45 筆記試験を受けます
今回少し胸糞表現あります。
エーデルシュタイン王立学院は、魔法適性のある者の為の学院である。
が、この国はほぼ全ての者達が魔法適性を持っている為、平民貴族問わず15の歳になると入学することになる。
他にも商業学校や、技術学校などもあり、それらも学費はほぼ変わらない為、魔術適性を持っていてもそちらの学校へと流れて行ったり、王立学院を卒業後の就職先が魔法関連のものばかりとなっている為、魔法適性のあるものの中でも、平均並か平均以上の者達が主な学生となっている。
その中でも特進クラスと呼ばれるクラスがあり、成績が飛び抜けて良かった者と初等部から在籍する者達で構成されている。
特進クラスとなると待遇や将来の就職についても最上級の扱いである為、皆総じて特進クラスを目指すのである。
先ほどにも言ったが、特進クラスになるには、15歳で入学し優秀な成績を修めるか、12歳で入学し初等部を経てそのままエスカレーター式に進むかの2つの方法がある。
15歳で入学し優秀な成績を修めたとしても、特進クラスになれるのは2年生からであり、待遇についてもやはり初等部からの者達とは差がつく為、皆こぞって12歳までに初等部の試験を受けるのだ。
その為、この初等部についての倍率は凄まじく高い。
また、貴族のコネなどは一切通じる事はなく、厳正な筆記試験と実技試験のもと公平に得点化され、その得点を元に上位15名だけが入学できるというわけだ。
誰でも受けることができる為、記念で受けてみようと思う子もいるのだとかなんとか。
そんな大変な試験を今から受けるため、私はもう心臓が爆発してしまいそうなくらい緊張していた。
「大丈夫ですよーだって幼い頃の私が受かったくらいですよ?もっと気楽にいきましょ気楽に!」
チートに言われても説得力があまりない。
『マスターが合格不可能だった場合、ボクは辞退しマスので安心してくださイ。ただご友人方は99.9%の確率で悲しみの感情を表すかト』
そうだよね、みんな悲しむよねうぐぐ、負けらんねえ。
「きゅーんきゅーん・・・」
わかばはカリーン先生に抱きしめられた上ハーネスをつけられ逃げられないようにさせられている。
もし仮に見つかってしまって不正を問われたらダメだからとお願いしまくったおかげか悲しそうな顔を浮かべながらも渋々了解してくれたのか、大人しくカリーン先生に抱かれている。
うう、なんてつぶらで悲しそうな瞳!罪悪感で押しつぶされそうになる前に行こう。
「それじゃあ頑張ってくださいね~行ってらっしゃいませ~」
「ありがとうカリーン先生!行ってきます!」
私はエルムと一緒に仲良く会場へと向かうのだった。
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受験人数が多すぎるせいか、ユディ達とは別の試験会場となった。
エルムとは連続して受験申し込みを行なったお陰か、席も連続していた。
会場へ入ると、平民貴族別け隔てなく受験に来ているようだった。
受験票を見ながら指定の席へと座り、最後の確認をしようとカリーン先生から譲り受けたマル秘ブックなるものを眺めていると、会場の前列の方がなんだか騒がしくなってきた。
「なんでお前みたいな乞食が試験を受けに来てんだよ。乞食は乞食らしく大人しく物乞いでもしとけよな」
「うーわクッセェ、俺コイツの隣とか嫌すぎるんだけど。ていうか会場内に入ってくるなよな。クッセェ臭いがこの部屋に充満するだろ」
「その筆記具、オレが無くしてたと思ってたやつに似てるんだけど、もしかして盗んだのか?不正の前に犯罪発覚だわ!」
「こ、これはゴミ捨て場に置いてあったから・・・その・・・」
「でも元はオレのですー!だから没収しますー!この犯罪者。乞食で犯罪者とか最悪だな」
「そ、それがないとオラ、この試験を受けられねえんだ!お願いだ、この試験の間だけでもいいから返してくれ!」
私が視線を向けた瞬間その騒いでいるうちの1人が、責められていた子供に向かって蹴りを入れた。
急にそんな事をされるとは思わなかったのだろう、ろくな防御も受け身も取れずにその子は転がって行く。
それを見た私の中で何かがプツリと切れる音がした。
「動くな。問おう、何故お前達はそのような事をした」
私は自分の席から立ち上がり、ゆっくりと当事者達に歩み寄る。
