55 魔導石とは
「まさか、ミルフィー様ですか・・・?」
先程のほわんとした雰囲気や口調から一転し、冷静ではっきりとした雰囲気を出している。
姿は全く変わっていないのだが、別のものだとはっきりと分かる。
「・・・姉さんの記憶も共有されるのね。あっ、すみません。そうです、私はミルフィー・ラーゼンいえ、体は姉さんで中身が私なのでシルフィー・ラーゼンと名乗ったほうが良いでしょうか」
顔に手を当て考え込むシル・・・ミル・・・あぁもう!中身がミルフィーならもうミルフィーでいいか!
「固有魔法か何かで入れ替わったのでしょうか。今まで見たことのないタイプの魔法です!入れ替わったらステータスは体の方になるんですか、中身の方になるんですか、気になります!」
カリーン先生が興奮しながらミルフィーへと迫る。
ミルフィー若干引いちゃってるよ、押しが強過ぎるよ。
「交換という固有魔法を使ったみたいです。自分の物と相手の物を取り替えるという物のようですが、同じ物という制限があったみたいです。姉さん本人はあまり使い所がないなあと思っていた様ですが。ステータスに関しては体の方が適用されるみたいですね」
「なるほどなるほど。一卵性だから同じ、だから入れ替われたということですか」
「・・・姉さんが貸してくれたこの体で私は今度こそやり遂げなければいけません」
そう言ってミルフィーは拳を強く握りしめ、腕に抱いている未だ目覚めることのない体をクルトへと任せ駆け出そうとする。
しかしずっと意識を手放していたせいか、同じ作りでも違う体のせいなのか、バランスを崩し膝をつく。
「ミルフィー様、急ぐ気持ちは分かりますが少しばかり休憩致しませんか?やり遂げなければいけないことのお話も聞きたいですし」
「しかし、関係のない人を巻き込むなんて・・・それにこれは私が生み出してしまったモノ、ケジメは私自身でつけなければ」
ミルフィーはフラつきながらも立ち上がり進もうと試みる。
しかしまたすぐに膝をつく。
それを見たシエルが私達の目の前へと飛び出す。
「・・・オラ、ミルフィー様と別れてから今まで誰からも手を差し伸べられる事なんてなくて、試験の時だって酷い仕打ちをされてて誰にも助けてもらえなかっただ。いや、もう助けて欲しいという意思もその頃には無かったんだと思うだ。でもそんな中、オラより弱そうな小さな女の子だけが、トルーデ様だけが、見て見ぬ振りもせずに助けてくれたんだ!だから、だからミルフィー様も・・・ハッ、すみません!大変失礼な事を・・・」
「シエル・・・」
シエルは額を地面に擦り付けんばかりの土下座をかまし始める。
それをやんわりとやめさせ、私はミルフィーへと視線を移す。
「見て見ぬ振りできないのは私の性分というか・・・偽善と言われそうですけど、困ってる人を見ているとつい体が動いてしまうんですよね私。それに関係なくなんてないです。だってもう会って話をしてあなたの事を知ってしまったんだもの。それに民の悩みを解決するのは王妃の役目でしょ?」
「・・・・・・・・・」
あれっ、無反応。うわーしくじっちゃったかー?
