第84話 引っ越しのことを考えよう(1)
「それで、こちらに来るのに、条件があるんだが……」
「なんじゃろうか?」
「まず、俺は今、ゴブリン達と一緒に暮らしているんだ。
ゴブリンと一緒に暮らせないと言うのならば、こちらに来ると言うのは認められない」
「ゴブリンと一緒って、襲われたりしていないの?」
イルデの疑問は、尤もだと思う。
普通は、ゴブリンは人類にとっても、ドワーフ達にとっても共通の敵だしな。
「俺は、ゴブリン達とも話すことができるんだよ。
それで、ゴブリン達もむやみに襲ってくるわけではない、と言う事が分かったんだ。
そして、今、畑を作っているのだが、それの手伝いとしてゴブリン達と話に行った時、5体のゴブリンが一緒に住むことになったんだ」
「あなたが強いから、襲ってこないんじゃないの?」
「そうかもしれないが、今は一緒に住む仲間だと思っている。
仲間に対して危害を加えることは無いと思うし、もし危害を加えるようならば、そんなやつとは一緒に暮らしていけないから、処分を下すしかないと思うんだ。
これから、色々と決まり事を作っていくことになると思うんだけど、これが最初の決まり事になるのかもしれないな」
「そうなのね」
「あぁ、イルデ達が俺とゴブリン達以外の移住者だから、決まり事なんかはこれから生活をしながら、作っていくことになると思うんだ」
「儂は、オリハルコンを打てればいいから、そんなことは気にせんよ」
「よし、じゃあ、次だ。
俺の今住んでいる場所については、口外無用として貰う。
あと、ゴブリンではない人も一緒に居るのだが、その人については存在自体も口外無用で頼む」
「それも良いじゃろ。
人里離れておると言うから、他に話す人もおらんじゃろうしな」
「あと、ドノバンには生活の道具も、作って貰いたいんだ。
オリハルコンを打つのは構わないんだが、それだけではなく、日常生活で必要な道具があったら、それを優先的に作って欲しいんだ」
「生活がままならぬようじゃったら、オリハルコンを打つどころでは無いからのう。
その条件も構わんじゃろう」
「さっき、こちらから食料を譲ると言う話だったが、食料とかは共有にして、一緒に食事をしないか?」
「どういう事なのじゃ?」
「譲ってどうのうより、皆の物にした方が話が早いと思ってな。
あと、さっきの金貨も俺が持っているけど、皆の財産にした方が、俺の気が済むような気がするんだ」
「それは、家族になろうと言っているようなものじゃぞ?」
「そうか、家族という形になるのかもしれないな。
俺達は、人里離れて協力しないと生活できないんだから、家族みたいになるのが良いと思うんだ」
「その方が、色々と都合が良いかも知れんのう。
と言う事は、儂が打ったものも共有財産となると言う事じゃな?」
「そうなるのか? 嫌なら、別に良いのだが……」
「いや、こちらとしても都合が良いと言うか、良い理由づけになるのじゃと思ってな。
打った物の管理は、ノアに任せようと思っておったしの」
「良いのか?」
「儂は、オリハルコンを打てれば良いのじゃからのう。
後のことは、ノア達に任せるよ」
「分かった。
色々と条件が多くて、済まなかったな。
全部、大丈夫とのことなので、こちらに来ることは問題なしだ」
「儂からも聞いておきたいことがあるのじゃが、良いだろうか?」
「あぁ、言ってくれ」




