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第92話 ドノバンの家にて(2)

「アイリス、お片付けは終わったの?」


「うん」


「じゃあ、こっちに持ってらっしゃい」


「は~い」


 アイリスが向こうへと歩いて行った。

 荷物を取りに行ったのだろう。


「ドノバンは?」


「工房の方で、最後の確認をしているはずよ。

 もうすぐ来るんじゃないかしら?」


「何か手伝えることはあるか?」


「う~ん、こっちは何もないわね。

 荷物は粗方、ストレージの袋の中に入ったから」


「あ、ストレージに一応、魔力を追加しておくよ。

 まだ大丈夫だとは思うが、万が一があるといけないからな」


「ありがとうございます。

 今回の引っ越しは、ストレージのお陰で随分と楽にできそうだわ」


 イルデから渡された、ストレージ化された袋に魔力を込めていく。

 これで、また7日位持つはずだ。

 引っ越しは今日で終わるはずだが、まぁ、サービスだ。


 そして、やることが無くなった。

 ただ待っているのも、なんだか気が引ける。


「ヴィーヴル、ちょっと良いか?」


「どうしたのじゃ?」


「その角って、無くしたり出来ないかな?」


「折る訳にはいかぬのじゃ」


「それじゃあ、無理か……いやな、ヴィーヴルも角が無ければ人間と変わらないから、ドワーフの村に行ってもドラゴンだと分からないんじゃないかなと思ってな。

 それなら、ドワーフの村へ連れていけるかもしれないなと思ったんだ」


「ノアが一人で行ってくれば良いのじゃ」


「ヴィーヴルを此処に残して、俺だけが村に行く訳にはいかないよ。

 それに、ヴィーヴルは折角ここまで来たのだから、いろんな食べ物を見せてやりたいと思ってな」


「いろんな食べ物?」


「ヴィーヴルは食べる必要が無かったから、リンゴを知らなかったのだろ? でも、今は食べるという楽しみが出来た。

 じゃあ、俺はその楽しみに対して、広がりを持たせてやりたいと思ってる。

 多くの楽しみがあった方が、幸せに過ごせるだろ?」


「角を折ったりすることはできぬが、魔法で見え難くすることはできるのじゃ。

 これでどうじゃ?」


 角が消えてなくなった。

 まるで、角など最初から存在していなかったように見えなくなってしまった。


 これなら、どう見ても普通の人間と変わらない。

 街へ行ったとしても、人間じゃないと認識されて目立つことも無いだろう。

 ただ、容姿は抜群だから、その方向では目立ってしまうかも知れない。


「うん、それなら何処から見ても人間と変わらないな。

 じゃあ、街へ行ってみないか? リンゴ以外にも果物は沢山あるから、リンゴより好きになるものがあるかも知れないぞ」


「リンゴ以外にも美味しいものがあるのか? ならば、行くのじゃ」


「よし、じゃあ、イルデに街へ行ってくることを伝えておくよ」


「分かったのじゃ」


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