第89話 ドノバン達の家を作ろう
ドノバン達の家を作らないといけない。
食事は一緒に摂るのだから、近くに建てたほうが良いだろう。
(向かいに建てればいいか。
ちょっと待てよ、一緒にご飯を食べるんだから、食堂を作った方が良いか? それに、工房と家を繋げてくれと言っていたな。
家、工房、食堂を作った方が良いな)
向かい側の草原を、家3軒分位の大きさで四角く周りの草を刈る。
「ファイヤー」
草を刈っていない真ん中の部分へ、火魔法を放つ。
当然ながら草が燃えていくのだが、火は草を刈った部分で止まる。
多少、草を刈った部分を越えて燃えるところもあるが、その部分は水魔法を放てば火は消える。
畑の水撒きの為と考えていたが、此処でも使うことが出来た。
魔法ってやっぱり便利だな。
「ノア~、まだ芽が出ないのじゃ」
ヴィーヴルが項垂れながらやってきた。
「昨日、種を蒔いたばかりだろ。
ラディッシュだって、2~3日掛っただろ? リンゴは木に生るんだけど、種から木の芽が出るのはもっと長い時間が掛かるはずだぞ」
「水を沢山やったら、早く出てくれんのか?」
「あんまりやりすぎると種が腐ってしまうから、気長に待つしかないぞ。
水をやるより、芽が出るように祈っていた方が効果があるかもしれないぞ」
後半部分は、もちろん冗談だ。
「そうか! では、妾は祈りを捧げてくるのじゃ!」
今のヴィーヴルに、冗談は通じなかった。
目にも止まらないようなスピードで、リンゴの種を植えた方へと駆けていった。
「あ、待てって、今のは……」
俺の言葉は、ヴィーヴルには届くことなく、宙を彷徨った。
(まぁ、強ち全てが冗談って訳でもないんだよな。
ラディッシュの時は、本当に祈りが通じたかもしれないしな)
ドラゴンの祈りなのだから、そんな効果があってもおかしくはないだろう。
(俺は、ドノバン達の家を作らないとな)
俺の家の向かいに食堂として使う予定の、土の箱を作った。
食堂の隣には、ドノバン達の家となる土の箱を少し大きめに、その隣には、工房となる土の箱を少し小さめに作った。
そして、3つの箱を繋ぐような形で出入り口を作り、それぞれの箱から外への出入り口も作った。
それぞれの箱に、窓となる部分を開けておいて、家となる箱には居間となる部分のほかに、部屋を2つ作っておいた。
(食堂を作るのなら、椅子とかテーブルがあった方が良かったな。
ドノバンは作れないだろうか? それ以前に、材料が無いから、いくらドノバンでも作れないな。
木から木材にするにはどうしたら良いか、ドノバンが来たら聞いてみようか)
木材があれば、木工の道具や家具が作れるはずだ。
水魔法を何回か当てて行けば、木を切ることはできる。
鋸などは、ドノバンに頼めば作ってもらえるかも知れない。
(いや、ドノバンに頼むと、オリハルコンで鋸とかを作ってしまいそうだな。
それはそれで良いかもな。
ちょっと、贅沢な鋸になってしまうが)
多分、世界で唯一の、世界一高価な鋸になるだろう。




