表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
ガルド迷宮第7層編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/87

82.完全攻略

 第7層の守護者に挑んだはずの俺たちは、迷宮の管理者ベビンの介入でドラゴンと戦うはめに陥った。

 ギリギリの死闘の果て、なんとかドラゴンを倒したと思ったら、再びベビンが現れた。


「ベビン、貴様ぁっ!」


 奴の顔を見た途端、とてつもない怒りが湧き起こり、俺は拳を握って立ち上がった。


「おいおい、そんな目で睨まないでくれよ。そりゃあ、少しばかりイレギュラーな――ブベラッ!」


 ペラペラ喋り始めた奴に瞬時に駆け寄り、思いきりぶん殴ってやった。

 俺の拳はしっかりとその顔面を捕らえ、奴が2回転ほど地面を転げ回る。

 しかし実際は大して効いていないらしく、頬を押さえながらすぐに立ち上がった。


「いたたたっ。ひどいじゃないか、急に」

「ひどいのはてめえだっ! ドラゴンなんかと戦わせやがって。ほとんど死にかけたし、実際に1人は死んでたんだぞ!」

「そうは言いながら、ちゃんと生き残ってるじゃないか? 致死的なダメージを受けてもその場で仮死状態になるだけで、戦闘終結後に蘇生する仕組みになってたんだよ。けっこう良心的だろ?」

「ふざけんなっ! それを知らなかったから俺たちは死の恐怖に脅えたし、リューナを死なせた責任に苦しんだんだぞ。そもそも7層で8層守護者と戦わせるなんて、汚ねえじゃねえか!」


 俺が大声で怒りのたけをぶちまけると、ベビンが平気な顔で言い訳をする。


「まあまあ、それは君たちが強すぎて、面白くないって話になったからなんだ。7層の守護者はサイクロプスとミノタウロス2匹ずつなんだけど、それだとすぐ倒しちゃうだろ?」

「すぐに倒して何が悪いんだっ!」

「それじゃあ、見ていて面白くないんだよ。だいたい君たちがおかしいんだ。6層のライノサウルスとゴリラだって簡単に倒しちゃうし」

「こっちは命懸けでやってんだぞ。それを面白いとは何事だ! 誰だそんなこと言ってんのはっ?」

「もちろん、迷宮神ヌベルダス様だよ。まあ他の神々も見ているけどね」

「迷宮神、だと?……迷宮が神々の娯楽だっていう噂は本当なのか?」

「もちろんそれだけではないよ。でも迷宮に挑む様子を、神々が見て楽しんでいるのもまた事実なのさ」


 そんな話をしていたら、カインが俺を呼ぶ声がした。


「デ、デイル様、見てください。ドラゴンが……」


 そう言われてドラゴンに目をやると、遺骸が黒い霞に変わって地面に吸い込まれつつあった。


「ベビン、これはどういうことだ?」

「ああ、さっきも言ったよう、この8層はまだ造営中なんだ。だからドラゴンもすぐに魔素に再変換して、造営に使われるんだよ」

「俺たちはまだ素材剥ぎ取ってねーぞ……」

「それについては申し訳ないとしか言えない。鱗を1つだけ残すから、それを討伐証明にすればいい。それから代わりに、いくつか有用なアイテムを準備してるから、それで我慢してくれたまえ」

「アイテム、だと?」

「ああ、こっちに来てくれ」


 仕方なくベビンの後に続くと、壁の一角に水晶が設置されているのが見えてきた。


「君が水晶に触れれば、保管庫が現れるよ」


 また何かをされそうで怖かったが、今さら気にしてもしょうがないと思い直し、水晶に触れてみた。

 すると目の前の岩壁の一部が消え失せ、棚のような空間が現れた。

 その中にあったのは槍と杖、剣の鞘、そしてドラゴンの鱗だった。


「まだマジックアイテムを手に入れてない者に、行き渡るようにした。左から風の魔槍、雷撃の杖、収納の鞘、そしてドラゴンの鱗だ」

「ふーん、カインには槍、リューナには杖が合いそうだな。しかし、収納の鞘ってのはなんだ?」

「どんな大きな剣でも収まる鞘さ。その馬鹿みたいに大きな剣を近づけながら、”入れ”と念じれば収まるよ」


 そう言われたリュートが鞘を手に取り、背中に吊っていた塊剣を取り出し、それに近づけた。

 するとふっと塊剣が消え、鞘から剣の柄が生えた。


「うわっ、本当に入った」


 半信半疑でやっていたリュートが驚いていた。

 身の丈ほどもある塊剣が、今は腕の長さぐらいの小剣になっている。

 次に鞘の柄を掴んで引き出すと、元の塊剣が現れる。

 今まで持ち運びに苦労していた塊剣だが、今後はずいぶんと楽になるだろう。


「その鞘には剣の状態を修復する機能もあるから、切れ味も良くなるよ」


 なんとまあ、砥石の機能もあるってか。


 俺は呆れながら風の魔槍を取り出し、カインに渡してやった。

 それは彼が普段使っているものに近い銀色の短槍だった。

 カインの肩ぐらいまでの長さで、所々に風を模した装飾があしらわれている。


「どうだ? それで風を操れそうか?」

「いえ、まだよく分かりません。なんとなく風を操れるような気はしますが……」

「そうか。少し慣れたら風精霊シルフと契約してみればいい」


 カインと話をしていたら、シルヴァが口を挟んできた。


(いや、主よ。その槍を使って我に”進化”の呪文を唱えて欲しい。そうすれば我と槍がつながって、両方の力が上がるような気がする)

