46 実技試験を受けます
なぜ案内板を見に行ったかと言うと、合格者15人に対し、膨大な受験者数のため、筆記試験で基準値に達することができなかったものは問答無用で落とされるためであった。
なので、どんなに腕に自信があったとしても、ある程度点数を取れていないと意味がないのである。
オレは実技で取る!と豪語していたライが引き摺られ勉強をさせられていたのはこのためだ。
「えっと、5672番・・・あ、あった!5671番は当然あるか」
『当然ありマスよ』
「うへえ、受験者数6000人近くに対して通過者は300人しかいないのか。すごい落とされるねえ」
『どうやら皆様合格されているようデス。試験会場に急いだ方がよろしいかト』
いざ実技試験へと向かわん!
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実技試験は、魔法試験と物理試験があり、魔法試験に関しては、それぞれ100m間隔で的が用意されており、手前から順に壊していき、破壊できた的に書かれている得点がそのまま自分の得点になると言うものだ。
遠くに行くほど的の強度も上がっていくため、破壊するのが困難になるそうだ。
これは最高で50点。で一番遠いものは3km先まで設置されているらしい。
物理試験は、魔法で直接攻撃せずに、己の武器のみで測定器に向かい攻撃するというものであった。こちらも満点は50点である。
測定器はこの世でもっとも硬いと言われるミスリルと地属性魔法で創造されており、基本的に壊れない仕様になっているらしい。ドラゴンにだって破壊できないと言っていたが、一度だけ入試で破壊されたと小声で試験官が言っていた。
どう考えてもカリーン先生です。ドラゴン、超えてたか。
ただし魔法で直接攻撃を行わないというのが条件であるため身体強化を行ったり、武器を強化したりすることは可能とされた。なお2回までやり直しが可能である。
試験官からの説明が終了し、早速実技試験が開始される。
どうやらこの会場ではユディが一番手のようだ。
先程の子はいるのか辺りを見回してみるが、見当たらない。落とされちゃったのかなあ。
なんて考えている間にユディの準備が完了したようだった。
ユディはまず火の星術で手前の的を燃やす。次の的は水で貫き、その次は風で吹き飛ばす。またその次は地から生やした蔦でへし折る。
すごい・・・パフォーマーだユディ。このぐらい軽くできるとでも言いたげだ。
そうしてユディは全ての的を破壊し尽くしてしまった。
試験官の方たちは途端にザワザワとし始める。無属性魔法への理解をもっと深めねばだとかなんとか話しているようだった。
次の測定でもユディは満点を叩き出した。
ユディの使用した武器は美しい槍だった。それで強化も何もせずに一刺ししただけで。
当然試験官たちは再度ざわつき始め、これは数年に一度の逸材だとかなんとか話しているようだった。
ユディは確実に合格しただろうな。
それにしてもこっわ、ユディ本気で怒らせたら兄貴ワンパンされない?大丈夫?
私はこの紙防御で当たったら即アウトだな。うんうん。
なんて考えていたら次々と番号が呼ばれ、受験者たちが実技試験に挑んでいた。
しかしユディをみた手前なんだかパッとしないなあ。
長ったらしい詠唱してる人も何人か見かけるし、さっきから1kmまで破壊できていないし。
そうこうしているうちにエルムの番が来たようだった。
私は小声でエルムに話しかける。
「ある程度加減はするんだよ」
『了解』
本当に分かってるかなあ。なんか嫌な予感がするんだよね。
『充電完了。光線発射可能。3.2.1.発射』
一瞬だった。用意されていた的は全て消滅し、ついでにそのまま威力を受けて周囲の木々はその青々とした立派な葉を全て散らし、的のあった部分をなぞるよう一直線に地面がえぐれていた。
呆気にとられる試験官たちを横目に次の標的である測定器へと歩みを進め、武器も何も使用することなく、素手で測定器へと攻撃を加える。
その圧倒的な力に測定器はなすすべなどなくいとも簡単に破壊され、周囲の地面はその衝撃に耐えられずひび割れを起こす。
「な、なんだあの生徒は!エルム・ス、スメラギ!?またスメラギ!?スメラギナンデ!?」
「ま、また破壊されてしまった・・・スメラギ家の奴に・・・うぅ・・・」
試験官もとい先生陣は慌てふためき、受験生達はそのあまりな光景に皆魂が体から離れているように放心している。
この後にやるのメチャクチャ嫌なんだけど・・・私も早く終わらせよ。
ようやく立ち直った試験官が私の番号を呼ぶ。
私は光属性魔法の詠唱をし、エルムを真似て光線で全ての的を一気に消滅させる。
威力は当然真似なかった。
次の実技ではエルムに教わったエーテル変換で身体強化をし思いっきりまた新しく用意された測定器を竹刀もどきで打ち付ける。
初めて使ったせいか加減ができずに、地面はひび割れはしなかったが、測定器を真っ二つに破壊してしまった。
今度こそ試験官は泡を吹いて倒れてしまったが、どうやらこの会場は私で最後だったらしく、無事に(?)終了したようだった。
エルムは『調整とは難しいものデスね・・・』と沈んでいるようだった。なんだか以前より表情豊かになってきたような気がする。
ユディとエルムと並んで歩き、実技会場を出ると、ニコニコと満足そうなライと、少し不安そうなエルンスト、自信満々な兄貴がいるようだった。
「姫さん達~試験どうだった?オレはさあ、筆記は多分ギリギリ受かったんだと思うんだけど、実技試験は多分満点だったぜ!」
「僕は逆に筆記試験はできたと思うのですが、実技がどうもあまり良くなさそうで。魔法の方は良かったのですが、物理はあまり点数が取れなくて・・・うう、不安です・・・」
「フン、この俺が落とされるわけがないだろう。ユーディット 、必ずお前をぎゃふんと言わせてやるからな!」
「そうですか、フフ、結果が楽しみですわ」
「私達の実技会場はインフレ起こしまくってもうめちゃくちゃでしたよ。筆記試験の前も疲れる事があったし、試験結果が張り出されるまで時間があるので、何か甘いものが食べたいです!」
「そうですね。ここの学院のカフェが利用できるそうなので、そこに行きましょう」
私達は結果発表までカフェでのんびりとした時間を過ごした。
カフェのケーキはこれまた大変美味だった。
私はシンプルなショートケーキを頼んだのだったが、スポンジの間にはイチゴがぎっしりと詰められているのに、天辺にも沢山イチゴが載せられており、甘さ控えめなクリームと通常より甘めのイチゴとふわふわのスポンジが良い感じに混ざり合い、幸せな味が口いっぱいに広がる。
しあわせだぁ・・・生き返るって感じ・・・
食レポ王女




