閑話 ユーディット・ローゼンミュラー
ちょっといつもより長めです。
私はこの国に古くから存在する由緒正しいローゼンミュラー公爵家の娘であるユーディット・ローゼンミュラーと申します。
ローゼンミュラー家は代々魔力保有量が多く、魔法師としても優秀な者ばかりであり、私の父も母もこの国で有数の名のある魔法師です。
娘である私は当然、周囲からの期待はそれはもう大きかったのです。
そうしてやって来た5歳での測定の日。そこで出た結果は、
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ユーディット・ローゼンミュラー(5)
魔力保有量:50
属性:無
固有魔法:鑑定/召喚/星術
スキル:繧ィ繝シ繝?Ν理解/繧ィ繝シ繝?Ν感知
加護:繧ィ繝シ繝?Ν
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私は信じられなかった。
魔力保有量が少ない上に、スキルと加護のあり得ない文字。
さらに父も母も属性が3つあったのに私には無という属性が1つだけ。
周囲からの落胆する声が、雰囲気が幼い私にもこの結果が悪い結果であるという事が嫌でも分かった。
父も母も気にしなくて良いとおっしゃってくれていましたが、無属性を所持している者はおらず、その為指導して下さる方もいらっしゃらない為、私はいつまでたっても無属性魔法を使う事が出来なかった。
固有魔法についても、星術なんて持っている方はいらっしゃらず、召喚魔法についても膨大な魔力が必要な為、私には扱えない。
なので私は唯一使用できた鑑定魔法を伸ばし、また、無属性に何か手がかりがないか書庫に篭り、書物を読んだ。
父に頼み他国の書物も取り寄せてもらった。
魔法がダメならば、他で補わなければと思い、礼儀作法や学問、外交についての勉強なども人一倍取り組んできた。
そんな中突然お父様から私は呼び出されることになる。
「私が・・・王子の婚約者候補に・・・?」
「あぁ、王家からの打診でね。ユーディットが嫌だと言うのならばそれとなく断ろうかとも思うんだけども」
(王子・・・確か見目麗しく、能力も高いと有名な方だったかしら。)
パーティや夜会では、他の方々からの心無き言葉を浴びるのが嫌で、出来るだけ参加せずにおり、参加したとしてもいつも隅の方にいた為遠巻きにしか見たことはなかった。
魔法が使えない私でも必要とされているのならばそれに応えたいと思ったのだ。
(それに王家と婚約したならば、上手くいけば王家の書庫等を見せて頂けるかもしれないわ)
そんな邪な思いも少しばかり抱きながら、私は王宮へと向かうことになった。
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王宮の庭園の待ち合わせ場所に行くと、そこにはまるで物語に出てくる様な見目麗しい王子様が、不機嫌そうな顔をして、従者と共に居た。
すると、こちらに気づいた様で親の仇かと言わんばかりの忌々しそうな表情で私に告げる。
「お前の父親は確かに我が国に多大な貢献をしている。だからといってお前のような欠陥品と婚約になるなど・・・大方お前が我儘を言い婚約者となる為金を積んだのだろう?お前は俺の将来の妃に相応しくない!」
対面して告げられた言葉は私に対する悪意の他の何者でもありませんでした。
『欠陥品』と言う言葉は私に深く突き刺さります。
平民でも少しは使うことのできる魔法を全く使用する事が出来ない、他の方々より能力の劣る私にとてもふさわしい言葉だと思いました。
婚約については、確かに少しは邪な考えもあったかもしれません。
しかしこの婚約は王家からの打診だと、私には嫌なら断っても良いと父は言っていました。
断じて私のわがままからの婚約ではないと自負しておりました。
なのにどうしてここまで言われなくてはならないのだろう、私は溢れそうになる涙を必死に抑えます。
「私はそのような事・・・」
まるで言い訳をしている様な事を思わず口にしてしまい私は後悔した。
「言い訳など聞きたくない!俺はもう帰る。二度と俺の前に姿をあらわすなよ欠陥品」
そう告げると王子は従者達を引き連れ何処かへ行ってしまわれました。
私1人を置き去りにして。
私はとても悔しくて、とても惨めで堪りませんでした。
「私は・・・私は欠陥品で・・・普通になる事なんて叶わないのでしょうか・・・?」