「お前が槍と契約するってことか?」

(いや、我はすでに主と契約しているから少し違う。おそらく我と槍が魔力の経路でつながり、契約に似たような状態になるのだと思う。使役リンクでつながった仲間なら、その力を使えるだろう)

「ふむ、そういうことか。たしかにこの炎の短剣とバルカンも、つながったみたいだしな」

(そのとおりだ、主。我と短剣が魔力経路でつながったので、主自身も強力な火魔法が使えるようになっているぞ)


 炎の短剣のことをバルカンが補足してくれた。

 どうやら俺自身にも、火魔法が使えるようになったらしい。


「分かった。それじゃあシルヴァをもう1段階進化させてみるか」


 俺はシルヴァに風の魔槍を当て、呪文を唱える。


『我、デイルの名において命じる。汝の存在を解き放て、進化レヴォリューション!』


 するとシルヴァが光に包まれ、進化が始まった。

 やがてそれが治まった先には、ひと回り大きくなった彼がいた。

 暴風狼テンペストウルフであることに変わりはないようだが、風の魔槍とつながり、より強い風魔法が使えるようになったみたいだ。

 彼はそのことに、とても満足そうな顔をしている。


「さて、こうなると、次にやることはひとつだな」

(もちろん次は僕の番だよね~)


 俺が雷撃の杖を手に取ると、すかさずキョロが駆け寄ってきた。

 さっきから尻尾をブンブン振りながら、順番を待っているのは知っていた。

 俺は何も言わずに杖をキョロに当て、再び呪文を唱えた。


『我、デイルの名において命じる。汝の存在を解き放て、進化レヴォリューション!』


 キョロの体が光に包まれ、それが治まるとふた回りほど大きくなった彼が現れた。

 以前が狐サイズなら、今は狼サイズだ。


(うわー、凄いよ凄いよ、ご主人。今までより何倍も強くなった感じ~)


 そう言いながら放つ雷撃は、たしかに今までよりも遥かに強力だった。


 そんなキョロの進化を感じ取ったのか、近くに寝かせておいたリューナがようやく目を覚ました。


「ンッ、ウーン……あれ、私どうしたんだっけ?」

「リューナ、目が覚めたか。よかった、本当によかった」


 俺はすぐさま彼女に駆け寄って抱き締めた。


「に、兄様?……そういえば私たちはドラゴンと戦っていたはずなのに……兄様は勝ったのですか?」

「ああ、そうだ。俺たちは勝ったんだ。だけど途中でお前は、ブレスを食らって死んだみたいになった。だけど実際には仮死状態になる仕組みだったらしくてな。おかげでこうしてまた、お前を抱き締められる」

「そうだったのですか……こうして一緒にいられるだけで、私は幸せなのです」


 リューナが心底ほっとしたように、俺に頭を寄せる。


「俺もだよ。お前を失ったと思った時の絶望感ときたら、耐えられないものだった。だけどこうして生き残り、こんな物を手に入れた」

「なんなのですか、これは?」


 俺が雷撃の杖を差し出すと、彼女がそれを受け取って興味深そうに眺める。

 この杖は彼女の胸ぐらいまでの長さで、その一端に紅の宝玉が付いていた。

 太さは親指よりも少し太いぐらいで、材質は何かの木だろう。


「これは雷撃の杖といって、すでにキョロとつながっている。おそらくリューナにも、雷魔法が使えるようになってるはずだ」

「その杖には魔力制御をサポートする機能もあるよ。だから竜人魔法も、ずっと上手く使えるようになってるはずだ」


 俺の説明をベビンが横から補強してくれた。

 なんと魔力制御まで向上するらしい。

 今まで竜人魔法の制御に苦労してきたリューナにとっては、何よりのご褒美だ。


「本当なのです。この杖からいろいろな物が伝わってきます。ちょっと試してもいいですか?」


 今にも大規模魔法をぶっ放しそうなリューナを慌てて押し留め、俺は改めてベビンに向き合った。


「さてベビン、これで終わりか?」

「ああ、これで全てだ。あとはそこの水晶で地上へ戻るといい」

「そうか。ちなみに8層侵入資格はこれで取れるんだろうな?」

「いいや、9層侵入資格だ。当たり前じゃないか、8層の守護者を倒したんだから。それで7層の守護者部屋への転移も可能になる」

「なるほど……ところで、8層はいつ頃でき上がるんだ?」

「分からないね。地脈から取り込む魔素の量にもよるし、迷宮に入り込む冒険者の数でも変わる」

「冒険者が多いほどいいのか?」

「ああ、そうだよ。いずれにしても、まだ何十年も掛かると思うけど」

「そうか。それならとりあえず完全攻略ってことだな? 俺たちは」

「そういうことになるね。改めて、おめでとうと言わせてもらおう、ドラゴンスレイヤー デイル」


 そう言ってから、ベビンはスーッと石壁の中に消えていった。

 おそらく自分の居場所へ帰ったのだろう。


 それを見送ってから仲間たちに向き合った。


「聞いたとおりだ。俺たちはこの迷宮を制覇した。だから、次は別の目標を目指す」

「というと、いよいよ魔大陸ですね」


 カインが俺の言葉を代弁する。


「そうだ、魔大陸へ渡って奴隷狩りを駆逐する……しかし、それは少し先の話だ。地上へ帰ったらまずは宴会だな。そして、改めて言わせてもらおう」


 俺は一拍おいて、最後の言葉を口にした。


「みんなありがとう。お前たちと仲間になれて、本当に良かった」


 次の瞬間、8層の広大な空間に、仲間の歓声が響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。

エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~

亡国の王子が試練に打ち勝ち、仲間と共に祖国を再興するお話。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