二十話「特級幹部同士の決闘」
「君が……ヴァルカンかい?」
俺は恐怖に支配されていた。
恐怖という色に染まっているのだ。
あのアーナトリス・ヴァルカンが。
俺の心が恐怖に支配されたことなんて、指で数えるほどしかない。
しかも、俺がおそらく同年齢であろう奴に……
「……聞こえなかったかい?」
神宮寺が吐息が当たる程まで近づき、耳打ちする。
俺は恐怖心を薙ぎ払うかのように周囲に聞こえる声量で言った。
「聞こえなかったよ? もう一度言ってくれる?」
「……ッッ!?」
同期の顔から血の気が引いていた。
特に仏岡は口に合わないものでも食べたような渋い表情して、片手で顔全体を覆っている。
神宮寺は、はにかんだ笑みを浮かべると俺に拍手を送ってくれた。
「いやぁ〜君は凄いよ。さすが天才と言われるだけはある」
この男は神宮寺夜行。
年齢15歳。
性別は男
聞いた話によると、六大魔王・八神銀二郎の一番弟子で、歴代最高と言われいる傭兵団のトップらしい。
そして、こいつらは元神宮寺傭兵団のメンバーだ。
その絆の中に俺が入ることになるとは……
少しむず痒い。
「……自己紹介は終わったかな?」
「いえ、俺はまだ皆の能力を知りません」
「ん……? 能力を知らないだと?」
王城が堂々と俺の射程範囲まで歩み寄って来る。
彼の身長はおよそ190。
俺の身長は170。
頭ひとつ分身長が高いため、言葉には表現できない程の威圧感を感じる。
「貴様、見損なったわ。天才だの国中で騒がれているから期待していたのだが……どうやら無能らしいな」
「おい、もう一回言ってみろよ」
「この俺様にもう一度言ってみろ? 口の聞き方を教えてやろうか」
やってしまった……
実はエリカに裏切られて無能だとか罵られた後、俺は無能が禁句となった。
喧嘩はあまり好きではないのだが……
俺たちはその後、この城の闘技場で決闘することになった。
ルールはHPが半分切ったら負け。
それ以外は何でもあり。
「開始前にHP表示を行います」
審判は石川カイとその仲間たちだ。
カイ達は闘技場で俺たちが戦うことを望ましく思っているようだ。
彼らだって俺の能力を知っておきたいからだろう。
アーナトリス・ヴァルカン
HP 99999
王城獅子王
HP 30000
「「……はっ!?」」
特級幹部たちはモニターを見て、驚きの表情を隠しきれていなかった。
当然だ。
俺のHPは99999。
つまり現時点ではHP最高記録保持者なのである。
対しては王城は俺のHPの1/3ほどしかない。
油断は禁物だと分かってはいるもののSSSランク冒険者のHPを超えていることは純粋に喜ばしい。
俺は西園寺が両手で抱えている掛け時計をチラチラと見る。
残り3秒……2秒……1秒……0!!
「試合開始!!」
試合開始の合図と共に俺は腰に携えたハーフソードを横一文字に抜き「風魔法・風桜斬」と唱える。
風の斬撃が、桜の花びらのように舞う。
これは避けようがないほどの強力な魔法だ。
「絶対防御・展開」
俺の風魔法はチリの如くことごとく消え失せた。
「まるで、歩く城砦じゃないか!!」
俺は個人戦闘中にはあまり話さない寡黙タイプなのだが、つい声が出てしまう。
「貴様……もっと俺様を楽しませてくれよ」
王城が絶対防御を展開したまま、こちらへゆっくりと歩いて来る。
王城は巨人のような存在感を放っており、とても15歳とは思えなかった。
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