episode66〜弔い〜
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ハルザ誘導のもと、城の奥まで足を進めて行くと、そこには到底あり得ないような物があった。
とてつもなく大きな扉。
それを前にした一同は、想像以上の大きさに声を失う。
(ぅんわぁ… 馬鹿デカいなこの扉)
「確かに… これを1人で開けるにも、無理がありそうだ」
「でも何だろ… 変よね?」
「おや? アルネ様もお気付きになられましたか?」
アルネの声に反応を示すのは、ハルザだ。
そして、ルクナも疑問を抱いていた。
「俺も何となく違和感を感じていた… 位置か?」
「左様でございますルクナ様。この扉、やや右寄りに設置されているようなんです。通常、このような大扉は、真ん中に位置されているのがほとんどです。
現にこの城の他の部屋への扉は、正中にございます。ここだけ、扉の位置が片方に寄っているのです」
「設計ミス… にしては、あからさまだしな… 家主の趣味って感じでもなさそう。もしかしたら、この扉に続く部屋に、何か秘密があるのかもしれないわね?」
アルネが、思う事を口に出す。
それに対し、ハルザは頷き応えた。
「そうですね。この扉を開けてみない事には何とも… 」
「ネネルト、ハルザ、シュリこれを… 」
「御意」
ルクナの指示によって、従者達はその扉に手を掛けた。
しかし、その扉はビクともしない。
それを見ていた他の者達も手を貸す。
それでも尚、その扉は開かなかった。
「開く手応えが全くありません」
困ったようにヴィカが口を開く。
「あれ? 力貸そうか?」
大聖女から、そう言葉が出るのには皆が慣れていた。
しかしもちろん、誰も応えない。
無言の拒否である。
いや、無視とも言う。
(ん? 反応が無いな? もしかしたら、この力が必要なのかもしれないのに)
彼女は彼女なりに考えていた。
すると、その扉の上方から声がした。
「おーい! ここだ!」
「えっ!? ゾル!? いつの間に!?」
その声は、何かの違和感を瞬時に感じ取っていたゾルのものだった。
彼は生まれつきその羽根を本来の用途として、使用する事が出来ない。
その代わり、優れた身体能力を持ち合わせていた。
「ここ! ここに鍵が掛かってるぞ!」
(そうか! だから開かなかったのか!)
「ゾル! ナイス! それを外してくれるー?」
アルネは、遠く上方にいたゾルにそう叫ぶ。
「わかった!」
すると、それは簡単に外れた。
「いいぞー!」
「ありがとう! ゾル! あなたが居てくれて良かったわ!」
そして、再びその扉に手をかける。
今度はすんなりと扉が開いた。
「え? え? これって… 」
一同はその光景に、更に驚愕した。
「これは… 扉なんかじゃ… 」
入り口のないその扉は、開くと一面に大きな文字がびっしりと書かれていた。
「まさか… 本… だったとは… 」
そう、扉だと思っていたその歪な扉は、天井いっぱいまで広がる大きな本だったのだ。
鍵を外し、上から降りて来たゾルも驚く。
「すごいな! これまた大きな文字だ」
下へと戻ってきたゾルに、労いの言葉をかけるルクナ。
「さすがだな。礼を言う。ゾルがいなければ当分開けるのは難しかっただろう」
ゾルは嬉しそうに鼻を掻いた。
「でもこれ読めるの?」
アルネがハルザに問いかけた。
「この文字は… 」
ハルザはその文字を見つめ、黙り込みながら考えた。
長い時間黙ったまま、その文字に触れたり、見上げたりするハルザ。
「読… める… 読めます… え? 何故だ? どうして… ?」
「ハルザ?」
本人も混乱する程、理解できているようだった。
そんなハルザに、ルクナがそっと声を掛けた。
「はい… 全てではございませんが、所々読めます」
「さすがだな… しかしその所々とはどういうことだ?」
