第78話 種を蒔こう(4)
「今度は、何の種を蒔くのじゃ?」
「次は、キャベツを蒔こうかと思う。
これは、昨日のスープにも入っていたぞ。
あの、大きい葉っぱがあっただろ? あれがそうだ」
「よし、穴開けをするのじゃ」
「今度のは大きく育つから、畝1つに穴を1つだけ開けて蒔くんだ。
種の蒔き方も今までと違って、種と種の間隔を空けないといけない」
「どの位空けるのじゃ?」
「さっき渡した短い棒があったろ? あれぐらい、空ければいいよ」
「よし、早速、穴開けからやるのじゃ。
穴が一つと言う事は、棒は真ん中位に置けば良いかの?」
「あぁ、それで良い。
じゃあ、皆、自分の場所に散らばってくれ」
皆がそれぞれの場所へと移動した。
今日だけで、もう6回ぐらいやっているから、慣れたものだ。
「キャベツは少し多めに、6つの畝を使おうか……いや、1つだけ畝を残しても仕方がないから、7つ全部使おう」
どんどん畝に穴を開けていく。
「種はこれだ」
「なんじゃ? 大きく育つと言っておったのに、種は小さいのじゃ。
間違っておるのではないか?」」
「いや、これだよ」
「まぁ、何にせよ種を蒔くのじゃ」
「今回は、それぞれ1畝すづ、畝へ種を蒔いていこう」
俺の担当した畝への種蒔きは、終了した。
次にヴィーヴルも種蒔きを終えて、こちらへとやってきた。
「偶には、こんな作業も良いのじゃ」
いや、ヴィーヴルは、例え明日も種蒔きだったとしても、喜んで参戦すると思う。
植える畑が無いから、種を蒔くことはしばらくないだろうが。
「今日は、これでお終いかの?」
「いや、畑に水を撒かないといけない。
種蒔き直後は、たっぷりと水を与えないと、芽が出てこないんだ」
「水を撒いた後は?」
「今日は、もう終わりだな。
まだ、日も高いし天気も良いから、川遊びにでも行くか?」
「ならば、早く水を撒いてしまうのじゃ。
水魔法で水を撒いて、直ぐに終わらせるのじゃ」
「俺は水魔法では水の塊しか作れないから、手で撒いていかないと駄目だな」
『種蒔き、終了いたしました』
『種蒔き、終わりました』
アンとドゥがこちらへと歩いてきた。
「ご苦労様、子供たちが蒔き終わるのを待とう。
その後、皆で水を撒こうか」
「ノアよ、今回は妾が雨を降らせるのじゃ」
「雨を? こんなに天気が良いのに、どうやって?」
「正確には、空中に水魔法を放ち、水を雨として降らせるのじゃ」
「そうか、じゃあ、今回はヴィーヴルにお願いしようかな?」
「分かったのじゃ」
暫くして、トロワ、キャトル、サンクが種蒔きを終えて、こちらへとやって来た。
「トロワ、キャトル、サンク、ご苦労様。
本当なら、この後は畑に水撒きをしなければいけないのだけど、今回はヴィーヴルが雨を降らしてくれるとの事だ。
じゃあ、よろしく頼む」
「では、行くのじゃ」
畑に雨が降り注いでいる。
雨粒はヴィーヴルの背の高さと同じ位の所から出ていて、畑の範囲内だけを濡らしている。
覚えたら、今後の畑の管理にも使えるだろうから、是非とも覚えたいものだ。
後で、やり方をヴィーヴルに聞いてみよう。
「ノアよ、何時まで雨を降らせれば良いのじゃ?」
「うん、そろそろ良いかな?」
ヴィーヴルは雨を降らせるのを止めた。
「良い感じだ。
ヴィーヴル、ありがとう。
今日の作業は、これでお終いだ。
皆、ご苦労様」
「よし、では川遊びへと行くのじゃ」
「さっき、ヴィーヴルと今日の作業が終わったら、皆で行こうって話していたんだ」
『はい、では行きましょう』
『川遊びも久しぶりですね』
『やった~、かわあそびだ~』
『さかな、つかまえられるかな?』
『かにならつかまえられるぞ』
川遊びをしている間、俺は魔力の紐を素早く伸ばせるように練習をしないとな。
「あ、ムッティ、良かったらファーティ達も誘ってきてくれ。
偶には、狩りの練習を早めに切り上げても良いだろ?」
『承知いたしました。
確認してまいります』
働く時は、働く。
だけど、働く為に生きているわけじゃない。
生きる為に働くが、それが全てじゃなくても良いはずだ。




