56 再度ラーゼン伯爵邸にて
ラーゼン伯爵邸へと戻るなりミルフィーは父親であるラーゼン伯爵の居る部屋へと突き進むと勢いよくドアを開ける。
「お父様、魔導石を即刻お出しになられてください」
「一体どうしたというんだね!?いつものシルフィーらしくないではないか。あ、あぁ!王女殿下ではないですか!もしや我が娘と友人に・・・!?」
ラーゼン伯爵は良くやったというような目でミルフィーを見ていた。
それにシルフィーらしからぬ言葉遣いだったにもかかわらず、未だにシルフィーだと思っているらしい。
これはバレる前に私の立場等利用すれば渡してもらえるか・・・?
「邸を出た後にシルフィー様と出会い、魔導石のことをお聞きしてどうしても見たくなってしまってシルフィー様にお願いしたのです」
「なんと!そうでございましたか。いやしかし実はこちらの方で不手際がございまして、魔導石の力が失われてしまったのでございます。そのため今は魔力をどうにか充填しようと試行錯誤しているのですよ。ご期待に応えられず申し訳ございません」
くそう、ダメか。いや、ここで引いたら負けだ、押すぞ、押していくぞ私は。
「魔力がなくても良いのです!魔導石自体を見てみたいのです!」
「・・・分かりました。王女殿下の頼みならば応えねばなりませんね。そうだシルフィー、案内してあげなさい。我が領の魔法師達の研究所の場所は分かるだろう?」
「分かりま・・・分かったの~。ちゃんと案内してくるの~!」
ミルフィーはシルフィーの口調で少しぎこちない笑顔を浮かべ答える。
「良い子だなシルフィー。任せたぞ」
シルフィーだと思っているのだろう、にこにことしながらラーゼン伯爵はミルフィーへと声をかける。
それをみたミルフィーは一瞬複雑そうな表情を浮かべたが、すぐさま先程の笑顔を浮かべ部屋を出る。
外へと向かう途中、ミルフィーは少し悲しげに口を開く。
「分かってはいたんですけど、私を見る時と姉さんを見る時では全く違う瞳をしていました。本当に姉さんの事は愛しい子供だと思っているような優しげな瞳・・・。こんな気持ちを抱いてしまうのはいけない事だとは思うのですが、悔しくて、とても羨ましいです。もうずっとシルフィーでいたいくらいに」
「ミルフィー・・・」
「姉さんが最高に嫌な奴で、私の事を嫌っていてくれたなら多分この立場を奪ってしまうんですけどね。でも幸か不幸か、姉さんは存在を認知したばかりの双子の妹である私の事を本当に、心から大切なものだと思ったようなんです。今まで空いていたパズルの最後のピースがぱちっとはまるような、そんな風に思っているんです。姉さんが今まで感じてきたことがこの体だと痛いほど分かるんです。私という存在への充足感や純粋すぎるほどの好意、愛情が」
そう話すミルフィーは先程の悲しげな表情がだんだんと柔らかい表情へと変わっていく。
「すみません、長々と自分の事を話してしまって。研究所へ急がなければいけませんよね。私へ攻撃を放った魔法師もいるかもしれませんし、解決して早くこの体も返さなければ」
邸から外へ出ると、カリーン先生にシエルとクルト、クルトに背負われたシルフィーがいた。
「どうでしたか。手に入れる事はできましたか?」
「ここには無く、研究所にあるそうです。ミルフィー様を攻撃した魔法師がいる可能性もあります。なので今からそちらへカチコミですよカリーン先生!」
「腕がなりますねえ!」
なぜか盛り上がる私達。
それをみて溜息をつくクルト。
「本当に王女様像が崩れる光景だな・・・。こんな好戦的な王女様見たことねえよ・・・」
「聞き捨てならないなあ!私よりもバトルジャンキーな戦闘狂の王女様も探せばいるかもしれないでしょ!」
私は頰をめいっぱい膨らませ抗議する。
こらそこ笑わない。
「ほらほら行きましょう?もう置いていって二人で先に行きましょうか、ねぇ?シエル」
「は、はわわ・・・。オラはどうすれば・・・」
「なんて冗談を言ってる場合じゃないよね。急ごう」
こうして私達は研究所へと足を進めるのであった。




