第21話 魔法を学ぼう
土魔法で小さいブロックをたくさん作ってみたが、加減がどうも上手くいかない。
大きさが一定しないし、思った通りの大きさにできない。
ヴィーヴルも暇な時なら教えてくれるとのことだから、聞いてみようと思いヴィーヴルの元へと赴いた。
「ヴィーヴル、いいか?」
『GYAA』(なんじゃ?)
「魔法について聞きたいことがあるんだが、いいかな?」
『GYAAGYAAAA』(良いぞ、暫し待て)
ヴィーヴルが人化した。
「何から教えれば良いのじゃ?」
「う~ん、土でブロックを作ってみたのだけど、大きさや形が安定しないんだよな」
「成程、ノアは妾が前に言ったことを覚えておるか?」
「魔法の属性はイメージで決まって、与える魔力の量で威力が決まるってやつか?」
「そうじゃ、土でブロックを作ったと言う事はイメージは出来ておるんじゃな?」
「あぁ、大きさとかが安定していないってことは魔力量が安定していないってことだと思うんだが……」
「そうじゃな、与える魔力量で大きさなどが変わってくるからの」
「安定させるには何かいい方法が無いのかと思って、相談に来たんだ」
「土のブロックと言っておったな?」
「あぁ、それがどうかしたか?」
「土のブロックならば魔力量で決まるのは、大きさともう一つあるぞ」
「形じゃないのか?」
「形を決めるのはイメージに依るものが強い。
多分じゃが、もう一つのものが安定しておらんから、形も大きさも安定しとらんのじゃろ」
「そのもう一つとは?」
「魔力の密度じゃな。
密度とは、土魔法の場合ならば硬さになるじゃろう」
「硬さ……」
「イメージした形に、密度で硬さを決めて魔力を流し込む感じになるかの。
だから……」
そう言って、ヴィーヴルは目の前に壁を土魔法で作った。
「まずは、こちらを叩いてみよ」
そう言って、壁の右側を指さした。
俺が指さされた方の壁を叩くと、壁は簡単に崩れた。
「そして、こちらも同じように叩いてみよ」
今度は壁の左側を指さした。
俺も、さっきと同じように壁を叩くが、今度は崩れなかった。
「右側と左側で、同じようなイメージで作ったのじゃが、注ぎ込む魔力の濃度を変えてあるんじゃ。
土の場合は硬さになったが、火だと温度と、強化されるポイントが変わってくるのじゃ」
「あんな一瞬で、そこまでの事をやっていたのか……」
「それは、慣れじゃな。
そうじゃの……魔力という水が入った水袋を逆さにして、魔力を注ぎ込むイメージかの? 注ぎ込む量は水袋の口を開ける大きさを変えたら、注ぎ込まれる量も変わるじゃろ? それと同じことじゃ。
慣れるまでは、水袋の口の開ける大きさを一定にして位置を変えていくイメージでいくと、濃度は簡単に変えられるし、一定に移動させると濃度が一定になるのじゃ。
練習あるのみというのは、作るイメージと注ぎ込む魔力量を素早く出来るようにするためなのじゃ」
「成程……魔法使いって、凄いんだな……」
「魔法で作ったものは、魔力で打ち消すことができるのじゃ。
これは、キャンセルという技になるのじゃ。
イメージはそのまま消えてなくなるイメージじゃ。
キャンセルするためには、作った時と同じ量以上の魔力量が必要になるのじゃ。
例えば、このように……」
目の前の壁が消えてなくなった。
「今のは龍の魔法についての考え方だから、人間の魔法とは違うかも知れんのじゃ。
ノアには龍の加護を与えたから、龍と同じような感じで魔法を使えるはずと思い、この教え方をしたのじゃ」
人間の魔法にもキャンセルがあるかどうか分からないが、使っているのは見たことがない。
火魔法を打ち消すのならば、水魔法で火を消していたし、土魔法で作った壁は、火魔法か水魔法を当てて壊していた。
もし、人間の魔法にもキャンセルがあるのならば、態々そんな面倒なことをしなくても良いはずなので、恐らく無いのではないかと思う。
「分かりやすくて本当に助かったよ、ありがとう」
「良いのじゃ。
また、何かあったら来ると良いのじゃ」
「あぁ、ありがとう」
俺は、外へと戻って土のブロック作りを再開した。
大きさはレンガぐらいの大きさで、硬さは素手で叩いても壊れない強さを目指して……




