第43話 魔犬が加わった(1)
畑を半分位まで掘り返したときに、ふと右側の茂みから物音が聞こえた。
「あっちの方で物音がしたから、様子を見てくる。
お前達は家の中に逃げるんだ」
『分かりました。
お気を付けて』
森の茂みの方へと駆けて行くと、イノシシの群れと魔犬が4頭、対峙していた。
『新手が来ましたわ。
このままじゃ……』
『お前は子供たちを連れて逃げろ。
ここは、俺が足止めする』
『でも、逃げ道がなくなりました。
こうなったら、私も戦います。』
魔犬の言葉は分かるようだ。
話せる相手が増えたな。……って、呑気に構えている状態じゃない。
「お前らはそこを動くな。
イノシシの前に火の玉を放つから、そちらの方に動くと当たるぞ……ファイヤ」
魔力を集めて、イノシシに向けて火の玉を放つ。
先頭のイノシシに、火の玉が当たった。
魔犬の前に立って、イノシシへ警戒を向けた。
「後ろから襲うとかは、止めてくれよ。
今はイノシシの群れをどうにかしないといけないからな」
『あなた、人間が助けてくれるのかしら?』
『分からん、が、今はこのまま様子を見ていよう。
少なくともこちらに敵意は無いようだしな』
「ファイヤ」
同じイノシシに向けて、再び火の玉を放つ。
今度はさっきより魔力を集めてあったから、イノシシが燃え上がった。
周りのイノシシが怯んで逃げて行った。
(良かった、最小限の犠牲で済んだ様だ……)
「さて、お前たち、大丈夫だったか?」
『こちらを向いたぞ! お前、警戒を解くなよ』
『分かったわ、あなた』
「あ~、信じてもらえないかもしれないが、お前たちの言っていることが分かるんだ。
だから、警戒を解いて欲しい」
『俺たちの言葉が分かる? 騙されるなよ』
『分かっているわ』
「『俺たちの言葉が分かる、騙されるなよ』と『分かっている』か。
まぁ、信じられないだろうが、お前たちが言った内容だよな?」
『おい、本当に分かっているのか?』
『そんなはず無いわよ、騙されちゃ駄目よ』
「『本当に分かっているのか?』と『そんなはず無い、騙されたら駄目』だよな」
『分かっているようだな』
『そうね、あそこまで正確に言われたら信じられないけど、信じるしかない様ね』
「信じて貰えたようだな。
あるきっかけで、魔物の言葉が分かるようになったから、信じられないのも無理ないよ」
『それで、言葉が分かるとして、我に何を望む?』
「なんだ? 何を望むって?」
『何も無くて我を助けたわけではなかろう。
助けられた礼と言っては何だが、出来ることをする』
「別に、何もないよ。
お前たちの言葉が分かって、イノシシの言葉が分からなかったから、とっさにお前たちを助けただけだ。
人間だったら報酬を貰うところだが、お前たちは金貨とかは持っていないだろ? だから、今回はいいよ」
『でも、何か礼をせねば、我らの気が済まない。
さぁ、何でも言ってくれ』
「そうは言われても、困ったな……」
今、困っていることと言えば畑づくりだけど、魔犬に手伝って貰えることなんてないからな。