「この文字は今まで解読した、ルー族、アンセクト族、シレーヌ族、ユマン族… そしてヴァンパイアの文字をバラバラにして組み合わせた物のようです。
しかし、わからない部分もございます。文字を繋げ、文脈を見ていけば、解読できるかと… 」
その言葉に、深く頷くルクナ。
「そうか… 焦らなくていい。読める箇所だけでも解読してくれ」
「御意」
「ヴィカ… ハルザについててやれ。それと出来ればだが… 」
「はい、この文字を知識として取り入れさせて頂きます」
「それでいいか? ハルザ」
「もちろんでございます。しかし、この膨大な言語を… 」
ヴィカの様子がいつもより、違うことに気が付くアルネ。
ルクナの方をチラリと横目で見ると、少し微笑んでいるように見えた。
(あ、この人達天才だった… )
そう、ヴィカは祖国にて、1、2を争う程の頭脳の持ち主。
出来る側近は本物だった。
彼は新たな知識を得られるというこの状況、そして未知なるそれらの言語にワクワクしていた。
ここで、思っている以上の能力を発揮することとなる。
すると、ノギジも一緒にその本を読みたいと名乗り出た。
そして、パストゥールの言葉が混ざっている可能性もあるので、デイルもその場に加わる事となった。
アルネ自身もできればその場に残りたかったのだが、この古城の探索との天秤に掛けて悩んだ。
「うーん、うーん… 」
(私も一緒に読みたいけど… でもまず他言語を覚えないといけないし… かなり時間がかかっちゃうから、皆に迷惑かけちゃう… そうなると… やはり後でハルザにでも教えてもらって、本を借りていくか… )
「アルネ?」
ルクナがその心境に察するように、顔を覗き込んだ。
「あ、うん! 私は古城の方を探索するわ」
「そうか。この城に長く留まる事は出来ないが… 後で本を何冊か借りて行くといい」
「えっ!? いいの!? やったぁ!」
「あぁ、ハルザに頼んでおく」
嬉しそうにするアルネ。
その姿を見て、ルクナも更に嬉しそうに微笑んだ。
こうして、巨大な本の解読には、ハルザを筆頭にヴィカとノギジ、デイルが残る事となった。
他、アルネとルクナ、ゾル、ネネルト、シュリは古城の探索へと足を進めるのだった。
「デイルは離れていても大丈夫なのか?」
ルクナのふとした疑問が耳に掠れた。
「えぇ。だって、島の皆は大丈夫だったでしょ? だから、少なくともあの島の範囲くらいは離れていても、大丈夫なんだと思う。多分… 」
(多分… ? あるいは、同じテリトリーに限る… か)
ゾルが先頭に、最後尾にネネルトがつく。
(1つ1つの空間が大きいから、凄く広く見えるけど、全体的にはそうでもないのよね? それにしても地下牢とかもあるのかしら? 全て見たいわ! あぁワクワクするっ!)
「あぁ全て見よう。しかし、危険な場所は慎重に。いいな?」
「あ… うん」
(私ってそんなに表情に出やすいかしら? 恥ずっ… )
アルネが頬を染めている様子を見て、ふっと笑みを浮かべるルクナ。
(なんで、ずっとこっち見てんのよ)
アルネは、片手で顔の近くに即席の壁を作り上げた。
こうして、大まかの見える場所を、片っ端から見ていくアルネ達。
大きな部屋は全部で4つ。
その他に、客間のような広間と大きな暖炉のあるリビングがあった。
そして、もちろんキッチンや湯浴み場もある。
どれもかしこも身体が、すっぽりとハマるくらい大きかった。
「まるで池ね… お湯張るのに一体どのくらいかかるのかしら?」
しかし探索しながらも、アルネはあの大きな本について考えていた。
「ルクナ、あの巨大な本を読み明かすのに、きっと数日はかかるわよね?」
「そうだな、ページ数にもよるだろうから… 」
「そしたら、私達の過ごす場所を、ちょいとばかしお借りしたいわよね? 埃も凄そうだし、少し掃除もしないと… 」
「そうだな。それは俺も考えていた。とりあえず今日は、この何処かの部屋を借りてテントを張ろうと思っている」
