第57話 ドワーフとの話し合い(7)
ドノバンの家の前では、ファーティとアイリスが遊んでいた。
「おじちゃん、おかえりなさい」
俺はまだ27だけどな……冒険者を辞めたから、急に老け込んで見えるようになったのかも知れない。
それにしても、アイリスから見たらおじさんなのは間違いないが、ちょっとショックだった。
気を取り直して、
「ただいま、アイリス。
ファーティも、ただいま」
『ワンワン』(お帰りなさいませ)
「そう言えば、俺の名前をまだ言ってなかったな。
アイリス、俺はノアだ」
「うん、わかった。
よろしくね、ノアさん」
「今日、俺達はアイリスの家に泊まることになったから、よろしくな」
「やったぁ、じゃあファーティ、いっしょにねよ?」
『ワ、ワン』(え? そうなのですか?)
「そうだが、何か問題でもあったか?」
『ワンワン』(野営すると思っていました)
「あぁ、イルデが家の中で泊まっても良いと言ってくれたのでな」
『ワン』(承知)
ファーティは、いつもと比べて元気なく返事をしていた。
何かあったのか、後で聞いておくとしよう。
「そろそろ、家の中に入ろうか」
「うん、わかった。
ファーティ、いこ!」
『ワン』(承知)
アイリス、ファーティと一緒に家の中へと入って行った。
机の上には、イノシシを焼いたものが真ん中に置かれていた。
周りには人数分のスープとサラダ、パンも置かれていた。
「おぉ、久しぶりのまともな食事だ」
「今まではどんなものを食べていたの?」
「鹿や熊を焼いただけのものばかりだな。
後は干し肉をそのまま齧ったりとか、木の実もあったけど、俺は食べないかな」
「あら? 木の実はファーティさんが食べていたのかしら? 犬が食べられる木の実はあまり無いはずだけど?」
そういえば、イルデには俺がゴブリン達とも暮らしていることは告げていなかった。
まぁ、それほど不都合なことはないだろうと思い、一緒に暮らしていることを言っておこう。
「俺は今、5体だがゴブリンと一緒に暮らしているんだ。
農機具が欲しいのは、そのゴブリン達に農機具の使い方を覚えさせようと思っているんだ。
そうすれば、畑の作業が楽になるからな」
「それなら、普通の農機具だと大きくないかしら? あ、アイリス、晩御飯の用意ができたから、お父さんを呼んできてくれる?」
「は~い、ファーティ、いこ」
ファーティとアイリスは外へと出て行った。
アイリスはファーティを、すっかり気に入ったようだ。