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厄災のアトリア  作者: まほろば


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20/22

第18話 懸念を探しに

 実はあの後、私は征也さんから青い鉱石を預かっていた。

 私も征也さんには同意見で、家に居るセイヤに調査と解析を頼んでいた。セイヤは一目見た途端何かに感づいたようだったけど、もっとよく調べてみると言って私を送り出した。

 本当は今日、セイヤも来てもらおうと思っていたんだけど、アイツ梃子でも動かなかったんだよね。

 なんでも、パラドックスがどうとか、次元屈折理論がどうたらとか。

 理由は分からんでもない。2人は顔がよく似ている。多分、何かしら繋がりがあるんだろう。現在(いま)を生きる征也さんと、未来から来たと言うセイヤ。

 別の時間軸を生きる2人が出会うことによって未来が変わるなんて話は、アニメや小説やらで良くある話だ。


 「ねえ、征也。なんで私達ここに居るの? なんで先輩も一緒に? まさか無理やり連れて来たの?」

 「待て待て。深山さんにこの間、紬と2人でスキーに行った話をしたんだ。そしたら、深山さんはもう暫くスキーに行ってないっていうから」

 「え。先輩に話したの? なんで言うの?」

 「別にいいだろ、言ったって。問題がある訳じゃないし、第一お前は食堂から出て行ったし」

 「ごめんね、紬ちゃん。なんだか楽しそうだったから、無理言って連れてきてもらったの」


 そう。紬ちゃんには、一昨日の話の内容は教えていない。

 征也さんは、あの青い鉱物を紬ちゃんの部屋から取ってきたって言ってた。

 幸いにも、紬ちゃんは青い鉱石を持ち歩いてはいなかった。けれども、あの鉱物が無くなったと分かった時、酷く取り乱して落ち込んだらしい。

 征也さんが宥め賺して元気を取り戻したんだそう。

 なんでも、次期プラットフォーム型ゲーム機を2つ、買うことになったらしい。

 値段を聞いたときはとても驚いた。


 「いやその、違いますよ先輩。征也とは仕方なく行っただけですから。私、ホントは先輩を誘うつもりだったんですけど、その」

 「……そうなの?」


 おや、それは初耳だ。

 それなら、気にせず誘ってくれればいいのに。

 最近ではセイヤも留守番に慣れてきて、契約した2台目のスマホを渡してからは1人でどこかに出かけたりしているから、私が遊びに行くくらいどうということは無い。

 私の顔色をちらちらと窺いながら紬ちゃんが言い淀んでいると、横から征也さんが突っ込みを入れてきた。


 「お前、本人を前に酷いぞ。というか、お前もノリノリで行っただろうが」

 「そんな事ないし。私の最優先事項は先輩だっていつも言ってるじゃん」

 「好きなアニメとコラボしてて、限定グッズが手に入るからって意気揚々と行ったのは誰だ?」

 「うぐ。それはその、私だけど……」

 「はいはい、ストップストーップ。2人とも、喧嘩をしにここに来たわけじゃないでしょ? 折角来たんだから、早く滑ろうよ」


 尚も言い争いを続ける2人の間に割って入ると、私は雪山の頂上を指さす。

 今日の主な目的は鉱物を探すことだけれど、それだけではない。

 せっかく紬ちゃんと久しぶりに遊べるし、それにあの征也さんと合法的に遊べるのだ。

 私としては願ったりかなったりなのだから、ここで征也さんに私の魅力を伝えるチャンス! 尤も、当の本人は紬ちゃんから目を離せないようだけれど。

 2人は私の言葉に渋々といった様子で頷くと、揃ってゴンドラに歩み始めた。

 ……大丈夫かなぁ?


