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迷宮探索は妖精と共に  作者: 青雲あゆむ
ガルド迷宮第2層編

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20/87

20.ビキニアーマー

 サンドラから魔力斬まりょくざんを習った翌日、俺たちは朝からギルドに来ていた。

 カインとサンドラに、盾の使い方を学ばせるためだ。


 ついでに俺とレミリアの剣術も見てもらう。

 俺の方は大して進歩してないが、レミリアの双剣はどんどん様になってきていると褒められた。

 まあ、俺は後衛職だからな、ハハハ。



 午前中をギルドでの訓練に充て、昼飯後に迷宮へ潜った。

 シャドーウルフで魔力斬を試すべく、入り口の水晶から2層の水晶へ跳ぶ。


 さらにそこから守護者部屋を通って1層深部へ入り、シャドーウルフを探した。

 シルヴァに数が多めの群れを探してもらうと、すぐに4匹の狼が見つかった。

 奴らにはこれから、覚えたての魔力斬の実験台になってもらう。


「カインは正面を押さえておいてくれ。他は目についたやつを魔力斬で各個撃破な」


 俺は念のため弓を準備しながら、皆の攻撃を観察した。

 まず身軽なレミリアがシャドーウルフに迫り…………スパンッと狼の首が飛んだ。

 その横ではサンドラが盾で牽制しつつ…………ブシュッと正面から串刺しにした。


 さらにシルヴァが3匹目の喉笛を食いちぎり、最後の奴はカインに撲殺されてしまう。

 どうやら俺たちは、思った以上に強くなっているようだ。


 レミリアたちが嬉しそうに寄ってくる。


「この間とはケタ違いの切れ味でした、ご主人様」

「妾の攻撃力も上がっておるぞ、我が君」

「俺のメイスも、一撃で仕留められました」


 全員が魔力斬の威力を実感できたようだ。


「そうか、みんな良かったな。どうやら1層じゃあ、実力差が大き過ぎるみたいだから、やっぱり2層へ行こうか」

「はい、今だったらオークにも勝てるような気がします」


 ちょっと自信を持ち過ぎな気もするが、この状況では仕方ない。

 俺たちは魔石と素材を回収し、そのまま2層へ侵入した。



 カインたちを仲間に入れて初めての2層探索だが、今までとは段違いのスピードで進んだ。

 2人が加わって戦闘力が飛躍的に高まっているため、出てくる魔物を片っ端から倒せるのだ。

 以前は周辺にゴブリンの集団が2個以上いたら、絶対に戦闘を避けていた。

 しかし今なら、10匹やそこらのゴブリンなど敵ではない。


 まずカインとサンドラが盾で正面を支えながら、ガスガスと魔物にダメージを与える。

 その横ではレミリアとシルヴァが華麗に動き回り、サクサクと魔物を仕留めていく。

 おかげで合成魔法を使うチャンスまでなくなってしまい、チャッピーの強化のために獲物を少し回してもらったほどだ。


 まだ2層も序盤なのでオークに遭遇することもなく、その日はゴブリンやコボルドを30匹ほど狩って終わった。

 シャドーウルフも合わせると銀貨70枚ほどの収入となり、半日の仕事にしては良い稼ぎだった。



 けっこうな収入に気を良くした俺たちは、帰りに武具屋を覗いてみた。


「おっちゃ~ん。俺の弓をもっと強化したいんだけど、いいの有る?」

「おう、もう初心者用の弓じゃあ、物足りなくなってきたか?」

「そうなんだ。この間、2層でオークに遭ったんだけど、硬くてさ~」

「何だと? お前その歳で、もう2層に潜ってんのか? 大したもんだ。それなら、ちょっと値は張るが、この合成弓はどうだ?」


 おっちゃんはそう言って、複雑に加工された弓を勧めてきた。


「へえー、けっこう小さいのに威力は高そうだね」

「ああ、それは良質な木材に魔物の腱や角などを組み合わせ、形状を工夫したもんだ。初心者用の単弓よりも、ずいぶんと威力は高いぞ。少々弓を引く力はいるが、お勧めだ」


 念のため店の裏で試し撃ちをさせてもらったら、期待どおりの威力だったので買うことにした。

 値段は金貨3枚と今までの6倍もするが、この威力は買いだ。


「いい買い物ができたよ。また何かいいのがあったら教えて」

「おう。ところで、鬼人の嬢ちゃんにピッタリのものがあるんだがなあ」


 そう言って武具屋のおっちゃんが、赤い何かを出してきた。


「へえ、鬼人向けの装備なんて珍しいね……って、おっちゃん、これビキニアーマーじゃん!」

「そうだ。何年か前に引退した女冒険者から、買い取ったもんだ」

「こんな恥ずかしいの、サンドラが着るわけねーだろうがっ!」


 何考えてんだこのエロジジイ!


