第86話 引っ越しのことを考えよう(3)
「あとは、何かあるかな?」
「今のところは無いと思うのじゃよ。
行った後に出てくるかもしれんがな」
「それは、その都度調整していこう。
今、この場ですべてを決めることはできないからな」
「実際に引っ越すのは何時になるのかしら?」
「こちらの用意が整ったら良いと思うぞ。
こちらで用意する、家みたいなものは1日でできるからな」
「こちらの荷造りで5日位かしら? あなた、工房の方から持って行くものの荷造りは、どの位掛るかしら?」
「荷造りだけなら、1日もあれば十分じゃろう。
炉自体は持って行かんから、このまま置いておけばいいじゃろうしな」
「では、こちらの準備で5日で大丈夫ね。
よろしいかしら?」
「あぁ、分かった。
じゃあ、6日後にまた迎えに来るよ。
6日後ならぎりぎり持つと思うから、袋を貸してくれ。
ストレージ化してしまうから、その中に荷物を入れれば、引っ越しの荷物を少なくできるだろう」
「じゃあ、この袋をお願いするわ」
「ノアよ、ついでにこの袋も頼むのじゃ。
工房の物は、こっちの袋に入れてしまおうと思うのじゃ」
「あぁ、良いよ」
預けられた2つの袋を、ストレージ化して返した。
荷物が少ない方が、瞬間移動も楽にできるだろうしな。
「ノアさん、今日はこれからどうされるの?」
「折角だから、街へ寄ってから帰ろうかと思う。
食料が多すぎても、ストレージがあるから困らないしな」
「私も街へ買い出しに行くわ。
引っ越すまでの食料を、買っておかないといけないようだしね」
「儂は、街に行っても仕方がないからのう。
アイリスの面倒でも見ておくのじゃ。
アイリス、留守番で良いかの?」
「やだ~、ファーティたちとまちにいく~」
「前と同じところで別れるけど、良いのか?」
「うん、まちのまえまでいっしょにいく」
「ドノバン、振られたようだな」
「五月蝿いのじゃ……儂は、工房の方で、引っ越しの準備でも、しておるかの……」
「じゃあ、アイリス、街へ行く準備をしてらっしゃい。
ノアさん、街まで付き添い、お願いしますね」
「あぁ、分かった。
ファーティ、アインスも良いな?」
ファーティ、アインスは首肯した。
ドノバンは、肩を落として工房の方へと向かって行った。
元気出せよ、ドノバン。
新しく来たから物珍しいだけで、嫌われたわけじゃないと思うぞ。
今は、そっとしておく方が良いだろう。




