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episode75〜潜在的な〜

たくさんの作品から覗いて下さり、ありがとうございます。最後まで頂けるととても嬉しいです。


突然現れた子オーガを手懐けたアルネ。


辺りはまだ夜を纏っている。

これからの本格的な夜を迎えるため、アルネ達は一旦テントの方へと戻った。

もちろん子オーガも一緒だ。


アルネは完全に心を緩めているが、他の者達は違った。


子供とは到底思えない巨体に警戒心が解放されない。

言葉も通じなければ、意思疎通すら危うい。

そう、かなり危うい存在なのだ。


今夜は眠れない夜になるだろうと、アルネとデイル以外の者達は言葉を交わさなくとも疎通していた。


いつ何があるかわからない状況下。


更には、途中発したリランの一言も相まった。


「まさか、その力を使わずにして手懐けるとはな。それに子がいるからには、必ず近くに親もいるはずなんだが… それにしても中々出てこないな? ひょっとすると、近くにいないのか? それとも既に1人か?」


「そんな… 1人ぼっちだなんて… いや、まだわからないわ」


ルクナはリランのその言葉に、警戒を解き切るにはまだ早いと思った。

万が一に備えて、従者達にも気を途切れさせないようにしていた。


もちろんそれ以上に気を張っているのは、その従者達である。


そんな中、ハルザが口を開く。


「文献によると、オーガは家族に対しての愛情が非常に深い。こんな所に、1人で… しかも大切な子を放置するはずがないかと。まだ生き残っているのであれば、必ず何処かに… 」


その言葉に、一同は再度辺りを見回した。


「そうよね。もしかしたら、その別邸という所に居るのかもしれないわね… 」


「そうだな… それに今夜はもう遅い。明日また考える事にしよう」


「はい、そのように致しましょう。しかし、この子オーガは側に置いておいても、本当に大丈夫なのでしょうか?」


ヴィカのその言葉に、アルネがすかさず反応を示した。


「大丈夫よ! 何なら私が… 」


すると、従者達がアルネの方を見ながら、何かを訴えるかのように首を一斉に向けてきた。


そして、目を細めながら小刻みに首を振る。


(えっ… 何!? あ… ) 


「こいつの事は俺らに任せとけ」


ゾルが頼もしい言葉を発したおかげもあって、アルネはその先の言葉を続けた。


「そ、そしたら… 見張り番達にお願いしようかな? よしよし、良い子ね。みぃんな怖くないから良い子にね? すぐに仲良くなれるわ。何なら子守唄でも歌ってもら… 」


「「「歌いませんよ!」」」


三者の声が揃う。


それを見ていたノギジやゾルがクスクスと笑っているのが聞こえる。


「あら? 私は歌っても良くてよ?」


そう言うのは、美声に自信のあるシュリだった。

他の者達の視線が気になったため、アルネは子守唄を諦めた。


「ゔ… じゃ、じゃあ。よろしくね!」


そうして、アルネとルクナは専用のテントの中へと入り、共に眠りに就いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして翌朝。

アルネの朝は早かった。


従者達の疲労を横目に、ルクナはアルネの方へと目を向ける。


既にアルネのその身体は、まだ眠りについている子オーガの膝の方へと傾けていた。

優しく寄りかかるようにして、身体よりも大きな膝を撫でる。


従者達は急に起き上がった事によって、寝ぼけて突然襲いかかってこないかを懸念していた。

しかし、その心配はすぐに解ける事となる。


子供とは思えぬ大きな巨体を、ゆっくりと起こし目を擦る子オーガ。

そしてアルネへと、頬擦りに近い仕草をした。


(とりあえず大丈夫そうだな… )


そう思いながら、ルクナは従者達に功労を称えるひと言を添えた。


子オーガが迷子なのか、親が存在するのかが不明な状態で、アルネ達は目的地である別邸へと足を進めることにした。


その場に他のオーガ族がいる事を期待して。


西の森を更に進む。


(随分と懐いてるな)


