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22 お願いしてみます

トルーデおねだりするの巻




 「父上、母上。お話があります」



 私はユディとの約束を果たすために、王宮の書庫の閲覧の他に、禁書庫と言われる一部の許可された者しか入ることの出来ない書庫への出入りの許可を貰いにいった。



 「おぉ、トルーデ。体はもう大丈夫かい?トルーデのお願いならば何でも叶えてあげるよ。何が欲しいんだい?」


 「最近は顔色も良いようですねトルーデ。良かったわ・・・そうだ、たまにはお茶会に参加をして皆様に元気な姿を見せることも大事ですよ。私も可愛い娘を自慢したいですしね」



 この通り私の両親、幼い頃から体が弱くあまり外に出れなかったせいか、結構私に甘いのだ。

 いやもしかすると兄にも甘いのか・・・?


 そうだとするとあんな傍若無人な俺様野郎に育ったのもある意味両親のせいでもあるのだろうか。


 いやまあいいか、とりあえずは禁書庫を含めた王宮書庫の許可だ。



 「父上、私が欲しいのは禁書庫を含めた王宮の書庫への入室及び閲覧を私の友人であるユーディット・ローゼンミュラー様、師であるカリーン・キサラギ様と共に行う事への許可が欲しいのです」


 「ほう、ローゼンミュラー公爵の娘と仲良くなったのか。あの娘は、魔法が使えないとは言ってはいたが、それを補えるほど、いやそれ以上に優秀で教養もあり将来はきっと良い娘になると思いイグナに仲良くしろと釘を刺していたのだが・・・兄より先に妹が仲良くなるとは思わなかったな!」



 父上は普段の荘厳な様子からは想像もできないような人の良いおじさんのように笑う。

 


 「父上からも仲良くしろと言っていたのですか。それなのに兄上は初対面の相手を初っ端から罵倒した挙句、よく話もせずにユディ1人を置いて行ったのですね、はあ・・・」



 私はおもわず溜息をつく。

 言われてたんならせめて最初は仲良くしようよ・・・

 それで会って話しして気にくわないってなるんなら父上に相談して婚約を解消してもらうとかもっと何かあったでしょうよ。

 それに初っ端から自分に相応しくないとかなんとかそんな理由で罵倒して相手を直接傷つけるなんてのは論外だよ。



 「その言い方だとイグナは何か粗相をしたようですね。全くあの子は・・・一度キツく言っておかねばなりませんね」



 「父上!母上!お話があります!」


 

 突如後ろの扉が勢いよく開け放たれ、よく通る声が響き渡る。


 「あら、ちょうどあなたの話をしていたのよイグナ」



 なんだか母上の笑顔が怖い。見惚れるほどに美しいアルカイックスマイルを浮かべる母上の背後に黒いオーラが見える気がする。



 「俺の話?さてはあの欠陥品が何かチクりやがったな。許せねえ・・・あぁ、そうだ!その事で話に来ました。俺はあんな奴と結婚なんかしたくありません!即刻婚約など無かったことにして下さい!」


 「イグナーツ・・・今なんと言った?『欠陥品』なんて言葉が聞こえたが、まさかローゼンミュラー公爵令嬢にその言葉を言ったのではないだろうな」



 なんか空気が重苦しくなってきた。コレメッチャ父上怒ってるよ。

 おこだよ!激おこぷんぷん父上だよ!



 「欠陥品に欠陥品と言って何が悪いというのですか!」



 兄上!どうして!どうして謝らずに火に油注ぐような真似を!

 いや兄上の性格的になんかそんなこと言いそうな予感はあったけどさあ!

 見てこの空気!この重苦しい空気!そして父上の目に見えるような怒りのオーラを!



