episode50〜繋がり〜
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月華蝶ロクサーヌ。
その息子であるという、衝撃的な事実を知ったアルネ達。
当然その本人であるライも、同じ時して知り得た。
よって一部のアンセクト族以外は、突然の真実に受け入れるのに頭がついていかなかった。
しかし、これまでのライのふるまいを見てきた彼らにとって、何処か納得する部分があった。
「サリドナ殿、もう少し聞きたいのだが… もし、ライがその任務を担うことになったとしたら、女王に代わって、ライによる楽園への道を引き継ぐ事となるのはわかった。
しかし、その前にライがその王族である事は、どうやったら女神達にわかるんだ?」
ルクナの疑問に、真っ直ぐに応える長老サリドナ。
「それは女王と交信した瞬間だ。交信が出来るのは王族のみ。そして、その頭の中の声は女神達にも届いてしまうであろう。そうなると女神達によって無理矢理、役目を負わされる可能性があるからな。
彼女達にとって、道は多い方がいい。もしも、現王が死することがなければ、道が増える事になるからの」
(女王が死なない可能性がある? 一か八かってところなのかしら? だから女王は、ライの存在を本人にも隠していた。そういう事か… )
「その道は、ライへと完全に移行するわけではないのか?」
「あぁ、もし女王がその後も生き長らえればの話だがな。その場合、その道は2つとなるだろう。つまり… お二方がその楽園への道になるということじゃ」
2人の会話を聞いていたアルネは、両手を頭に抱えながら、精一杯の脳内総括を行っていた。
「えーとえーと… て事は、女神達は交信をすることはできないけど、交信の声を聞くことはできる。更には、彼女達はこっちに勝手に来る事はできないってことですよね? それで、その唯一の移動手段が、アンセクト族の王族であるそれを受け継ぐ者… 」
「その通りだ」
アルネはその答え合わせが上手くいき、思わずガッツポーズを天に見せつけた。
しかし、心の中は乱れていた。
(ややややこし過ぎて、やっと付いてけるくらいだぞ!!)
そして、すぐに我に返った。
「ん? て事は、ライも交信したら、その女神達に居場所がわかっちゃうのか!? じゃぁライもこの耳飾りを… 」
「それは意味をなさない」
「え?」
即座にサリドナが否定の意を発した。
「その名の通りこの耳飾りは、あるお方がキティール島出身者のみに対応できるように、お作りになられた物だからな」
アルネが首を傾げながら、問いかけた。
「以前もそのような事を仰ってましたよね? でも… 思ったんですけど、私、キティール島から来たけれど、生まれ故郷ではありませんよ? あ、それでも出身者って言うのかしら?」
「「「え?」」」
その言葉にその場にいた全員が、驚きを隠せないでいた。
まさに目が点だ。
「え? ア、アルネ様? 何を仰っているのですか? 聞いている情報と異なりますが… 」
「ヴィカ? 何処、情報よそれ」
「ル、ルクナ様… これは一体… ?」
バツが悪そうにこめかみを掻きながら、口を開くルクナ。
「あぁ… 若干、そうじゃないかなとは思ってはいたが… おそらく、アルネは俺と同じ国で産まれ、そこから母親である聖女と共にキティール島へ来た可能性が… ある。予想でしかないが… 」
「何故それを、仰らなかったんですか!?」
「あ、いや… それに関しては確証が得られなかった事もあってだな… その、あまり口にするのも… 」
「その通りよ。ルクナは悪くないわ。確証はない… でも、私にはわかる。それに、別に隠してたわけでもないし、黙っててとも言わなかったから」
「では何故!?」
「聞かれなかったからよ」
「へ?」
「ん? 聞かれなかったからよ? それに私が何処出身でも、故郷はキティール島だと思ってるし」
ヴィカはその拳を強く握りしめた。
彼は葛藤していた。
大聖女としてのアルネか、生意気な小娘としてのアルネか。
(そろそろ殴っても… いいだろうか?)
