episode48〜人魚〜
たくさんの作品の中きら見て下さり、ありがとうございます。
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アルネの目の前に、それはそれは美しい女性が現れた。
その瞳はとても大きく、潤っていた。
更には耳が少し大きく、ヒレのような物が見えていたのだ。
「え… 人… 魚? いや、これは… シレーヌ族っ!」
その麗しき女性は、自身のその姿を驚いたように見ながら言葉を放った。
「戻っ… た? キャーー! 戻りましたわっ! あなたが!? ありがとうございますぅ!」
陽気なシレーヌ族の娘は、目の前に居たアルネへと盛大にお礼を放った。
「あ、そ、そうなん… です… 」
(実験してたとは言えない… )
アルネは少し、ばつが悪そうに応えた。
「えぇと… 何で戻れたのかはわからないんだけど… 多分その耳飾りが… 」
そうそれは、存在を示す機能であった。
確かに直前にゾルから聞いた説明からは、 ’存在を示す’ と聞いていた。
しかしアルネはそれを ’存在の位置を現す’ とばかり思い込んでいた。
つまり、その耳飾りを付けている者の位置をわかるようにするもの。
そう、GPSのような物だと、そう思い込んでいたのだ。
しかし実際のそれは、 ’その本来の姿形を現す’ というものであった。
そして、更にはその突風の凄まじさだった。
もちろん、ゾルが嘘をついていたわけでもない。
作り上げた本人ですら、想像以上の代物に仕上げてしまっていたのだから。
ハルザが拾った人形。
それは何かの呪いで人形にされていた、シレーヌ族の女性であった事も、知る事となった。
まさに怪我の巧名とはこの事である。
(よく見ると、手足に水掻きみたいなのもある… )
尾鰭があるのか、彼女は月華の泉から出ることができないでいた。
そのシレーヌ族の女性は、警戒心を全く見せずに無邪気にアルネに話しかける。
「あら? 綺麗な耳飾りね。ふふ」
「あ、えと、私はアルネ。怪しい者ではございません。あなたの名前は?」
「えー全然怪しくなんてないわよ? ふふ、可愛いお嬢さんっ! 私はピアン! アルネ? あなたは… 」
(何でしょう… この懐かしい光は… )
「私はユマン族。ピアンはシレーヌ族よね? えっと、何故人形の姿に?」
「ユマン族!? どのユマン? ん? えっ!? 人形… そうっ! わたくし、ずっと狭い所に居たの! しかも、すんごい深くて暗い場所に居たような気がするのよ!? 酷いと思わない!? 人形にさせられていたなんて! だからずっと身動きも取れなったのね! あぁ… それをあなたが助けてくれたのね! 本当にありがとう!」
「あ… え、えっと… そう… いうことかな?」
(偶然だけど… それにしてもよく喋るな… )
「わたくし、ある入江に居たのだけれど、そこで誰かに呪いをかけられてたのか、こんなことになっちゃって… あら大変っ! 早く帰ってあの人に会わなきゃっ!」
「待って… ここは月華山よ。ピアンの居た入江って言うのは、ここではないわよね? 何処にあるのかしら?」
「えっ!? 月華山!? ここが!? て事は… って、こ、と、はっ! 今わたくしが入っている、この心地良いこの場所は… まさか! 月華の泉!?」
(表情豊かだなぁ… ふふ、楽しい人ね)
「えぇ、そうよ。とても気持ち良いわよね?」
「きゃぁぁあ! ついに来た! 入れたわっ!」
(感情が先に来るタイプだな)
似た者同士である。
尾をふんだんに喜ばせながら、水飛沫を上げるピアン。
「ここが本当に月華山であれば、わたくし達の入江は、ここから北西に位置する場所にあったわ」
「ここから北西… ん? あった?」
「えぇ… 今はもう… でもきっと仲間が何処かにいるはず… 」
「ねぇ! その場所ってわかる!?」
「えっ? あ、うん… でもこの格好じゃあまり遠くには… 」
(確かに… その露わな… あら… わ… はっ!)
アルネは、ピアンのそのありのままの姿を見て思った。
(羨ましい… )
「って違う!」
ビクリとするピアンは、驚いた顔をしながら首を傾げた。
「と、とりあえず、その格好じゃ、不便だと思うから、ちょっと待ってて」
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そう言い残すと、アルネは荷物のある場所へと急いで戻った。
そして自分の服を適当に選び、戻ろうとしたその瞬間。
黒く大きな影が、アルネの背後を覆った。
そこには、鬼以上の形相をしたルクナリオが立っていたのだ。
「アルネ… 破ったな… あれほど… 」
しかしアルネはその気配に、臆する事なく返事をした。
「え!? 何を破ったの!? てかルクナ! それより大変なの!! 来て!」
「な! ちょっと! 俺は怒ってるんだぞ!? 反省してるのか!? というかさっき、とてつもなく大きな光の柱が… っまさか… アルネが? 違うと言ってくれ… 頼む… これ以上問題を起こさないで欲し… 」
「そうっ! いいから急いで! あと、ネネちゃんも! 近くにいるんでしょっ!?」
(そうって… 全く! 次から次へと!)