すると、先頭にいたゾルが声を出した。
「建物の中は、ここで終わりみたいだぞ? 意外とあっさり終わったな?」
「そうか。危険も特には無さそうだった。あとは… 」
そう言いながら、ルクナは何処か壁の外の方を見た。
「もしかして、庭?」
アルネがそう言うと、ルクナは頷き応えた。
「あぁ。ハルザが弔ったここの住人である種族が、きっとそこにいる。一度… 会いたい」
「そうね、行きましょ! そうだ!」
そう言うと、アルネは目を瞑り何かを呟いた。
「ん? どうした?」
「… うんっ! さぁ! 行こうっ!」
そして少し進むと、応接間らしき場所から繋がるその広々とした庭園へと出た。
「素敵… 草花は枯れちゃって無いみたいだけど… 荒れてはない… あっ!」
そう言いながら、アルネはその小さな丘のように膨らむ場所へと駆け寄った。
「ここがきっと… 」
そう呟くと、アルネはゆっくりと膝を折り、祈るように目を瞑った。
アルネの身体が、ほんのりと光り始める。
そして次の瞬間、上空から色とりどりの花々が舞い降りた。
雪が降るかのように花々が降り注ぐ。
夕日に染まるその橙色と相まって、それらは舞い踊るかのように、ある者が眠る場所へとゆっくり降りていく。
それだけではなかった。
本来、咲き誇っていたであろう庭の草花が、一斉に息を吹き返したのだ。
その光景に目を見張る一同。
それはとても静かで、穏やかな時が流れていた。
アルネはわかっていたかのように、まだ目を瞑って祈っている。
その顔には、温かい笑みが浮かんでいた。
「美しい… 」
(これが大聖女の聖なる祈り… )
「ほんと… とても綺麗ね… 」
シュリもうっとりとした表情を浮かべながら、アルネを見た。
そして、その目はルクナの方へと映る。
(あらあら… 殿下ったら… 本当にもう… )
シュリは、ルクナのその愛おしい者を見つめる表情に微笑んだ。
アルネはゆっくり立ち上がると、その力を収めた。
「ルクナも… 」
アルネはルクナをその場に促した。
しかし、返事が無い。
目は合っているのに、返事が無いのだ。
「ん? ルクナ?」
そう言いながら、アルネはルクナの方へと近づいた。
「ルクナ?」
彼は、アルネの顔が目の前に来て、やっとその声に気が付いた。
「っ…、あぁ… そ、そうだな… 」
「どうしたの?」
「いや… 何でもない。それにしてもアルネ… 力を使ったのか?」
「力? 弔いの祈りをしただけだけど… 」
「ふふ、きっとそれが大聖女としての ’本来の力’ なのよ」
シュリの言葉に、笑みを浮かべながら嬉しそうに頷くアルネ。
「そう… 」
ルクナが弔いの祈りを終えるとそれに続いて、他の者達も祈りを捧げた。
「アルネ… この花は一体どこから… 」
ルクナの問いに、天を仰ぐようにして応えるアルネ。
「さっき、 ’お願い’ をしたの。弔いの贈り物をしたいって… 」
「精霊達か?」
「えぇ… 素敵な贈り物よね?」
「本当! センス抜群ね!」
シュリはそう言いながら、夕焼けの空に向かって口付けを投げた。
精霊達はそれを快く受け取った… 多分。
「精霊か… 美しいな」
そう言うと、アルネの頭にそっと触れた。
その指はすぐに離れると、ひとひらの花を摘んでいた。
「美しい… 」
その青い瞳は、花弁ではなく真っ直ぐにアルネを見ていた。
アルネも、その瞳に何だか目が離せなくなっていた。
引き寄せられるように、瞬きができない。
しかし、すぐに我に返ると、パッと顔を逸らしてしまった。
「さっ! みぃんなの所に戻りましょ!」
アルネの表情は、ほんのり赤く染まっていた。
それが夕陽のせいなのかは、誰にもわからない。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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