第42話 畑を耕そう
今日も朝から畑を作るために家から出た。
ヴィーヴルは毎朝、家の前にやってくる。
そのうち、こっちの家に住むんじゃなかろうか? まぁ、そうなったらそうなったで、家を大きく作り変えるだけなので、大して問題でもない。
「いや、それは止めとくのじゃ。
寝ている最中に、元の大きさに戻ったら家が壊れてしまうのじゃ。
それに、結界が無いとどうにも不安での……」
「結界なんてあったのか?」
「洞窟の入り口には、ある程度の強さを持たぬ者には入れないようになっておるのじゃ。
ノアは妾の加護を与えておるから、強さに関係なく入れるようになっておるのじゃ。
ゴブリン達は、入ることはできないはずじゃ」
「ゴブリン達に加護は与えないのか?」
「そう、簡単に与える物ではないのじゃ。
ノアは、ほれ、妾の守護という役目があるからなのじゃ」
「そうだよな、最近、畑や狩りばかりしていたんで、その役目を忘れていたよ」
「頼んだぞ、じゃあ、妾は狩りに行ってくるのじゃ」
「あぁ、頼んだ。
袋を持っていくか?」
「いや、良いのじゃ。
1頭なら、持ってきた方が早いのじゃ」
ヴィーヴルは運動不足解消のためにと、狩りをしてくれることを申し出た。
気が向いたときならと言う事だったが、毎日、来ては狩りをしてきてくれた。
口では運動不足解消のためとは言っているが、多分、何もせずにご馳走になることに引け目を感じたのかもしれない。
(気を使わなくてもいいのに……)
ヴィーヴルなら少しだけでも本気を出したら、群れごと狩ってきてしまうだろう。
そうすると、森の動物がどんどん少なくなっていき、最後にはいなくなってしまうかもしれない。
だから、狩りをするときは1頭までと話し合って決めた。
また、出来る限り大人の雄を狩ってもらうように話した。
「さぁ、こちらは畑を作ろうか。
今日は畑の土を返す作業をやろうと思う。
俺が土を柔らかくするから、皆で出てきた小石を拾って、袋の中に入れていって欲しい」
『分かりました』
「じゃあ、行くぞ……ウォーター」
水の刃を作って、畑へと打ち込む。
水の塊を作って、畑の中を移動させれば早いのかもしれないが、土の中を移動させるという操作ができなかった。
それならばと考えたのがこの方法だった。
斜めに土へと打ち込めば、水の刃の勢いがなくなるまでは土を掘り返してくれる。
「危ないから、俺の前には立つなよ」
魔法が無かったら大変な作業なのだろうと思うが、使えるものは何でも使う。
もっとも、魔法を使って畑を耕そうなんて物好きは、他にいるとは思えないが……