59 いつのまにか帰宅していました
『×××、弱きを助け強きをくじく、そんな人になれるように頑張るんだよ』
「うん!私、××ちゃんみたいな強くて優しい正義の味方になる!」
『×××、何にも染まらない真っ白で純粋なままの君でいて。悪に染まる事なく善のままで』
「うん。私、頑張るよ。世の中がもっと良くなるように、誰もが幸せに暮らせるようにみんなを守るよ」
『×××、皆が君のように高潔で純粋な善を象徴する者ばかりだったならよかったのに』
「私はそんなに立派な人間じゃないよ。人を羨む事だってあるし欲望の感情だってあるよ・・・」
『×××、君が高潔で純粋でそして善でなくなった時には、君をそうしてしまった全てを消し去ってあげる』
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「・・・あれ、ここは?」
「お目覚めになりまシタか、マスター」
目を開けると居るはずのない、確かお留守番中であったエルムが、私の顔を覗き込んでいた。近い近い。
確か私は急に気絶してしまって、なんだか夢をみていた気がする。私がトルーデになる前の・・・でもお父さんやお母さん、弟や妹と違う・・・誰だろう。
思い出せないや。
「トルーデ様!ようやくお目覚めになられましたか!もう、心配しましたよ~1週間もお目覚めにならないのですから!陛下なんてもう、執務に集中できずにそわそわして日に何度もトルーデ様の所に様子を見にきてしまうもんだから大変だったんですよ~!宰相たちが」
「い、1週間!?どうりでお腹が空いているわけですね。心配かけてごめんなさい。ラウラとあの神官風の男の人から何かされて気絶してしまったんでしたっけ?私も鍛錬不足ですねえ。あっ、そうだ!子供達、子供達はどうなりましたか?無事保護できました?」
「あの、トルーデ様?」
「なんて、カリーン先生の事だから、私が言わなくてもやり遂げてくれましたよね~。あぁ、ミルフィー達にお別れもできませんでしたね・・・。あの後どうなったのですか?」
「トルーデ様・・・覚えていらっしゃらないのですか」
カリーン先生は悲痛な面持ちでこちらを見ている。
あぁ、私また皆に沢山心配をかけてしまったんだなあ。5日も目覚めなかったんだからまた過保護にされちゃうかも。
外出禁止とかされたら嫌だなあ、なんとかならないかなあ。
それにミルフィー達にちゃんとお別れもしたかったし・・・。あーあ、体が弱いのなんとかなんないかなあ。
「・・・あの後2人を取り逃がしてしまったところは覚えていらっしゃいますよね」
「うーん、なんだかそうだった気も」
「・・・その後、入れ替わっていたミルフィー様とシルフィー様は元に戻りました」
カリーン先生の話では、あの後すぐに学院へ替え玉受験を行なっていた事を報告しに行ったそうなのだ。
出来るなら今からでも入れ替わって学院に通って欲しいと言うシルフィーと、現に学院でやっていけているのだから実力も何もかも十分だし今まで通りいて欲しいミルフィーが言い合いをし始め、おそらく初めての姉妹喧嘩を始めたらしい。
結果両者とも互角だった上、シルフィーは普段の成績は優秀、ミルフィーは入学する実力もあった為、こんな逸材逃したら損害だ!という教師陣の判断から、双子は2人とも学院へ通える事になったらしい。
ちなみに双子の弟の・・・なんだっけ、フィなんとか君は、予め金か何かを積んで勉強のできる者を用意していたらしい。
試験終了間際にその者の解答用紙に自分の名前を書かせ、自分は相手の名前を書くという不正が発覚したらしい。
なんでも受験申し込み書との筆跡が違い過ぎた為不審に思い発覚したらしいのだが。
やったねお兄ちゃん!入学できるね!
それとついでにラーゼン伯爵はこれらの不正に関与していたという事で、調査団が派遣され、魔法石や回復薬で得た儲けの独占や、施設の不適正な運営、更には人身売買などの悪事についての事柄がボロボロ出てきたらしい。
そのためラーゼン伯爵は取り潰しになるところであったが、子供に罪は無いということで、ラーゼン伯爵には罪を償い双子が成人するまでは後見人が代わりに領地運営を行い、成人した後双子のどちらかが当主になるという事で決着したようだ。
ちなみに後見人にはクルトが選ばれた。なんで一般の兵士が!?と思ったのだが、実は双子のお母さんの歳の離れた弟さんだったらしい。
双子の母親が心配で少しの間兵士として付き添おうという話だったのだが、亡くなった後にミルフィーの事を守ってあげられるものがいないと辞めることができずにズルズルいっていたらしい。
うぅーん、恋とかいう感情じゃ無かったのねアレ、残念。
クルトは、オレなんかが後見人になんてなれねえよ!と散々断りを入れていたのだが、父方は兄弟もいない、祖父母も既に他界しており、母方は兄が当主になっていてそっちに構ってる暇はないと断ってしまった為なし崩し的におさまってしまったようだ。
俺は当主になるような勉強してねえしとかなんとか抗議していたらしいが、使用人達からクルトなら安心できるなと評判だったらしく、勉強しながらなんとかやっていく予定らしい。
そしてシエルはというと・・・。
「お゛目゛覚゛め゛に゛な゛ら゛れ゛ま゛し゛た゛だ゛か゛!う゛ぉ゛ぉ゛お゛ん゛!」
「やだすごい、美少女顔が涙と鼻水にまみれて台無しに。ほらふいてふいて!」
「そうですよー。もうシエルは平民では無いのですから、淑女らしく、ですよ?そして我が家の名を名乗るからには強くあれ!ですよ!」
なんとスメラギ家の養子にされたらしい。なんでも山すら吹き飛ばすその攻撃力を持つ人物を野放しにしておけないし、どうやっても鑑定を弾かれてしまうという所に興味を持ち、他の誰かに取られる前にキープしときたいという事で捕まえたらしい。
エルムといいそんなにポンポン養子にしちゃっていいのかスメラギ家・・・
とまあこんな感じらしい。
なんだか私が寝ていた1週間の間に話が進みすぎていてついていけないなあ。
とかなんとか思っていたら父上が部屋に来て私を見て大号泣してしまった。
母上も目を潤ませ、心配したのよと優しく抱きしめてくれた。
その後もユディやライ、エルンストなど沢山の人がお見舞いに来てくれた。
兄貴はというと、顔を見せに来ることは無かったのだが、私が寝ている間に来てはこっそり花を置いて行っているのだとヒルデが言っていた。
ツンデレか。
わかばはいないと思っていたら、ベッドの中で寝ていた。こいついっつも寝てんな。
ちなみに私は学院入学まで外出禁止になってしまった。解せぬ。
自分でも結構都合の良い展開にしすぎたかな〜と思ったり。
兄貴は無事学院に通えるようになりました。
やったね!
シエルは使用人にするか貴族の養子にするか迷いましたが、なんでもありのお家が養子にしたいと言ったので・・・
「鑑定妨害?LV10ってなってるですだ!でも使ってるつもりはねぇですだべ?えっと、すてーたす?ってのは」
「名前と歳と性別しか見えない・・・もしや最大レベルになると完全に防ぐのでしょうか・・・面白いッ!」
てきなやつっすかカリーン先生。