 

 結局、私の類稀なる運動神経の悪さが邪魔をしたせいで、遊ぶどころの話ではなかった。

 すぐに転ぶし、ようやく立ち上がってもうまく滑れないし。

 途中、征也さんが私達を置いて1人で中級者コースに滑りに行っちゃったり、紬ちゃんと私がぶつかりそうになったりとアクシデントはあったけれど。

 2人に介護してもらいながら乗り越え、のろのろ滑ること数時間。ゲレンデの麓に辿り着く頃にはお昼の時間をとうに回っていて、謎の疲労感を抱えた私たちは一度休憩を取ろうとレストランへ転がり込んだ。


 『セイヤ、何か分かった?』


 ご飯(なぜか全員ともカレーだった)を食べつつ、休憩しながらセイヤにメールを送る。

 数分後、セイヤから返信があった。


 『殆ど何も分かってない。分かったことと言えば、地球上に存在するどの鉱石とも特徴が一致しないという事だけ』

 『そっか。何か分かったら教えてね』

 『了解した』


 スマホを仕舞い、紬ちゃんがお手洗いに行った隙を見計らって征也さんに話しかける。


 「征也さん。紬ちゃんが見つけたっていうあの石、どこにあるんですか?」

 「中級者コースの、半ば程です。正確な地点までは把握できてないんですけど、確かその辺りだったかと」

 「……中級者コースかぁ」


 初心者コースでさえあの有様だったんだ、私の実力では無理に決まってる。苦虫を嚙み潰したような表情(かお)をしていたのだろう。征也さんは私の顔を見て噴き出した後、ポケットから何かを取り出した。


 「実は、もう見つけたんです」

 「え」


 征也さんのグローブの上には、海よりも深い青色をした親指程の鉱物があった。私は余りにも綺麗なそれを手にしてみたい衝動に駆られて、私は手を伸ばしかける。

 だけど、私の危険な行為は征也さんによって阻まれた。征也さんは私の手首を掴んで、黙って首を振る。

 触るな、と言いたいのだろう。慌てて青い鉱石から手を遠ざけると、征也さんに小声で「ありがとうございます」と言った。


 「どういたしまして。紬の二の舞は避けたいですから」

 「そう、ですね。それにしても、よく見つけましたね」


 2人の間に流れる気まずい雰囲気を変える為、私は無理に明るく征也さんに尋ねる。


 「まあ、僕ほどの動体視力を持っていれば……なんて言えればよかったんですけど。見つけたのは偶然なんですよ」

 「そうなんですか?」


 征也さんは頭を掻きながら釈明する。別に、疑っている訳じゃないんだけどな。


 「ゴンドラに乗ってた時、中級者コースの中腹辺りで何かが光った気がして。それを探しに行ったら、たまたま見つけました」

 「へぇ、そうなんですか。……って、あの時か!」


 私は、征也さんが1人で中級者コースに行った事を思い出す。あの時は楽しくなって私達を置いて行っちゃったのかと思っていたけど。

 そうじゃなかったんだ。征也さんは、目的を忘れずにいたんだ。

 はしゃいでいた自分が何だか恥ずかしくなって、穴があったら入りたい気分になる。

 けど、征也さんはそんな私の心の内を知ってか知らずか、話題を変えてくれた。


 「それにしても、紬遅いですね」

 「ああそのえっと、そうですね。一体どこに行ってるんでしょう?」

 「? 何か、焦ってます?」

 「いやいや別に」


 私は疑いの目を向ける征也さんから逃れる為、「紬ちゃんを探してきます」と言って席を立つ。

 女子トイレは流石に混雑していたけれど、紬ちゃんの姿は無かった。レンタルショップやお土産屋さんにも居ない。はて、本当にどこに行ったんだろう?

 妙な胸騒ぎがして、一度征也さんの所へ戻って報告しようとした矢先。私のスマホにメッセージが届いた。


 『遥風。やはりその石は、黄鉱石と同じだ。今すぐ2人の手から遠ざけろ』


 そのメッセージを見た途端、世界が突如として灰色に包まれた。

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