(バレてる… 大変だ… )
ネネルトはゆっくりとその姿を現すと、ニヤリとするアルネの方を見た。
できるだけ目を合わせないように。
そして、他の者もそろそろわかってきていた頃だろう。
この奇天烈ヒロイン… の周りの者の苦労を。
そう思いながらも、従順について行く者達。
しかし、さすがの光の柱の存在感に、月華の泉には他の者達も集まって来ていたのだ。
「こ、この方は?」
一同は驚きを隠せないでいた。
それに応える前に、アルネは急ぎピアンのもとに駆け寄った。
そして、肌が露わになったその身体に、自身の服を羽織ってあげたのだ。
「シレーヌ族のピアンよ。ここじゃあれだから、とにかく移動したい… いや、しない方がいいのか? だってその姿じゃ… 」
アルネが思考を巡らせている中、ルクナは混乱を巡らせていた。
(シレーヌ族だと!? 何故いきなりこの場所に現れた? 一体どういう事だ? 何が起こっている!?)
その場に駆けつけていたアディ達も驚きのあまり、声が出なかった。
そして、その場に遅れて現れたサリドナによって、それはすぐに解決する事となる。
その手には先程、アルネ達も口にした物があったのだ。
月華糖である。
何処からともなく出てきた月華糖の存在に、アディはある事が気になって仕方がなかった。
(気になる… あの下に何があるのか… そして… 他にどんな物が入っているのか… )
彼は、彼女の胸元を無意識のうちに凝視していた。
その視線に気が付いたサリドナ。
「ふ… 小僧… そう焦るな。其方にわしは持て余すこととなるだろう… お前には扱えぬ… 」
「え? えぇと… 誤解… 」
アディは何とも言えぬ気持ちに襲われた。
そして、ここでアルネの地獄耳が発動した。
「え? アディ… そうだったの? 気が付けなくて… ごめん」
「その気遣い、史上最強にいらん」
アディはこれ以上にない程の、眼瞼挙筋を使って目を見開いた。
しかしアルネの誤解は、据え置きすることとなる。
話を戻しながら、アルネはサリドナの方を向いて言った。
「サリドナさん? これって、ピアンにも効果はあるの?」
「そうじゃ。そういえばちゃんと説明をしておらんかったな。これは姿をわからなくする物ではない」
「ん? どういう事? 私てっきり… 」
「月華糖。これは別名 ’希望の実’ 。まぁ ’願いの実’ とも言うな。あと ’欲望の実’ とも言うし、それに ’頼みの実’ とも… それから… 」
(全然定まってない… )
「あぁ… うん! 大体わかったわ! ありがとう! 何となくそういう意味なのよね!?」
「そうじゃ… よって、口にしたその者が今、何を望んでいるかで、効能が変わる… あ、 ’望みの実’ とも言えるな… 」
(この婆さん… 優柔が不断なのか? それとも… )
「シレーヌの娘。名をピアンと言ったな? これを… 」
そう言って、サリドナは月華糖… 別名多量の名の木の実をピアンの口へと運んだ。
初対面にも関わらず、何の疑いもなくそれを口に含むピアン。
その瞬間、みるみるうちに、ピアンの尾鰭のあった部分からは鱗が消え、代わりに美しい脚が2本伸びてきたのだ。
「やった!」
アルネの喜びも束の間、同じく喜ぶピアンがその泉から出ようとした。
焦るアルネ。
その肩を力いっぱい抑えると、アルネはネネルトから黒い装束の一部を剥ぎ取った。
彼は追い剥ぎに会うのは初めての事だった。
もちろん何の抵抗もできなかった。
その黒い布をシュリに渡し、うまい具合いにピアンの腰に巻いてもらった。
(シュリさんはいいのか… ?)
ヴィカはそう思ったが、適切な判断だったと彼女は自負する。
「ふぅ… これでいいわね」
「ありがとう。シュリさん!」
「ふふ、素敵!」
すると、アルネは振り返り、ネネルトへと言葉を投げた。
「ネネちゃん! 力が弱ってるようなの。抱っこしてあげて! あ、お姫様抱っこね」
嘘である。
むしろ今まで動けなかった分、超絶元気なシレーヌ族の娘が目の前に居る。
それはアルネの単なる趣味である。
美しい娘のお姫様抱っこが、ただただ見たいだけであった。
しかし、ネネルトはその趣味嗜好中心の命令を、疑問に思い、躊躇していた。
「え?」
(何故、俺? 嫌だ… あんな肌を露わにしたおなごなど… )
普段あまり感情を出さないネネルトであったが、この時ばかりは違った。
しかし、この場における彼にとっての最高権力者が動いた。
「… ネネルト… 頼んだ」
ルクナが少しその意図を読み取りながらも、頷き合図を送った。
さすがに逆らえない。
彼に仕える身としては。
しかし、厄介なのがこの奇想天外予想不可能な命令に、この先付き合わされるのではないかと不安が拭えないことだった。
そうアルネの登場により。
そうして、言われるがままネネルトは軽々とピアンを抱き上げ、拠点である場所へと連れて行くこととなった。
(キャーー素敵!)
アルネの心の声は、表情だけで手に取るようにわかった。
大聖女アルネの憂鬱は、いつからか… いや、最初から憂鬱ではなかったのかもしれない。
彼女はこんなにも自由で幸せだからだ。
本人すらもそれに気が付いているのか… いないのか。
きっかけはいつだってある。
しかし、それを本人のたった1つの自覚で、開けるものであるのだから。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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