表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/69

38 さらに仲間が増えました




 「わんっ!わんわんっ!がるるるるる」


 ショックを受け、残骸の目の前に座り込んでしまったウェルテクスを必死に慰めていると、わかばが不意に残骸へ吠え始める。


 私が注意深く、吠えている部分へと目を向けると、残骸が微かにだが動いている事に気がついた。


 私が恐る恐る近づいて見ると、残骸からズボッと勢いよく手のようなものが飛び出てくる。

 私は驚きすぎて声も出ずに後ろへ仰け反りそのまま倒れこみ尻餅をついた。いたい。

 そしてそのまま手のようなものが飛び出した場所から人らしきものが這い出てきた。



 『ウゥ・・・記憶異常発生中・・・ローディング・・・失敗。前主人の消滅を確認。初期設定を行います。対象を特定。新たな主人(マスター)として認証しまシタ。アー、AI稼働。アー、あー』



 目の前には少女とも少年とも取れる、ここでは暫定的に少女としておこう。

 毛先にいくにつれて薄く煌めく白縹の髪に、無機質な印象を持たせる銀色の瞳の15~6歳くらいだろうか。端正で無機質な印象を与える人物が立っていた。裸で。

 いや、人と言っていいのか。なぜならその人物は顔や体の形を見ただけならば人間と殆ど大差がないように見えるが、個々のパーツについて人間とは異なった見た目のものも目立つ。

 特徴的なイヤーパーツに、パーツを組み合われていると思わせる身体中に走る細い切れ目。足先にいくにつれて細くなっていっている足に5指は存在しない。



 『ボクは、ご主人様(マスター)と共に学習し成長する事で、より良い未来を切り開くという使命の元、4639番目に造られた、|Learning Machine《学習する機械》・・・通称LM-4639と申しマス。ご主人様(マスター)の存在が消滅するその時までボクは側にあり続けマス』


 「あーっ!もしかして其奴はわしが先程改造したろぼっとかのう?むむ、もうとるーでをを主人と決めてしまったようじゃのう。仕方ない。責任を持って面倒見てやるのじゃぞ!」


 「トルーデ様、また愉快な仲間を増やしましたね!私というものがありながら!」



 何故か私が面倒をみる事になってない?

 というかカリーン先生は喜んでるのか怒ってるのか分かりにくいなあ!

 


 「で、でも困ります!こんな未知のものが、文明が発達していない私達の世界に現れたら異質なものとして排除される恐れもあります!それに父上と母上になんと説明すれば・・・」


 「大丈夫じゃないかのう。見た目は人に似ておるしのう。服を着れば良いのではないのか?それにお主をますたーと決めてしまったようじゃしのう。変更する事は出来ないのじゃろう?」



 ま、まあなんとか人としてごまかせる可能性もあるかもだけど・・・



 「そうだ、変更!私の権限をウェルテクスさんとかに渡すことってできないの?」


 『ご主人様(マスター)の存在が消滅するその時までボクは側にあり続けマス』



 まさかそれって・・・



 「まさか私の存在が消滅しないと他人に譲渡されないという事・・・?」


 『YES』



 それって実質不可能じゃない!

 私は頭を抱える。どうしよう、そういえばわかばも戻し方が分からないし、ユディを探しに行ったら犬と女の子が増えました!とかどう説明すればいいの!



 『ご主人様(マスター)、名前と年齢を音声入力してくだサイ」


 「ゲルトルーデ・ハイル・フェーブス・・・8歳・・・」


 『入力完了致しまシタ。ボディを最適化しマス』



 そう言うや否や、目の前の少女はどういう原理なのかは分からないが、急激にその身体を縮めさせ、私と同じくらいの年齢くらいだろうか。

 8歳程度の幼い身体へと自らを変化させたのだ。

 驚く3人を気にもする事なくその少女は口を開く。



 『ボクはご主人様(マスター)と共に学習し成長する機械。所でボクの装甲の確認が未だ完了しないのですが。如何されましたカ』



 私が後ろを振り向き2人を見つめる。

 おそらくその装甲とやらを破壊した当の本人達は私と頑なに視線を合わせようとはしない。

 仕方ない・・・



 「多分装甲だと思うのだけど、壊れてしまって・・・その、貴女がさっきまで埋もれていたその瓦礫がそうだと・・・」


 『エッ・・・』



 目の前の少女は微細な変化だが、少し驚いたそぶりを見せ固まってしまった。

 ロボも驚くのか・・・と眺める。しばらく待機していると、その少女が口を開いた。



 『これが驚きと悲しみというものなのデスね・・・』



 学ぶのが早いな。こういうのってもうちょっと、こう、主人がすごい怪我を追ったりした時とかドラマチックな展開が起こった時に感じたりするものではないのだろうか。



 「ええっと、LM-4639だっけ。長いからもうエルムって呼ぶね?私達あの扉の先へ行きたいのだけど、問題なく通れるの?」


 『エルム・・・登録しまシタ。扉はこちらからしか開かない仕組みであり、一度通るとこちらへ戻る事は出来ませんが、通る事は可能デス」



 一方通行だけど通れるという事か。開けた瞬間敵がいたら退路は無いという事ではあるが、ここまで来たのだ。

 今更戻るという選択肢は無い。



 「この扉の先にきっとユディが居るはず!今はもう細かい事は気にせず後で考えることにします!行きましょう!」


 「「おぉー!!!」」


 「わんわん!」


 『了解』


 「あっ、エルムの服はどうしよう・・・」



 私は地属性魔法で服を作ろうと詠唱しようとしたら、カリーン先生にもしもの時のために魔力は温存しといてくださいと口を塞がれる。


 エルムはカリーン先生の上着を着せられ、腰部分を軽く紐で結ぶという状態で落ち着いた。


 気を取り直して私達は扉を開き、前へと進むのであった。

呪われ王女と忍者少女とロボ娘と精霊ジジイと仔犬ってすごいパーティだ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