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主人公はイベントに参加する 2

 ミアとクロノはステータスを開き、固まっていた。


 どんな内容かと気になっていたイベント。

 蓋を開けてみると、それはとんでもない内容だった。


_______________


 【イベント :『兵から逃げ切れ』】

 (逃げ延びた時間の長さによって報酬をゲット)


 ・ 一時間未満 → 食用ルート転向


 ・ 一時間〜一時間半未満 → 安全寝床


 ・ 一時間半以上〜ニ時間未満 → 一日三食確定


 ・ ニ時間 → 新ルート追加 


________________



「これがイベントだなんて……」


 ミアとクロノは、ショックのあまり膝をついた。 


 すると突然後方から、男の大きな声が響き渡る。

 声のする方へ近づき、草むらから様子を伺うと、近衛兵だろうか、剣を腰に差した男達が大勢集まっていた。

 そしてその中でも体格の良い大きな男が前にでて、兵達に指示を出した。



「よし! 今日はここら一帯で探索を始める。 目標は、魔物達を誑かし、国へ攻め入ろうと目論んでいるという噂のウサギだ。 魔法も使うとの情報もある。 注意して捕獲するのだ!」


 ミアはその言葉に耳を疑った。


 どうやら、国を脅かすウサギがいると噂がたっているらしい。

 そんな力を持ったウサギなんて、本当にいるのだろうか。

 


 ウサギ違いで巻き込まれる羽目になったミアは、クロノと共に猛ダッシュでその場から離れ、隠れられる場所を探した。




「ミア、これからどないするんや?」


「どうするも何も、これが本当にイベントならとりあえず三十分は逃げ切らないと食用ルートでしょ? 逃げ回るしかないじゃない」


「そやな。 オレも使える魔法でサポートするわ」


「目指すは一日三食!」


「ノッた!」


「いくわよ!」


「おーー!」


 そうして二匹の逃走イベントが幕をあけた。



 ◇



 『一時間半以上』という目標を定めたものの、大勢の兵達に囲まれた状況の中で逃げ回るのは、困難を極めた。

 

 兵達の中には魔法を使う者もいて、目の前に火を放たれたり、風で飛ばされそうになったり、水攻めにあったりと散々な目に遭った。

 それをクロノは主に加工魔法を使って、ミアは聴力を駆使して次々と乗り越えていった。

 

 その間も、次々にウサギ達が捕まっていくのが見えた。 

 中には先日会いに来てくれた一角のウサギもいる。

 捕獲だからきっとすぐに放して貰えるとは思うが、やはり胸が痛んだ。


「ミア、余所見しとったら捕まるぞ!」


「解った!」


 お互い励まし合いながら、二匹はとにかく森中を走り回った。



 ◇



 スタートからどれぐらい時間が経っただろうか。


 兵達のウサギ狩りが続いているところをみると、まだイベントは続いているようだ。

 ミア達は散々走り回り、体力も、クロノの魔力も底尽きてきている。

 捕まるのも時間の問題だった。


「さすがに、もう三十分は経ってるよね……」


「食用ルートは、回避出来てるんちゃうか……?」

 

 二時間がかなり長く感じる。

 お互い息絶え絶えだ。

 

「もう、ええんちゃうか……」


「一日、三食……だったら良いな……」


 二匹は力尽き、パッタリとその場に倒れてしまった。


 



 ピロリロリン♫


 


 

 聞き慣れた電子音に、ミアはふと目を開け、辺りを見回した。


 さっきよりも辺りが静かになっている。


「クロノ起きて。 さっき音が鳴ったよ」


「え……ほんまか……?」


 フラフラになりながらクロノはステータスを開いた。


________________


 【イベント終了】

 『安全寝床』『一日三食』『新ルート追加』 獲得


________________



 この一文に、二匹はキラキラと目を輝かせ手を叩きあった。


「やったぁーー!」


「何とか死なずに済んだぁ!」



________________


 これより右・左・真ん中を選択し、走り向かう事で報酬獲得


________________



「……何だか報酬の受け取り方がユニークね」


「相変わらず説明の足らん文章やな。 まぁ三つとも貰えるんは間違いないやろうし、行って来いや」


「そうよね、解った!!」


 ミアは意気揚々と起き上がると、草の生い茂った三方向を確認し、走り出した。


(一日三食、ゲットーー!)


 ミアは胸を踊らせながらダッシュした。



「とりゃーー!」



 そして思い切り真ん中の茂みに突っ込んでいった。



 ガサ、ガサガサ!!

 


「ぷはぁ!」



 やっと茂みから抜け出し顔を出した先には、キラキラと毛並みが銀色に揺れる猫が食事をしていた。


「あ、ウサギ……」


 そしてその向かいには、以前ドラゴンを助けた時に出逢った青年がいたのだ。


「コレはツイてるな」


 青年はすぐさまミアを抱き上げ、前と後ろ、上から下までジロジロと体を見回した。


「雌ってぐらいで特に変わった所はなさそうだが」


「どこ見てんのよーー!!」


 男に殆ど免疫の無いミアは恥ずかしくなって、思わず青年の顔を足で思い切り蹴り、手から飛び降りた。


「シエル!」


 すると隣りにいたプラチナの猫が豹へと姿を変え、ミアに声を上げる隙も与えずにあっさりと捕獲した。


「俺に蹴りをいれるなんて、やるじゃねぇか」


 頬を撫でながら冷笑を浮かべた。


「しかもお前、さっき喋ってなかったか? コレは面白いものを捕まえたな」


 声の感じは嬉しそうなのに、目が笑っていない青年を見て、ミアは血の気が引いた。


「国を脅かすウサギかどうかはわからないが、お前は俺が匿って可愛がってやるよ」


 そう呟いた青年は、ミアを皮の袋に入れ肩に担いだ。

 

「さ、帰ろう。 大収穫だ」



 ピロリロリン♫



 運ばれる途中、ミアは電子音を聞いた。


 けれどステータスが見られない為、何が変化したのかはわからない。

 もしや〈食用ルート〉に転向したのでは……。

 ミアは袋の中で呆然としながら、森ではない何処かへ運ばれていった。



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