(ノギジやゾルまで…)


一行の最後尾を歩く子オーガを横目に、従者達は各々思う。


もちろん、アルネには子オーガを置いて行くという選択肢は絶無だった。


ルクナ自身も、反対の意を唱える事はしなかった。

それに対し、従者達の警戒心は更に強まる事となる。


はじめは、アルネとデイルだけだった。


デイル自身は、アルネ以外に関心がないため、特に気にする事もなく、フラフラと飛び回っていた。

彼の性格上ゆえだ。

アルネに害を与えた時の対応のみを考えていた。

ただそれだけである。

そして、ノギジやゾルも気持ちがわかるのか、既に心許すまでの仲になっていた。


彼らは主従関係という概念がない分、子オーガへの接し方に対し、余裕があった。

そして彼らは元々、同郷という意味での仲間である。

もちろん、彼ら自身は出会ったことがない。


彼らの潜在的な遺伝子が、そうさせているのかもしれない。


アンセクトの血とルー族の血。

遺伝子レベルの関係なのかもしれない。



しかし、そう奥へと進んでいない所でそれは起こった。


列の後方をアルネ達が、子オーガと共に歩いていた。


すると、昨夜同様に突然辺りが真っ暗になったのだ。


(ん? 雲? いや違う… この感じは見覚えが… )


アルネは昨晩の事が、鮮明に蘇った。


ノギジがその万能な嗅覚によって、その方へと既に身を向けていた。

その顔は、今にでも気絶する寸前であった。


アルネはその異変に口を開く。


「ノギジ!?」


(あ… )


その瞬間、大きな地響きと共に、身体が宙へと舞った。


「アルネッ!」


その身体を、、ルクナが即座に受け止めてくれた。


一瞬の出来事によって、頭と身体の状況が追いつかないアルネ。


いや、わかっていたはずだ。


しかし、昨晩同様に、気配を感じなかったのだ。


「えっ!? じ、地震!?」


「いや違うっ! 親だ! 子の親が、こちらに敵意を向けてきている! このままだとまずいぞ!」


アルネ達の前には、とてつもなく大きな巨体が立ちはだかっていた。


見下ろす表情は、明らかに怒りを放っていた。


(想像以上の巨体! この子の時もそうだったけど… こんなに大きくて、存在感もあるのに、全然気配がなかった… )


アルネは小さな警戒心と、大きな好奇心に駆られていた。


デイルはその逃げ足の速さで、近くの木に乗り移っていた。


(アルネ… まさか)


ノギジやゾルはというと、ネネルトによってその身を抱えられて無事であった。


「これがオーガ族の成体… ? この巨体で、一体今まで何処に身を隠していたていうのかしら?  絶対あの子の親だわ! でもとても怒ってる… この親を味方になんてできるのかしら… ううん… この ‘人‘ も種族… なら… 」


そう言うと、アルネは親オーガの前に出た。


その勇気は誰よりも強かった。


「ちょっ… アルネ様っ! 危険です! 今は一旦身を引いてっ! この怪物は、子供を攫われたと思い込んでいて、気が立っています!」


そのハルザの言葉に、アルネは声を荒げた。


「違うっ! この方は怪物なんかじゃないっ! 同じ仲間、種は違うけどっ… 同じ世界に存在している仲間よ! 私達が知らない昔には、一緒に共存していたはず! だから… 話す!」


「え… ? は、話す? 言葉が通じるわけが… 」


ハルザだけではない。

その場にいた全員が、その思考に理解が出来ないでいた。


(ふ… さぁ、ここからが本番じゃ。お手並み拝見といこうか)


リランはそう思いながら、期待を込めた笑みを浮かべた。


しかし次の瞬間、アルネの眼の色が変わった。


その顔はまるで目の前に、同じ目線の人間がいるような、そんな対等な表情をしていた。


「あのっ! この子と… っ」


しかし親オーガは、その腕を止めようとしない。


「チッ… 聞こえてないか」


するとアルネはその大きな足元に、一気に近づくように身を屈めた。


「… っく、ごめんっ… なさい!」


そう言うと、親オーガの膝裏を狙って、剣を鞘のままで思いっきり振った。


その勢いで、親オーガは体勢を崩す。


(((えー!? 話すんじゃなかったのか!?)))


