第六話
最終話です。
自分がおかした過ちは決して許されることではない。
でも、そればかりいつまでも引きずっていては、
新しい一歩を踏み出せない。
なにも解決できないのだ。
私は立ち上がった。
このままじゃいけない。
前に進まなくては。
二年目にしての決断が何から始まったものなのか、
それははっきりしていないけれど、
とにかく今を変えようと私は立ち上がった。
きっかけなんてどうでもよかったんだ。
大事なのはしっかりと向き合える心。
今まで、できなかった自分が信じられないくらい、
今の私は強い。
ベンチを離れ、公園を出る。
その足取りはしっかりとしていて、
幽霊でも、夢遊病者でもなかった。
向かうところはただひとつ。
そこにすべての答えが待っている。
確かな思いは自信となって、私の足を動かす。
いつの間にか私は走り出していた。
現実から逃げるのではなく、正面から向き合って戦おう。
今ならあの大通りも渡ることができる。
それは時間が薄めた苦しみでも、我慢した強がりでもない。
大切なものを取り戻したいという強い決意だ。
和風の大豪邸の前で私の足は止まった。
軽く息を整え、緊張をまぎらわす。
「よし」
気合を入れ、ドアチャイムのボタンを押した。
「はーい」
ぱたぱたという足音。
私の期待と緊張がどんどんふくらんでいく。
それがピークに達したとき・・・・・
彼女は、二年前のままだった。
しかし、右手だけがダランと垂れたまま動かない。
ドアから顔を出したナナを見て、私は思わず泣きそうになってしまった。
「あの、ね。このままじゃいけないなって。
なんてゆーか、ほら、あれ・・・・・」
二年ぶりの再会にあまりに感動してしまい、
自分でも何を言っているのか、いないのか、わからなかった。
ナナは最初、とても驚いていたけれど、
こくりとひとつうなずいて、私の腕を左手でつかんだ。
今度は私が驚く番だった。
その力がものすごく強かったから。
そうだった、ナナは強いんだ。
なにがあっても負けない強い人だったんだ。
私の腕は、ナナにぐいぐいと引っ張られる。
私はバランスをくずしながら家の中に入った。
靴を脱ぎ散らかし、廊下を進む。
ナナは何も言わずに、私をどんどん引っ張る。
しばらくして、私の腕は解放された。
そこは、不思議な部屋だった。
床の間にふすまに畳と、和室三代要素がそろっているにも関わらず、
真ん中で堂々としているのは、一台の立派なグランドピアノ。
ナナはそれに歩み寄り、椅子に腰掛けた。
そして・・・・・
きこえてきたのは、昔と変わらない天才的なピアノだった。
生み出される音は重なって美しく響く。
高速で動く指先は鍵盤の上を踊る様だった。
繊細なピアニシモと力強いフォルテシモ。
片手をたくさん動かして、夢中でピアノを弾いているナナを見て、
私の目から涙がこぼれる。
「見つけた。」
探していたのはこれだった。
忘れていたのはこれだった。
涙は後から後から、私の頬を伝って流れ落ちる。
それさえ、ピアノの音と絡まって、ひとつの曲になっていく。
気づけば、ナナも泣いていた。
涙の二重奏だね。
私はにっこりと笑いかける。
久しぶりの、上辺だけじゃない本物の笑顔だった。
ナナは泣きながら笑って言った。
「おかえり、あやめ」
そして、また二人で笑った。
やっぱりナナは天才で、不思議ちゃんで、
私の大事な親友だ。
読んでくださってありがとうございました。
初投稿でした。
実はこれ、小学生の時に書いたやつなんです。
今読み返すと、なに書いてたんだろ・・・ってかんじです。
だめですね、昔のもの読み返すのは。
この先少しでも文章がマシになればいいんですけどね。
とゆーわけで、ありがとうございました。




