さく、だがはっきりと告げる。

 その声には、迷いがなかった。


 クラウスが、短く吐き捨てる。


「……狂ってるな」


 低い声だった。

 本気の嫌悪が、そこにあった。


 リアンは、何も言わない。

 ただ、立ち尽くしていた。

 思考が、ゆっくりと戻ってくる。


 ――自分は、王家から消された存在だ。


 名も、立場も、最初から与えられていない。

 だが。

 もし――

 あのまま、王子として育っていたなら。

 自分もまた、

 その場に立たされていたのか。


 胸の奥に、冷たいものが落ちる。

 逃れられない何かが、そこにあった。


 リアンは、ゆっくりと目を伏せる。

 そして、わずかに息を吐いた。


 ――ふざけるな。


 心の奥で、静かに言葉が落ちた。


 リアンは、顔を上げる。


「……その儀式を、止めることはできないのか」


 真っ直ぐな問いだった。

 誰も、すぐには答えない。

 クラウスが、わずかに視線を動かす。

 ルカの方を、ちらりと見る。


「なら、参加しなきゃいい」


 あっさりと言う。


「そんなもの、逃げればいいだけだろう」


 軽い口調。

 だが、その言葉は、この場にはあまりにも異質だった。

 ルカの動きが、止まる。

 視線が、わずかに揺れる。


「……逃げる……?」


 小さく、繰り返す。

 その言葉自体が、初めて触れたもののように。

 ルカは、ゆっくりと顔を上げた。

 何かを考えるように。

 そして――


「……そうか」


 かすかに、息を吐く。


「おとなしく従う必要なんて、ないのか」


 その声には、わずかな変化があった。

 固く閉じていた何かが、ほどけるような。


 レイヴンは、そのやり取りを見ていた。

 無言のまま。

 表情は、変わらない。


「……理解できないな」


 ぽつりと、落とす。


「……そういうものだ」


 淡々とした声だった。


「逃れるという発想が、なぜ出てくる」


 疑問は、純粋だった。

 責める色はない。

 ただ、本当に分からないというだけの声音。


 リアンは、その言葉を聞いていた。

 視線を落とす。

 胸の奥で、何かが静かに軋む。


 ――こいつは、本気で言っている。


 恐れていないのではない。

 最初から、恐れるという感覚がない。

 リアンは、息を吐く。


「……だから、壊れてるんだろ」


 小さく、呟く。


 ――ふざけるな。


 胸の奥で、感情がせり上がる。


 あんな儀式が、

 許されていいはずがない。


 リアンは、ゆっくりと顔を上げた。


 ――止める。


 あんな儀式、あっていいはずがない。

 必ず、終わらせる。





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異世界ファンタジー 第七王子 王家の闇 貴族社会 王宮陰謀 双子 出生の秘密 精霊 七属性 魔法 能力覚醒 成長物語 シリアス ゆっくり恋愛 純愛
― 新着の感想 ―
レイヴンの語る王位継承。 その内容は殺し合い能力を奪うこと。 そんな言葉に反発すると逃げればいいと。 でもこれはほかのものからの攻撃が見えてきそうです。 果たしてどうなる。 続きも楽しみです°・*:.…
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