20 欠陥品とは
「その、先程から仰っている、『欠陥品』とは一体なんなのですか?」
そう私が問うと、ユーディットは俯いて今にも泣きそうな表情を浮かべる。
「欠陥品・・・まだそんなこと言う輩が居たのですね・・・」
「えっ、カリーン先生知ってるの?」
「欠陥品とは、無属性の者を指す差別用語です。通常属性魔法は精霊様のお力を借りて行使するのですが、無属性だけはそれに当て嵌まらないのです。その為、精霊至上主義である者達は得体の知れない無属性は精霊に愛されることの無かった欠陥品だと主張したのが始まりですね。まあ、得体の知れない物を恐れた人間による差別ですから気にしなくていいかと」
「しかし、属性魔法を使用できないのは事実です。属性魔法が使用できない私は精霊様に愛されてはいないのです・・・」
ユーディットは悲しそうに呟く。
いやでも、確かに使用はできないけど・・・
「私も無属性魔法持ってますよ。と言っても、使用することはできていませんが・・・しかし私、他の属性も持っていますし、それらは問題なく使用できるのでおそらく何か別の問題だと思います」
「えっ・・・?」
ユーディットはポカンと口を開け、なんで?と言った表情でこちらを見る。
私チラリとカリーン先生を見る。
「うーん、イメージ不足というか。そうですねぇ、無属性という属性に対しての理解が足りないことが要因なのかもしれませんし・・・なにしろ無属性魔法所持者の記録がほぼないので」
「記録って全くないの?」
「もしかしたら王宮の書庫とか探してみればあるかもしれませんし、最悪私たちのイメージする無属性に関するものを試してみたりだとか」
「無・・・無か・・・全てを消し去るとか?そしたら最初にカリーン先生の頭髪を消し去りますからね私」
「何それこわい」
そういや持っている人って、周囲にほとんどいないし記録も残ってないなら使い方って本当にわからないんだよね。
誰かに習うこともできないし。
よし、決めた!
「じゃあ、ユーディット様、私と一緒に無属性魔法が使える方法、探しませんか?」
「いいの・・・ですか?」
ユーディットはおずおずとこちらを見つめる。
「全然、むしろ嬉しいです!よろしくお願いしますねユーディット様!」
「ふふ、此方こそよろしくお願い致します、ゲルトルーデ王女殿下」
そこには泣きそうな顔をしながらも必死に強がっている令嬢ではなく、嬉しそうに優しくはにかむ可愛い女の子がいた。
「そうやって笑っていた方が可愛いですよ。私の兄の事や周囲からの考えを押し付けられ悲しむならば、今みたいに嬉しいだとか楽しいって事を思い出して・・・そうだ!今日の出来事が兄との辛い思い出だけなんていやですよね?兄の顔なんて忘れて私で塗りつぶしてしまうくらい、ユーディット様がお帰りになられるまで沢山お喋りしたり、沢山遊んだりしましょう!」
うん、辛いことは忘れるに限る!だよね。
「トルーデ殿下ー!あっ、トルーデ殿下!こんな所にいらっしゃったのですね。今日は鍛錬の日では無いのにお姿が見えなかったので探しましたよ」
「ヒルデ!いい所に!ユーディット様、こちらは私の侍女のヒルデです」
「ローゼンミュラー公爵家の娘のユーディット・ローゼンミュラーですわ」
「私、ゲルトルーデ王女殿下の侍女を任されております、ヒルデ・ヴュストと申します」
2人とも見事なカーテシーだ。
私あんなに綺麗にできないよ。
まあ、することあんまないんだけどね、王女だし
「ああ、そうだヒルデ!丁度もう直ぐお茶の時間よね?もう1人分追加することってできる?」
「勿論ですトルーデ殿下。とびきり美味しいものを揃えてまいりますので楽しみになさっていてください」
こうして私は初めてのお友達を手に入れたのだった。
\テレレレッテッテッテー/
ユーディットが仲間になった!