 「お前のことはよく分かった。だがしかしこれは私からローゼンミュラー公爵に頼み込んで結ばれた婚約だ。対面して数日で婚約解消となったならば、相手の令嬢に問題があったと周囲に思われてしまい多大な迷惑がかかるだろう。それにイグナ、お前は碌に話もせずに一方的に相手を罵るだけ罵ってから立ち去ったのだろう?それならば謝罪もせねばならんだろう?もう一度会って話をし、謝罪をしてからでも婚約解消は遅くないだろう」


 「罵ってはおりません、事実を言ったまでです!無属性など、精霊に愛されてない欠陥品など俺は嫌です!」


 「このたわけ!ではお前の妹、トルーデはどうなる。トルーデは無属性も持っているが他には光と地の属性も所有しておる。精霊に愛されていないなら、トルーデも魔法を使用できない事になるが、光と地の属性に関してなら使用することができておるぞ」



 急に振られてびっくりした。

 そういやそうよね、精霊に愛されなくて魔法が使用できないという理論なら私も魔法が使えないはずだもんね。

 無属性ってやっぱ使い方が分からなくて使えないのか、それか兄貴が言うように無属性だけ精霊の力では扱えないと言うものだったりして、だとしたら他の力で動くとか?


 うーん、全くわからん。



 「な、そ、それは・・・」


 「おお、そうだトルーデ、書庫に3人で行きたいと話していたな。許可してやろう」


 「本当ですか父上!」


 「ただし条件がある。イグナ、お前も心を許せる友人を2人までつけて良いからトルーデと共に書庫に行って学んでこい。最近勉強にも身が入っていないようだからな。ローゼンミュラー公爵令嬢も来るからきちんと謝って来るのだぞ。トルーデから後で、きちんと話をし謝罪をしたのか報告して貰うからな」


 マジ????兄貴と一緒の上全然知らない人(プラス)2人と一緒に行くの?

 ちょっとぼっちにはきつい試練では?


 私が困惑し、父上の方向を見るとなんだか少し面白そうなものを見るような目で・・・あっ、顔を逸らしやがった。

 あれは確信犯だ。


 私に兄貴がちゃんとユディに謝るかを見張らせ、あわよくば2人が仲良くなってついでに兄妹仲も良くなれば良いなと思ってみんなで行ってきてね。と言ったのだろうけど。


 表情と私から後で報告してもらうという発言からして、面白い話が聞ける&娘と話す口実が作れてやったーという感じか?



 「それでは2人とも、おもし・・・良い報告が聞けるように待っているからな」


 

 今おもしろい報告って言おうとしたな。



 「トルーデは今度こそ私とお茶会に参加してもらうわ。逃がさないから覚悟しておくようにね。さてイグナ・・・今から女の子の扱いというものをしっかり、みっちり、私がご教授してあげますからちょっと面貸しなさいな」



 母上は美しいアルカイックスマイルと共にそれはもうとてつもない黒いオーラと重厚な空気、威圧が放たれ、さらに背後には般若の姿が・・・あれ幻覚だよね?なんか見えてはいけないものが見えてる気がするんだけど。



 「はは・・・うえ・・・?」



 流石に鈍い兄上にもこの激オモ&劇おこの雰囲気が分かったのか、蛇に睨まれた蛙のようにその場を動けないでいる。



 「そ、そうだ、トルーデは書庫に行くのだろう。書庫に行く日の昼の食事はお弁当か何かを作って貰うと良いだろうからシェフの所へ一緒に行かないか?私も小腹が空いてしまってな」


 「ぜひ、迅速に、行きましょう父上」



 こうして私は父上と共に、雷が落ちるであろう部屋をそそくさと立ち去り、準備をするのだった。

王様はトルーデと同じタイプなので、食堂にツマミとか間食もらいに行ったり、仕事から逃げて市井に行ったりする困ったやつだけどちゃんとするときは威厳を持ってちゃんとするやつです。

親しみやすいタイプなので支持率は高い。


ちなみに顔については、トルーデは父親似、兄貴は母親似。

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