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悪逆皇帝は来世で幸せになります!  作者: 詩貴 和紗
第3章
63/338

3-17

 そのあとなんだかんだで彼女も探すのを協力してくれたおかげで、思ったよりも早く探し終えることができた。しかし流石はこの手の小説が好きと言うだけあって、動きが早くてびっくりした。


これはナタリーと話が合いそうだわ。よかったわねナタリー。


「結局あったのはこの4タイトルだけだったわね」

「学院の図書館ですから。やはりこの手のものはあまり置いてないのですね……」


分かり切っていた様子でそう言ったものの、彼女は元気がなさそうに俯きがちで表情もどこか寂しそうだ。まぁ、この結果を見れば自分の好きなものが否定されている気がして落ち込むのも仕方ないかも。


彼女を慰めようと手を伸ばしたものの、どうすれば良いかわからず、結局手を遊ばせただけだった。はぁ。やっぱりもう少しコミュ力を鍛えたほうが良いわね。


これ以上なにか言うこともできず、目を彷徨わせて挙句に出た言葉は別れの挨拶だった。


「さて、では私たちはこれで失礼するわ。用事も済んだし」

「もうこんな時間ですものね。私はもう少し図書館で探し物をしてから帰ります」


 時計を見るともう17時。近くにある窓から外を確認すると世界がオレンジ色に染まっているのが確認できた。それに長居しても両親に不審がられてしまうし、ここらでお暇することにする。どうやら彼女はまだやることが残っていたらしく、ここでメドビン嬢とはお別れだ。


「そう。じゃあまたね、メドビン嬢。ごきげんよう、さようなら」

「本日はありがとうございました、ベルフェリト様。ごきげよう、さようなら」


ペコリと頭を下げ私たちを見送るメドビン嬢に軽く手を振り、1階の貸し出し受付へと向かった。


「しかし、結局4つしか見つからないなんて……。思ったより収穫がなくて残念だわ」

「大丈夫ですよお嬢様。明日になればナタリー様が持って来て下さる本もありますから」


階段をゆっくり降りながらミリアと今日の収穫を確認する。一段一段降りる度にコツンコツンとなる足音が小気味よく響いている。


 気配りが完璧なナタリーは、この学院の図書館には恐らくないだろうと思った本のタイトルには丸印を付けて明日持って来てくれると約束してくれた。おかげでそのタイトルを無駄に探すこともなかったし、家に帰ってから使用人に頼むよりも確実に早く読むことができる。


本当に彼女には頭が上がらない。

今度何かお礼をしなければ。


1階に着くと入口近くにある貸出/返却受付まで行き、手続きを済ませる。無事貸し出し手続きも終わり本を受け取ると、そのまま図書館を後にした。図書館を出てもう一度振り返って外観を見た。来た時とは打って変わって夕日に照らされて橙色に輝いてお、り思わずその壮大で神秘的な姿にまたもやため息を漏らした。


「お嬢様、行きますよ」


ミリアの声に我に返り、急いで彼女の後を追いかける。またもや呆れたため息を吐かれたことは、見なかったことにした。




「あら、あれって……人?」


 図書館からの帰り道。

林を抜けている途中で何か気になるものが目に入った。


よくよく見てみると、中等科の制服を着た女子生徒数人が木々の生い茂った林に隠れてこそこそと何かをしている様子だ。一体こんなところで何をしているのだろうか。ちょっと気になる。


「なにかしら、あれ」

「近くに行ってみますか?」

「そうね」


どうやら私の野次馬精神を察知してくれたらしい。音を立てないよう二人して腰を低くしながら足を進め、こっそりとその集団へと近づいていく。


「あら、あれって……」


顔が認識できるほど近づいたところでその集団の中の1人に我が妹、シルビアの姿を発見した。


どうしてあの子がこんなところに。


と、思った後ミリアのことが心配になり彼女の方を見やった。ミリアも彼女の存在を見つけたらしく、苦い顔になっている。まぁ、ミリアはあの一件以来シルビアが大層苦手になってしまったからこの反応は仕方ないものだけど。


しかし、シルビアがいるなら更に興味が沸いてきてしまった。一体妹は何をしているのかしら。こんな中等科の校舎から離れた林の中で。


だが、私の興味が強くなるのと同じようにミリアの嫌悪感も強くなっているようだ。すごく顔が歪んできている。これはミリアのためにも彼女たちに気づかれる前に帰る方が良いわね。


ミリアの肩を優しく撫でると、不安そうな顔が私を見つめる。「帰ろう」と声を出そうとした瞬間――――


「いやっ!! やめてっ!」


大きな悲鳴が聞こえ、二人して固まる。この声は間違いなくシルビアの声。


咄嗟に勢いよくそちらへ振り返ると、先ほどまで立っていたシルビアはしゃがみ込んで両腕で自分の体をきつく抱きしめている。その体はいつの間にかびしょぬれになっており、髪から雫が滴るほど濡れている。シルビアを囲む女生徒たちはクスクスといやらしい声で嘲笑しているのが聞こえた。


ここでもう、私の理性は限界だった。


スクっと立ち上がると、ミリアの小さな静止の声も聞かずに彼女たちの前へ出て言った。


「あなたたち、ここで一体何をしているのかしら?」

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