「待て待て、早まるな。この鎧はな、魔法が掛かっているから身体能力が強化されるうえに、全身に革鎧並みの防御力が付くんだ。しかも汚れてもすぐに綺麗になる浄化機能と、温度調節機能も付いてて快適なんだぞ」


 なんだそりゃ、メチャクチャ高機能じゃねーか。


「マ・ジ・で? たしかに鬼人は肉体が頑丈で鎧を付けないから、それがアーマーで強化されるってのは嬉しいのか。それにしても、この露出度はちょっとなあ……」

「何言っとる? その嬢ちゃんだって短パンと胸当てだけだから、そんなに変わらんだろうが」


 おっちゃんが言うように、鬼人は最低限の衣服しか着けないので、概して露出度が高い。

 なぜ最低限の衣服しか着けないかというと、魔力で肉体を強化できるからだ。

 その肉体の最大強度は金属鎧に迫るとも言われ、衣服は最低限にして動きやすさを優先している。

 まあ、普通の服を着ないのは、彼らの文化って話もあるが。


 俺は一応、サンドラにこれが欲しいか聞いてみた。


「サンドラ、こんな鎧欲しいか?」

「我が君、妾はこの鎧が欲しいのじゃ。これを着れば今よりもっと役に立てるし……何よりも我が君の前でいつも綺麗きれいでいられる」


 彼女はそう言いながら、頬を染めた。


 そっちか?

 たしかに浄化機能は女の夢かもしれんが、防御力はいいのか?

 いや、この場合は今より防御力が上がるんだから、いい事尽くめか。


 しかしあんな破廉恥はれんちな恰好を、他の男どもに見せたくはない。

 サンドラは俺のもんだ、などと悩んでいたら、今度はレミリアが絡んできた。


「ご主人様、私もこれ欲しいです。店主殿、もう1着ありませんか?」


 はあ? 何言ってんだ、レミリア。

 お前にこんな恥ずかしいカッコ、させねーぞ。


「おっ、そっちの嬢ちゃんも目が高いね。実は色違いでもう1着あるんだ」


 そう言って青いビキニアーマーを出してきた。

 このエロ親父、最初から狙ってたな?


「ちょっと待て。サンドラはまだしも、レミリアには無いぞ。レミリア! 皮鎧並みの防御力だと今より弱くなるんだぞ。これからもっと強い魔物と戦うのに、危ないじゃないか」

「いいえ、ご主人様。魔物の攻撃なんて避ければいいんです。身体能力が上がるなら、今より早く動けます」

「そのとおりだ嬢ちゃん。気に入った、2着目は半額にしてやる」


 このじじいー、何言ってくれてんだ。

 レミリアの玉の肌を他の男に見せるなんて、絶対に許さんっ!


「ダメだ! こんなエロい鎧姿を他のやつに見せるなんてありえんっ!」


 そう言ってごねたら、おっちゃんが妥協案を提示してきた。

 何々、胸の谷間や股間を隠す飾り布をオマケに付ける?

 それから人前ではマントを羽織らせればいいって?