そして大きな身体が、地面へと近づいた。


その瞬間、アルネはその身のこなしで、一気に親オーガの耳元へと登って行った。


そして言う。


「ごきげんようっ! あなたの大切なお子さんはっ、無事ですよぉ! それよりも、あなたのその身体中の傷の方が心配です。手当てしたいので、少しその手をお止めになって頂けませんか?」


アルネのその言葉は、親オーガの耳へと届いたようだった。


親オーガは、コクンと頷くような仕草をしたかと思えば、力尽きたようにそのまま倒れてしまった。


周りに大きく砂埃が舞う。


「アルネ!! ゴホッ… 」 


ルクナの呼びかけに、すかさず返事をするアルネ。

得意の身のこなしで、うまく着地したようだった。


埃が散った後の親オーガの様子を、確認するようにネネルトが近づく。


「事尽きてしまったのか… ?」


ルクナの言葉に、慎重に応える。


「いえ… 見たところ気絶しているようです」


「そうか… 良かった。アルネ? 無事か?」


「えぇ! 私はこの通り… 」


「そうか、それなら良かった。では良いか?」


そう言いながら、ルクナはその氷のような満面な笑みをアルネの方へと向けたまま、両手をこめかみに当てた。


「え… ?」


そして、愛情を込めてお叱りの拳を捩じ込んだ。


「いっ! 痛っ… いだだだだだだっ! ちょっ! 何するのよ! ルクッルクナッてば!」


「っはぁあ… 何っ回言えばわかるんだ! 無理をするなよ! 今後、同じような目に遭いたくなかったら、そのお転婆な行動を慎めっ! いいかっ!?」


(怖わわぁ… )


「全く、お転婆って… 子供じゃないんだから… 」


そう言いながら、アルネは痛みの強い部分を撫でた。


「俺から見れば、十分子供だ! その身体以上に、この頭の中がっなっ」


そう言いながら、ルクナは再度集中攻撃として、指を当てた。


「痛っ… もう… わかったわよ… 気を付ける… 多分」


その言葉に睨みを植え付けるルクナ。

ひとため息を吐くと、状況を尋ねた。


「それで… ? 一体何をしたんだ?」


「う、うん… それなら私は何もしてないわよ? ただ挨拶しただけ! いち淑女としてね!」


「え? あれは幻か? 今、その刃を突き刺したように見えたんだが… ?」


(私もこの目でしかと見たわ… 確かに刺してた… ブスッとね)


(淑女… ? 寸前に舌打ちしていたくせに… ? 淑女?)


(口より先に、手が出るタイプだな)


(やはり、本来の力ではなく、アルネとしての力を使ったか… 全く、自分の立場をわかっておらぬのか… この娘は)


その場にいた全員の思う事は同じだった。


「それにしてもこの方… 本当にものすごい傷… 一体何でこんなにも… ネネちゃん、手当てをお願いできる?」


「… 御意」 


(一瞬、躊躇したわね?)


「それで? これからどうする? 起きるまで待つのはいいが、再度気が立つ可能性もある。親が起きないまま、子をこのままにしてもおけない… 」


「うーん、そうねぇ、とりあえずご飯にする?」


「「「「え?」」」」


そこにいた者達は、目が点になった。


「あ! 近くに… 川があるな! 匂いが… あっちだ!」


ルー族であるノギジの鼻に従い、そしてアルネの言葉に従い、一同は食事にすることになった。





最後まで読んで頂きありがとうございます!

突っ走って書いておりますので、不安定な部分も多いかと思います。

何か気になることがあれば、いつでも連絡お待ちしております。

また、評価などしていただけると、とても励みになります。

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