第63話 ドワーフの街(2)
その後も商店街を見回り、肉以外の食料や香辛料、塩などを袋に入れられても不思議ではない量で買っていく。
肉は狩りに行けば手に入るから、買う必要が無い。
(これだけ買っておけば、しばらくの間は焼いた肉以外も食べられるな)
そうして、再び商店街を見回っていると、種を売っている店を見つけた。
手持ちの袋の中にも、作物の種は入っている。
しかし、袋の中に入れておけば種から成長しないと確認してあるから、種を多く持っていても問題はないし、足りなくなるよりはずっと良い。
ラディッシュ、小カブ、ニンジン、キャベツなどの種を追加で買った。
(これらも植えられるように、畑をまだ大きくしても良いかも知れないな)
予定していた買い物を終えて確認してみると、銀貨1枚と銅貨3枚が手元にあった。
(これだけ残しても仕方がない。
全部使ってしまおう)
追加で食物を買いに行って、そのまま広場へと戻り、商店街とは反対側の工房街へと向かった。
別に買うものはない、冷やかしで見て回るだけだ。
何かを買うにも、先ほど全財産を使い果たした直後だ。
例え買いたくなった物があったとしても、どうしようもない。
先に工房街へ来なかったのは、衝動買いをしないためだ。
必要なものを差し置いてまで、買ってしまうようなことは避けたかった。
元とはいえ冒険者だから、剣を見ていたら欲しくなってしまうかもしれない。
工房街へ行ってみると、工房の入り口は開けっ放しになっていた。
冒険者らしき人々の出入りが激しいのと、鉄を打つ暑さで開けっ放しなのだろう。
俺もそんな冒険者達にまぎれるように、次々と工房を覗いていった。
結論から言えば、衝動買いをしてしまう心配は不要だった。
ドノバンの所で見た剣と同等かそれ以下だったので、「なら、ドノバンに頼めば良いか」という感じだった。
一通り工房街の工房を見た後、正門へ向かって歩き出した。
正門には、来る時に止められた衛兵が立っていた。
「なんだ? 手ぶらで帰るんのか?」
「あぁ、値段の折り合いがつかなくてな」
「それは残念だったな。
まぁ、これに懲りずに、また買いに来るんだな」
「あぁ、それじゃあ」
正門を抜けて、草叢へと入って行った。
『おかえりなさいませ』
ファーティが別の草叢から出てきた。
「あぁ、ただいま。
それじゃ、帰ろうか」
『承知』
「ファーティ、ドノバンの家に向かって歩いた方が近いかな?」
『ここからですと、ドノバン殿の家の方へは向かわずに、真っ直ぐ向かったほうが近いようです』
「じゃあ、そうしよう。
ファーティ、案内を頼む」
『承知、こちらです』
ファーティの先導で道とは違う方向へと歩いていく。
向かう先は俺達の住処だ。
2日ほどしか留守にしていなかったが、早く帰って畑の作業をしないといけないという使命感があった。
ファーティも、きっと我が子に会いたいだろう。
俺達の足取りは知らぬ間に早くなっていた。
「そう言えば、ファーティって食べ物は肉だけで良いのか?」
今まで、(焼いていない)肉ばかりを与えていたが、特に何も言われなかったので気にしていなかった。
昨日、イルデに「犬は木の実を食べない」ようなことを言われたので、食べられるものを把握しておいた方が良いと思ったからだ。
『はい、我らは野菜や木の実などは、殆ど食しません。
肉だけで充分なのです。
骨が付いていると、尚のこと喜ばしいです』
「分かった。
肉だけだと不足しているかもと思ったから、聞いてみて良かったよ」
『お気遣い、感謝いたします』