恐る恐るミルフィーの顔を覗く。
「・・・ふふ、見た目は物語に出てくる様な、お淑やかで可愛らしくてか弱いお飾りみたいな王女様といった感じなのに、とても行動的でどちらかというと王女様というより王子様という感じですね」
「おっ、王子ィ!?」
「ブフォッ!おっ、王子様!そうですね、少なくとも想像しうる王女像と合致してるのは見た目だけですからね!お兄様より王子様してますよトルーデ様は!」
シエルやクルトまでもが、言われてみればそんな感じだと納得した様な表情を浮かべ、カリーン先生に至っては爆笑している。
「もう!この空気を変えるためにも絶対に言ってもらいますからね!もう命令もしちゃいますからね!」
「ふふ、分かりました、分かりましたわ王女様!なんだかその感じだと私が何も言わずに飛び出してもついてきそうな感じですしね」
ミルフィーはそう言って今回の件について話し始める。
「まず魔導石が私にしか作れないというのは、作り方が分からないから作れないというわけではありません。魔導石の前身である魔法石という物は実は作成する事には成功していたんです」
「魔法石?」
「魔法石とは、魔力の弱いものが最低限の力を出すことが可能になる増幅器です。魔法石は数値として、魔攻100程度の威力を出力可能となっています。これは力を込める魔法師の魔攻が関係しており、込められる力はどう研究しても5分の1程度までしか上げることが出来なかった為です。他の力は器である石の耐久性をあげるためと、魔力を込める際の力に使われていると思われます」
そういえば普通の人の魔攻最大値と言われているのって最大で500って言われてたね。
カリーン先生とかエルムを見ていたせいかなんか麻痺していたわ。私の魔攻426って低いなとか思ってたけど、普通の人から見たら上位クラスだったわ。
微妙な顔をしそうになるのを必死に我慢し真面目な顔を作る。
「しかし魔導石の出力は5000まで出力可能なんです」
「は!?5000!?一桁間違えてないですか!?私より高いですよ!?」
カリーン先生は驚きを隠すことが出来ずに声をあげる。
確かカリーン先生は最近ステータスの平均が4000になったとかなんとか言っていたはず。
人類でも最強に位置するカリーン先生より上の力となると、国を転覆させる事だって可能では。
「作った時は、これでお父様に認められると思って喜びました。しかし認められる事も無く、さらには裏切られて・・・それに魔導石は私の力ではなくシエルのおかげで作れたものなんです」
「ふぇっ!?オラだべか!?」
突然自分の名前を出されたシエルは目を丸くさせ驚く。
「シエルが私の家に迷い込んで来た時、誰かと思って気まぐれに鑑定をしてみたんです。でも跳ね返されてしまって。その後にお腹を空かせて倒れたものだから、素性を探るついでに助けてあげたの。そしたら記憶どころかこの世界のことを何も知らなくて・・・だから気まぐれに魔法や勉強を教える事にしたの」
「あの時は本当に助かったですだ」
「そしたら魔法の威力がすごいのなんの。魔弾を教えてみたら周囲を吹き飛ばしながら向こうの山を抉ったし、果てには天候も変えちゃったりするし。慌てて制御する事と人前でむやみに使ってはダメだと言いましたよ」
「ま、まさかあの大爆発ってそこの奴の仕業だったのか!?原因不明で、ドラゴンかなんかの仕業だって無理やり結論づけたんだが」
まさかのシエルもチートなの。
私もしかしてカリーン先生が言ってた可愛い子を惹きつけるタラシとかそんなものではなく、化け物を引き寄せる餌か何かなのでは・・・?
「だから試しにシエルに作らせたら出来ちゃったんです、魔導石・・・。私も多分おかしくなってたんでしょうね、喜んで父上に渡してしまったのですが、その後冷静になって考えると恐ろしくなってしまい破壊しに行きました。しかし魔導石の内部の魔力は霧散させる事に成功しましたが、その後そこに居た魔法師の一人の攻撃を受けてしまい、そこから先の記憶が途切れているので恐らくそこから意識不明の状態になってしまったのでしょう」
「よし、シエルさん。私と手合わせしましょう」
「カリーン先生ステイステイ。でも魔導石については使えなくなったって事ですよね?どうしてそんなに急いで行こうとしたのですか?」
強者をみると突っ込もうとするカリーン先生を止めながらミルフィーを見る。
「中の魔力は確かに無くすことができましたが、器を壊す事は出来ていませんでした。完全に破壊しなければ、再度充填され使用されてしまう可能性があります。・・・そろそろ大丈夫なようですので、急いで父の元へと行く事にしましょう」
えっ、いやそうだよね、お父さんに渡したんだからお父さんが持ってるよね。
うわー、出戻りか、どうしよう。
娘さんと会って意気投合してまた訪ねて来ましたとか言うか〜?
頭を悩ませながらミルフィーと共に再度ラーゼン伯爵邸へと行くので会った。
書いてたら全話と矛盾してそうな箇所もある気がするので後ほど訂正します!
少しリアルが立て込んでいて毎日投稿ができないかもしれません、すみません・・・( ◞‸◟ )




