第十七話「俺は止まらない」
「で? 分かったの?」
「あぁ、理由はよく分からんがなんとなく目星はついたよ」
俺は「ニャー氏」に書いていた「闇」関連のことを全て吐き出した。
ミイラは滔々と話し始める。
「なるほど……過度なストレス下に置かれた時、大脳皮質や大脳辺緑系の扁桃体が興奮し、視床下部の室傍核に伝達されて、その神経細胞からは副腎皮質刺激Hピノマレリンが分泌され、脳下垂体、副腎系へと伝達されるわ。脳下垂体や副腎はストレスに対応する体内調節のためのホルモンを分泌する。同時に自律神経にも刺激を与えて闇反応が起こる、というわけね」
「なんか、一人で納得しちゃったよ!!」
「つまりね、闇は強いストレス反応が起きた時に真価を発揮するが、その間は他のスキルが使用不可になる、ということよ」
「精神が蝕んだ時に覚醒し、裏を返せばそうでない時に発動しても、HPやMPが消費するだけということか」
「分かってるじゃな〜い」
俺たちは、ハイタッチを交わそうとする。
だが、それは叶わなかった。
「もう時間のようね」
ミイラ兄の黒装飾のローブは血潮に染まり、血煙をあげて地面に倒れる。
「お、おい……ミイラ兄!!」
「ミイラ兄!!」
「ミイラ兄!!!!」
何度呼びかけても応えなかった。
ミイラ兄の手首に手を当てて、脈を測ってみる。
ミイラ兄の脈は止まっていた。
「いや、ミイラ兄はミイラだろ? だったら生き返るんじゃ……」
ミイラ兄に水をかけたり、自分の血をかけたりした。
それでもミイラ兄は息を吹き返えさない。
次第にミイラ兄の表皮は剥がれていく。
ミイラ兄に触れるだけでポロポロと砂の鎧のように剥がれていった。
「ミイラ兄……」
ミイラ兄の白髪を額から後頭部に沿ってかきあげてみきると、ミイラ兄の目はもう既に光を失っていた。
「ミイラ兄は、俺のために……」
もっと話しておけばよかった
もっと笑えばよかった
そういった後悔で、後ろ髪を引かれそうになったが、俺はもう、後ろを見ない。
俺はミイラ兄に誇れる人間になりたい。
ミイラ兄、俺は貴方に誓うよ。
もう命を投げ出したりはしない。
俺がミイラ兄の死を悲しむように、俺の死を悲しむ人もいるかも知れない。
自殺は、自分と関わりがあった人を殺すのと同じ行為だ。
相手が、自分という人間の何%を満たしているかは分からない。
でも、自殺すると相手の自分が占めている何%の分を殺すことになるのだ。
ミイラ兄、俺は前に進みます




