第98話 パーティの料理をどうしよう……
工房に炉を作り終えた後、ドノバンに言われた通りに棚を何段か作った。
「ここからは、炉の調子を見るだけじゃから、ここは大丈夫じゃろう。
幾つになっても、新しい炉へ火を入れるのは楽しみで仕方が無いのじゃ」
無事に炉が灯り、どんどんと過熱されていく。
「うん、良い感じじゃな。
ここからは、長時間使っても問題ないかの確認じゃから、ノアは退屈になるかも知れんぞ」
「じゃあ、俺は畑の作業でもしてくるよ。
何かあったら呼んでくれ。
畑は向かいの家の裏側にあるから」
「分かったのじゃ。
長い事、拘束して済まんかったな」
「いいや、これも必要な作業だから気にする必要は無いよ」
工房を後にして、まずはヴィーヴルが居るはずのリンゴの植えてあるところへ向かう。
ヴィーヴルは……居ないな。
ただ、地面には何も生えていなかったので、確認した後に他所へと言ったのだろう。
何時までも地面だけを見ていられないだろうしな。
次に、アンやドゥ達が居るはずの畑へと向かった。
畑では皆が一生懸命、畑の手入れをしている。
ヴィーヴルは……居た。
こっちに来ていたんだな。
俺は大きな声で、皆に連絡事項を伝える。
「皆、お疲れ様。
その場で聞いてくれ。
今日のお土産は食べ物だから、パーティの時に一緒に食べよう。
あと、今日から新しい住人が増える。
晩飯の前に紹介するけど、異種族だからと言っていじめたり危害を加えたら駄目だぞ。
もちろん、こちらにも危害を加えたりしないように言ってあるから安心して欲しい」
皆、了承してくれているようだ。
後は晩飯の前に、顔合わせをしよう。
アンの所へ行って、今日の収穫具合を聞いた。
収穫袋にはラディッシュが沢山入れられていた。
「結構な量になったな」
『そうですね。
本当に、此処に来て良かったと思います』
「どうしたんだ急に?」
『飢える事もなく、安心して暮らせるなんて、集落に居た時には思いもしませんでしたから』
「俺は、俺が生活していけるようにしているだけだよ。
アン達が此処に来ることになったのも、畑を手伝って欲しいという、俺の我が儘から連れてきたしな」
『そう言えばそうでしたね。
それでも、私たちは安心して生活が出来ていることは、間違いありませんので』
あれから、アン達の居た集落の様子を見に行っていない。
変わりなく生活しているかもしれないし、クマに襲われて壊滅したかもしれない。
ドゥやトロワ達はどう思っているか分からないが、少なくともアンは後悔していないと思う。
折角、一緒に暮らしているんだから、安全に快適に暮らせるようにするのは、連れてきた俺の責務だと思う。
「あ、行く時に言ったけど、今日はパーティをやるから、少し早めにこちらの作業を切り上げて、料理を作るのを手伝ってくれないか? 結構な量を作らないといけないから、時間が掛かると思うんだ」
『分かりました。
作る時になったら、呼んでください。
ドゥにも伝えておきますね』
「よろしく頼む。
じゃあ、俺も作業をしに行くよ」
農作業をしながら、今日のメニューを考えていた。
パーティメニューなんて、作ったことが無いからなぁ。
肉を焼いて、スープを作って……考えてみたら、俺に作れる料理なんてそんなに種類がないから、量で誤魔化すしかないかも知れない。