周囲は一気に静まり返り、物音一つしない。
「なんだよ、なんなんだよこのちんちくりんは!お前に何が関係あるっていうんだよ!関係ないやつは引っ込んでろよ!」
「お、お前コイツに味方するっていうのか!」
「私は何故そのような事をしたのか聞いている。弁解は求めてはいない。こたえろ!」
平民の男子と女子、それに貴族の令息も居るようだ。
私が質問すると、先程までずっとお前には関係ない、何処かへ行けなどを叫んでいた口から理由を話し出す。
「こいつは親も兄弟も親戚すらいない捨てられた奴で、オレ達の街の残飯を漁ったり、食べ物やお金を恵んでもらうために物乞いを行う卑しい奴なんだ。オレ達の親だってみんなそう言ってる」
「家がないから風呂にも入ってないだろうし、髪はボサボサでいつも残飯まみれで臭いんだよ。捨てたものでも俺のものを持っていると思っただけで気持ち悪い」
「こんなやつ居ても居なくても一緒だし、親も誰もいないから殴っても蹴っても別に構わないだろ?オレはゴミを蹴っただけだ」
呆れた。ここまで性根が腐っている奴がいるなんて思いもしなかった。
いや、親も言っていると話していたな。親の思想が子に受け継がれたのかもしれない。
そう考えるとこいつらも可哀想な子供なのかもしれない。
しかし親も兄弟も親戚も誰もいない、所謂ストリートチルドレンが居て、ここまで虐げられているなんて思いもしなかった。
教会や孤児院はどうしたというのだろうか。
街だと言っていたし、それなりにあるとは思うのだが・・・
試験が終わったら父上に相談してみるか。
「もういいよあなた達が可哀想な子だというのは分かった。けれどその子供を生み出してしまった責任は私にもあるかもしれない。今回の事は大目に見てやるが、次に同じ事をするようならばどうなるか分かっているでしょうね」
「な、お前・・・何者なんだよ・・・」
「あなた達のようなものに名乗る名前は無いよ」
私は冷ややかな眼差しで見回し、蹴られた子供の方へと歩き出す。
「大丈夫?あぁ、こんなに血が・・・待ってね、今回復してあげる。光よ」
私はひとまずその子の傷の手当てをする。ついでに洗浄もかけてあげた。
結構汚れていたようで、埃が何かがこびりつき黒ずんで脂ぎっていた髪は空色の様な綺麗な髪へと姿を変える。
少し痩せてはいるが、美しい顔立ちをしているように思えた。
「あ、ありがとうごぜえます・・・ありがとうごぜえます・・・オラこんなに優しくされたのは生まれて初めてだ。それもこんなに可愛らしいお貴族様に」
その子は涙をボロボロ流して私にありがとう、ありがとうと礼を述べる。
「お貴族様なんてやめて。私はゲルトルーデ。トルーデと呼んでちょうだい?それと、あなた名前はなんというの?」
「ゲルトルーデ様、いやトルーデ様。お、オラはシエルという名前だ・・・です。その、本当にありがとうごぜえます!」
「そう、シエルと言うのね。知り合った記念にこれあげる。私、とっても心配性だからもしものための予備と予備の予備まで用意しちゃってたの。予備の予備で申し訳ないのだけど、筆記用具類を運悪くなくしてしまったのなら仕方ないものね。それじゃあまた後で、実技試験の時に会いましょう?」
そう言って私は何事もなかったかのように優雅な所作で自分の席へと戻る。
はあ、なんか試験を受ける前だって言うのに疲れた。おかげで緊張はほぐれたけど、復習ができなかった。
こんちくしょう。
間も無くして、この学院の先生だろうか。インテリそうな男性の先生が入室し、問題用紙と解答用紙を配り、筆記試験が開始した。
筆記試験については魔法の基礎についての問題と、中学校卒業レベルほどの数学にこの国の歴史と地理、それに生物のようなものが出題されていた。
数学は応用問題も多く意外と難しい。私数学得意じゃなかったんだよ~
歴史と地理に関してはそこは王女、完璧・・・だと思う。
地理は国内の地形や地方の天候や収穫される作物について、歴史は国の成り立ちから現在の政策や取り組みを答えるものであった。
生物は、人体にとってどこが急所であるか、回復魔法が使用できない場合の対処法などを問う問題だった。
なんだか思っていたよりも簡単だったかもしれない。
これは取ったな。
私はルンルン気分で筆記試験を終え、軽食をとった後、実技試験の案内板を確認し、実技の会場へと向かった。
王女無意識に特権スキルを発動するの巻




