表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/48

41、如月2月 その1 鬼と節分

「おにはーそとー! ふくはーうちー!」

子どもたちの元気な掛け声が聞こえてくる。子どもたちは思い思いにその手に持ったお手玉を鬼めがけて投げつける。その鬼と言うのが、2年G組のいつものメンツだった。


 はじまりは、恋の言葉だった。

「幼等部で節分?」

「そうそう、そのボランティアにお願いしたいって伯母さんから」

そういって1枚の紙を取り出す。それは幼等部のお知らせ用紙。そこには2月の初めに行われるのであろう豆まきのお知らせが書いてあった。

「毎年伯母さんと葵さんとで鬼をやるらしいのだけど、今年はなんか忙しいらしくてね」

「で、俺たちにお鉢が回ってきたわけか…」

「へぇ、これ見る限り面白そうじゃん」

夏希がお知らせ用紙を見ながらつぶやく。毎年何かしらシナリオ仕立てらしく、子どもたちも毎年楽しみにしているらしい。

「せっかくだし、どうかなと思って」

「いいんじゃない? 学院長のお願いでもあるんだし」

「そう言ってくれると助かるー」

そうやって決まった幼等部の節分のボランティア。しかし、思ったよりハードな事態で。


「まさか、こんなシナリオ仕立てだとはなぁ」

そうやって赤鬼のお面を持っている都。その隣で同じように青鬼のお面を持って柚樹が頷く。さらにその隣では、みっさんが緑鬼のお面を持っていた。

「鬼が先生を攫うとかなんか昔やったようなやつやな」

「まあそれが、子どもたちが1番やる気出すんでしょ」

シナリオはこうだ。鬼が宝を持って現れ、先生を攫って行く。体育館についたら、海に設定されたブルーシートに入らないところから鬼に向かってお手玉を投げるということだ。ちょっとしたレクリエーションもかねているらしい。

「お手玉ってとこが良心的だよなぁ…」

「豆は痛いし、掃除大変だからねぇ」

私たち女子は、子どもたちの誘導役だ。先生たちが一時的にいなくなる状態ができるための配慮らしい。

「ってこれ毎年学院長たちでやってるんだ…」

「そうなるねー」

恋がのんびりとみんなの言葉に返事をする。そんなこんなしていると担当するクラスの先生に呼ばれた。

「それじゃ、頑張ってね~」

と男子たちに手を振りつつ私たちはクラスに行く。クラスの子たちはみんな思い思いにお手玉を持っていた。

「はい、いいですか。鬼さんたちがきてもまだ投げちゃだめですよー」

先生がみんなに言い聞かせているのを見るとさすがだなと思う。そんなことを思いながら子どもたちと遊んでいると、鬼に扮した都たちがきた。季節外れの三クロースのような袋を持って。そしてそのまま先生の腕をつかむ。

「先生を返してほしくば体育館まで来い!」

柚樹が迫真の演技で先生を連れて体育館まで行く。よくよく見ると先生が主導を取っているのだが、パニックになった子どもたちはそんなことわからない。大騒ぎする子、泣き出す子までいる始末。

「よし、みんな! 先生を助けに行こう!!」

恋が掛け声をかけると、子どもたちがはっとしたように恋の後についていく。そして体育館につくと、ブルーシートの敷かれた奥に先生たちがいる。

「よし、みんな海に入らないようにここから鬼退治だー!」

その恋の掛け声に合わせて子どもたちはお手玉を一斉に投げ出す。そのあいだに私たちは、橋となる新聞紙の準備。柚樹や都たちがが痛そうに応戦してるように見せつつだんだんと後ろに下がっていく。そして一気に駈け出して逃げていく。その様子に子どもたちから歓声が上がる。

「よしじゃあ橋を渡って先生を助けに行こう」

恋がそう言うとつなげてあった新聞紙を取り出してブルーシートの上に置く。子どもたちはそれぞれその新聞紙の上を歩いて先生のもとに行く。と、子どもの一人が残された袋に気付いた。よくよく見ると、「宝」と書かれている。

「せんせーい、これはー?」

「鬼さんが置いていった宝だねぇ」

「鬼さんに返さなくていいのー?」

「じゃあ鬼さんをもう1回呼ぼうか。せーの」

「「おにさーん」」

さすがに呼ばれては出てこないわけにもいかず、都たちがもう1回でてくる。そうして一言。

「これは勇敢な君たちにやろう」

そう言ってもう一度逃げていく。その様子におかしくなった私たちは笑った。子どもたちが袋を開けて中身を見ては思い思いに喜んでいる。

「よーしじゃあお部屋に戻ろうかー」

先生がそう言うと、だれともなくみんなで袋を持ってクラスに戻っていく。その様子を見ながら私たちはあてがわれた部屋に戻った。


「お疲れー」

私たちが声をかけると、疲れ切った都と柚樹がいた。みっさんはまだまだ平気そうな顔だが。

「なんで子どもってあんな元気なんだよ…」

「お手玉といえどあんなに痛いものなんだな…」

そんな話をしていると、先生がまた戻ってきて私たちに何かを手渡していく。それは小さなお菓子袋だった。

「思ったより大変だったでしょ?」

そんな先生の言葉にうなずきつつも、子どもたちの顔を思い出す。そして思い思いに笑会った。

「でも、楽しかったです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