 たしかにそれなら多少はマシになるかもしれんな。


 そんなやり取りをするうちにまずは試着をという話になり、奥の部屋へサンドラとレミリアが消えていった。

 やがて出てきた2人を見て、俺は言葉を失う。


 彼女たちの登場で、店の中が一気に明るくなったような気がした。

 サンドラは赤色のビキニ、ブーツ、籠手のセットに灰色のマント。

 レミリアは青色のビキニ、ブーツ、籠手のセットに薄茶色のマント。


 それぞれのパーツには銀灰色の装飾が付いていて、なかなかオシャレだ。

 そして、胸元と腰の前後が飾り布で隠され、エロさがちょっとだけ緩和されている。

 何より2人ともスタイルが良いので、凄く映える。

 ちなみにサイズ調整の魔法が掛かってるので、大きさもピッタリだ。


「ゴクリ……2人ともよく似あってるよ。凄く綺麗だ」


 そう褒めると、彼女たちが嬉しそうに頬を染めた。

 おっと、その格好で恥じらうとか、もうたまらん。

 これは夜が待ちきれないぜ。


 仕方ない、このビキニアーマー買うか。

 これはパーティのためだからな、フヘヘッ。


「ま、まあ、能力的にも嬉しいから、買ってもいいかな。でも俺以外にはあまり見せないようにな」

「はい、ご主人様」

「もちろんじゃ、我が君」


 そして代金を聞くと、なんと2着で金貨6枚と言われた。

 たけーよ、おっちゃん。

 貯えのほとんどが飛んでいくじゃねーか。


 しかしおっちゃん曰く、今までずっと買い手が付かなかったので、これでも安くなっていて、ほとんどもうけは無いそうだ。

 俺はきっと戦力増強に役立つと信じ、泣く泣く代金を払った。




 思わぬ高い買い物を済ませて帰宅した俺たち、夕食とシャワーを済ませてリビングに集まった。

 今日の反省と今後の相談をするためだ。


「とりあえず、魔力斬の強力さはしっかり確認できたね。たぶんオークにも効くと思うけど、実際に戦うまでは油断しないようにいこう」


 今日の狩りがあまりにも楽勝ムードだったため、釘を刺しておく。


「カインは盾とメイスの使い勝手はどうだった?」

「はい、まだ使い慣れませんが、俺に向いていると感じました」

「うん、俺もそう思った。今後は盾で敵の攻撃を弾いたり、相手にダメージを与える技術を磨いたりすると、幅が広がっていいんじゃないかな」

「分かりました。練習してみます」


 カインの方はこれでいいだろう。


「それからサンドラとレミリアは、新たな鎧の使い心地はどう?」

「はい、なんだか体全体が何かに包まれているような、不思議な感覚です。しかも暑さや寒さの変化が少なくて、凄く快適なんです。呪文ひとつで体も綺麗にできるし、もう癖になりそうです」

「まったくじゃ。これでいつも我が君の前で美しくいられるわい。今夜どうじゃ? ほれ」


 武具屋の言っていた機能はしっかり働いているようだ。

 ついでにサンドラが胸を持ち上げ、俺に見せつけてきやがった。

 その見事な谷間に視線が釘付けになりかけたが、鋼の意志でスルーする。


「そうか、快適な装備ってのはうらやましいな。防御力については明日、訓練場で試してみよう。それなりに使えるようなら、レミリアはよりスピードと回避を重視したスタイルに変更だな。サンドラは……今までどおりでいいか。でも2人とも鎧の力を過信して、無茶しないようにな」

「はい、ご主人様」

「ちっ、了解じゃ」


 その後はまたカインとサンドラに魔力を注いだ。

 2人とも日に日に体が逞しくなってきている。

 初めて見た時はあばらが浮き出ていたのに、今は筋肉が付いてきて肌に張りもある。

 あと1週間ほど治療を続ければ、ほぼ元に戻るだろう。



 ひととおりの治療を終えて、俺たちは寝室に上がった。

 さーて、ようやくビキニのレミリアとグフフ、とか考えていたら、彼女が何か言いたそうにしているのに気が付いた。

 問いかけようとすると寝室のドアがノックされ、返事をしたらサンドラが入ってきた。

 一体何のつもりかと思っていたら、彼女たちが並んで俺の前に立つ。


「ご主人様、今日はサンドラにお情けを頂けませんか?」


 予想外のことを言い出すレミリアの横で、サンドラが顔を真っ赤にして俯いている。

 俺に受け入れてもらえるかどうかが不安で、堪らないのだろう。

 しかし、なんでレミリアが仲介する?


「えーっと、レミリアはそれでいいの?」

「はい、奴隷の身で夜伽に口出しなど、身のほど知らずとは存じますが、ご主人様のためにはこうするのが一番だと考えました」


 彼女が真っ直ぐに俺の目を見つめてくる。

 その態度から、これは彼女なりに考え抜いてのことだと察しが付いた。


 俺だって気がついてはいた。

 サンドラが俺に惚れていて、俺と一緒に寝室に入るレミリアを羨ましそうに見ていたことを。

 サンドラは大柄だけど、凄い美人でスタイルも抜群だ。

 彼女を強く女として意識しつつも、レミリアを傷付けてしまいそうで、中途半端な状態のままにしていた。


 レミリアはそんな俺の迷いとサンドラの想いを見抜き、こうすることを決断したのだろう。

 俺がサンドラに乗り換える可能性だって理解しているだろうに。

 俺は2人を抱き寄せ、こう言った。


「ありがとう、レミリア。自分のことよりもパーティのことを考えてくれたんだな。君がそう言ってくれるなら、俺は2人とも同じように愛するよ」


 そう言ってレミリアの唇を奪い、しばらく楽しんでからサンドラにも同じようにしてやった。

 すると、早くも足に力が入らなくなったらしい2人をベッドに寝かせると、俺も引き込まれた。


 その晩は、夢のような世界を満喫した。

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新作始めました。

エウレンディア王国再興記 ~無能と呼ばれた俺が実は最強の召喚士?~

亡国の王子が試練に打ち勝ち、仲間と共に祖国を再興するお話。

― 新着の感想 ―
[一言] 時々、主人公の言動にイラッとさせられる。そういう性格を狙って作者さんが作り上げてるのだろうけど、まさに作者の狙い通りに乗せられてしまった。
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