また涙が溢れそうになる。
泣くな、泣くなと必死に自分に言い聞かせる。
「ウワーッ!!!!」
不意に甲高い悲鳴が響く。
「そこにどなたかいらっしゃるのですか!?出てきなさい!」
「申し訳ありません、まさかあんなに驚くとは思わず」
そう言って、先程出したであろう声の主に向かい平謝りをする、全くと言っても良いほど反省していない様な私より少し年上であろう少女が現れる。
東の方の国に伝わる独特の服を身につけた綺麗な方は誰なのだろうと思い、私は思わず鑑定を試みてしまった。
しかし、跳ね返る様な感触を覚え、驚いていると、その少女はニヤリと不敵に微笑む。
しばらくすると、垣根の裏手から、小さくてふわふわとした、小動物の様な小さな女の子が現れた。
まるで本に出てくる幼い天使様の様だと見惚れていると、その女の子は己の小さな口を開き、自分は王女であると告げる。
そういえばと目の前の女の子を見ると、確かにこの国の王家の血筋を引き且つ繁栄の守護を持つ乙女の持つ色と同じ色を持っている。
私は慌てて臣下の礼を取る。
先程の会話はおそらく聞かれて居ただろうし、王子と同じくまた何か言われるのではないのかと考えてしまい身を縮める。
そうすると目の前の小さな王女様は少し考えるそぶりをし、閃いた!というような顔で私を見つめ、お願いがあるのだと言ってきた。
「は、はい!私で良ければ何なりと」
何をお願いされるのか分からないが、王女の機嫌を損ねてはいけないと思いそう答える。
すると王女は顔を赤らめ、少しモジモジとし始める。
なんかさっきから後ろの赤い少女がすっごく面白そうなものを見る目でニヤニヤしている・・・
あの方は一体誰なんだろうか・・・
「実は私、同年代の方々と話したり、交流を行なったりという事を殆どしたことがないのです。なので、お友達になってくださいませんか?」
そう言って王女は上目遣いでこちらを見上げてくる。
なんだかこう、込み上げるものが来た。
王女様には不敬かもしれませんが、実家で飼っているペットがこう、一生懸命おねだりしてくるような思わず撫で繰り回したい気持ちが溢れて来た。
なんだか赤い少女が『分かる・・・』みたいな感じで頷いているのだけれども、彼女、私の心を読んでいるのかしら?
その赤い少女・・・カリーン様からもお願いと提案をされた。
「よろしいのですか・・・私は欠陥品なのですよ?」
恐る恐る尋ねる。
すると王女はきょとんとした顔をしてカリーン様に欠陥品とは何かの説明を求めた。
彼女は知らなかったのだ。
なら知った後も友達になりたいと言ってくれるのだろうか、王子と一緒で欠陥品と分かったなら拒絶されてしまうのだろうか。
なまじ一度は期待してしまった手前、裏切られてしまう事を考えると怖くてたまらなくなった。
王女は何かを考えるような仕草をし、口を開く。
いやだ聞きたくな・・・
「私も持ってますよ、無属性魔法」
「えっ・・・?」
思わず声が出てしまった。
今の私は淑女らしからぬさぞ間抜けな顔をしているのだろう。
そんな私を他所に、御二方は何やら話し始めた。
展開に全くついていけて居ない私は目の前で繰り広げられる会話をただ呆然と眺めるだけだった。
「じゃあ、ユーディット様、私と一緒に無属性魔法が使える方法、探しませんか?」
屈託のない、太陽のように眩しい笑顔を携えそう私に話しかけてくる。
「いいの・・・ですか?」
信じても?
「全然、むしろ嬉しいです!よろしくお願いしますねユーディット様!」
そう言って、王女は嬉しそうに飛び跳ねる。
なんだか飛び跳ねて喜んでいる姿を見るとますます実家のペットを思い出してしまい、思わず笑みが溢れてしまう。
「ふふ、此方こそよろしくお願い致します、ゲルトルーデ王女殿下」
こうして私に大切な大切なお友達が出来たのです。
ゲームのユーディットは、このまま、信じても、期待しても裏切られるだけだと思い、自分の気持ちや感情を抑え込み、『完璧な令嬢』という仮面をかぶることにより、魔法を扱えない弱い自分を封じ込めて生活していきます。
学問や武術など魔法以外の分野で常に頂点を維持し、悪口なども気にしない素振りを見せ、決して弱味を見せず。
王家の命を受け、婚約者として王子を導いていこうとするけれども、相手を信用して居ないなら当然相手からも信用されることはなく、一人で色々行動を起こしていたのが仇になり、最後には皆から罪を押し付けられてしまうとかなんとか。




