第62話 ドワーフの街(1)
正門前に着くと、衛兵が両側で見張っていた。
「おい、お前。
冒険者か? その割には身軽なようだが?」
「あぁ、冒険者だ。
魔法が使えるので、剣は使わない。
この前のクエストで防具が壊れたので、代わりの防具を探しに来たんだ」
「此処じゃなくても、防具ぐらいあるだろ?」
「ここはドワーフの街だろ? どうせなら、良いものを使いたいからな」
「通って良し。
この道を真っ直ぐ行くと公園に突き当たるから、それを左に行けば工房街に行ける。
良い防具が買えると良いな」
「ありがとう」
左に工房街があるのなら、買い物が終わった後にでも、冷やかしに行こう。
冒険者を辞めたとはいえ、武器に興味がなくなった訳ではない。
いや、むしろ好きな方だ。
あまり遅くなるとファーティが心配するし、家に着くのが遅くなるだろうから、程々にしておこう。
真っ直ぐ歩いてきて、公園に突き当たった。
(これを左に行くと工房街だったな。
今は、買い物をしに行くとしよう)
イルデに教えて貰った通りに、右へ曲がり進んでいく。
果物やパン、野菜などいろんなものが並んで、売られている。
(農機具を売っているはずだが、何処だろう?)
商店街を進んでいき、商店街の終わりの方に鍋を売っている店を見つけた。
金属を扱っている店だろうから、農機具も売っているかもしれないと思い、店の前に並べられている商品を見ていた。
店番は不思議そうにこちらを見ている。
冒険者に見える男が、鍋なんかを見ているのだから無理もない。
一通り、並んでいる商品を見たのだが、農機具は見当たらなかった。
「ちょっといいか? 農機具とかを置いてないか?」
「ウチには人間用の農機具は置いてないね」
「いや、ドワーフが使うもので良いんだ」
「ドワーフ用か……何が必要だい?」
「|鍬≪くわ≫と|鎌≪かま≫を、それぞれ2つずつ欲しいんだ」
「取ってくるから、ちょっと待っていてくれ」
店番は店の中に入っていき、鍬と鎌を持ってきた。
「ほいよ、こいつで良いかな?」
「あぁ、十分だ。
いくらだ?」
「全部で銀貨1枚だな」
店番は鍬と鎌を紐で括りつけながら答えた。
店番に銀貨1枚を渡した。
「毎度あり~」
鍬と鎌は、まだ袋に入れない状態で、来た道を戻るように歩いた。
ある程度歩いた所で裏道の方へ進み、人気がないことを確認してから袋の中へ鍬と鎌を袋の中へと入れた。
そして、違う道から商店街の通りへと出て買い物を続ける。
面倒だが、仕方がない。
鍬なんか、どう見ても袋の中に入るようなものじゃないからな。