珍しく、その低い声を主人へと向けるヴィカ。
「後で… ご説明よろしいでしょうか?」
「あ、あぁ。もちろんだ」
ルクナは変な汗をちょっぴりかいた。
そして話の矛先は、デイルの方にも飛ぶ。
「デイルはもちろん、このことは知っていたんだろう?」
「あーうん? 詳しい事は俺にもわからないな。なんせ、俺が記憶しているアルネは、既に幼児で俺も同じ時期に生まれたようだからな」
「そうか… 」
(ん? 長く生きるはずのデイルが? 同じ歳くらいってことか?)
ヴィカは少し首を傾げた。
そして、アルネは飄々とサリドナへと質問を投げかける。
「サリドナさん、この耳飾りを作ったそのお方って、一体誰なんですか?」
しかし、彼女はその問いには口を噤んだ。
「それは… すまぬが言えない。他言無用にと仰せつかっているからな… 」
「そう… ですか… それは仕方ないです。それ程の忠誠心。そのお方を大変慕っておられるのですね」
アルネはすんなりと受け入れた。
その言葉に、サリドナは鼻の奥に少しばかりの痛みが走った。
「それにしても、女神って言われている彼女達はこっちへ降りてきて、一体何をしようとしているんですかねぇ?」
「それはおそらく… 」
「何か心当たりがあるのか?」
「これも憶測でしかないが… おそらく心の入れ替えだ」
アルネはその一言によって、折角整理できてきた脳内が、また乱れ始めた。
(あ、あぁ… もう)
「心の入れ替え?」
ルクナが聞き返す。
「生き物というのは、悪い心と良い心を持ち合わせている。それが ’族’ という種に近い者程それが強い。もちろんほとんどの者達は、良い心の方が多い。それを入れ替えようとしているのではないかと… 」
(もうこれ以上は… 頭がぁ… 付いてけないよぉ… 今一番大事なとこなのに… )
アルネは失いかけたその気に、喝を入れた。
その奇行に、近くにいたゾルがビクつく。
(ん? しかし、何故それをサリドナ殿が知っているのだ?)
ルクナは更なる疑問を抱いた。
「それを止めるために存在するのが、大聖女様じゃ… そう、アルネ、其方じゃ」
「わた… し。で、でも、今までにも大聖女っていたんでしょ? その人達って… 」
「それは… 」
俯き言葉を選ぶように黙り込むサリドナ。
「… それは、無念だった。それ程力があるのじゃ。彼女達には誰も手が出せない」
「皆… 手に負えなく、亡くなったの? 何も出来なかった? そんなの… 私に… 私に出来るわけ… 」
「珍しく弱気だな?」
「え?」
ルクナのその声に、混乱が解ける気がした。
「いつものアルネは何処に行った? 弱気になるな、大聖女アルネ! 大丈夫だ! 俺達がいる! それに、今までの大聖女達が、何も出来なかったと決めつけるのはまだ早い。何か手掛かりがあるかもしれない。それに… 繋がっている」
その震える唇をいっぱいに噛み締めるアルネ。
「… っく… 繋… がって?」
「そうだ。その命を繋いだ。それと共に、大聖女としての力も、その… 想いも。アルネの、この中にある。だから、諦めるな! 少なくともその意志達と繋がっているお前だけは、諦めてはいけない! 酷な事を言っているかもしれないが… 」
その握った手に、強さが噴き返る。
「ルクナ… ルク… ナ… っ! うん… うんうんっ! そうだよね! 私で終わらせる! 種族達を見つけて! 絶対に私で終わらせるからっ! もう… 不安にはさせない! 弱音もっ… 吐かない! … 多分」
「ふふ… その意気だ。しかし、少しくらいならいいんだぞ… 俺の前だけ… とか… 」
「サリドナさんっ! 私! やります! やってやりますよ!」
(あ… 聞いてない… )
「うむ… 」
(その勢いが、仇とならなければ良いがな… )
「なので… 知っている事、出来るだけ教えて下さい!」
「あぁ、その想いしかと受け止めたぞ。しかし、儂に出来ることも限られておるのでな… 昔話しかできないぞ? そうじゃな… 種族達のことに関してなら… 」
そう言って、サリドナは知っている限りの種族の情報をアルネ達に話した。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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