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42、如月2月 その2 バレンタインには甘いものを

 2月の13日。次の日はバレンタインという、女の子たちにとっては大切であろう日の前日。私はみんなと一緒に恋の家のキッチンにいた。それはもちろんチョコを作るためだ。ただなぜか、みっさんも一緒にいて…。


「なになに夜宵? あんたがチョコ作りたいとか珍しいわね」

きっかけは、夜宵の数日前の相談からだった。ちょうどバレンタインの日に打ち合わせがあるからせっかくだから差し入れに持っていきたいとのことだった。

「そっかー」

「バレンタインかー」

松崎姉妹が考えるように首をかしげる。そして、2人同時に手を叩く。

「せっかくだから私たち」

「先輩たちにあげようかな」

彼女たちの言う先輩たちとは、各々の部活の先輩たちのことだろう。里羅も口元に手を当てて考えている。そして顔をあげる

「もしみんなで作るんだったら、私も一緒にいい? せっかくだし、日下さんに渡そうかな」

そんなみんなの言葉に顔を輝かせて頷く恋。

「もちろん! らいらちゃんはどうする?」

私も考えるが、渡すような相手はいない。そのまま考え込んでいると、里羅からそっと耳打ちされた。

「おばあさまとおじいさまに渡したら?」

私が頷くと、恋が笑った。

「じゃあみんな明日にでもうちにきなよ。材料は揃えておくから、エプロンだけは忘れないでね」

そうして私たちのバレンタイン計画は始まったのだが。


「みっさんが作ったザッハトルテがおいしかったのよ」

恋がみっさんを呼んだ理由はこうだった。それよりもみっさんがお菓子作りをすることが意外なのだが。

「どっかの誰かがさんざんお腹すいたってうるさいから、一通り覚えたんだよ」

そんな私の気持ちをわかってなのか、みっさんが口をはさむとみんな納得したように頷く。恋だけは納得いかないようにむくれていたけど。

「とりあえず、恋に言って材料は揃えてもらったから。あとはまあ言うとおりにしてくれればいいんじゃないか。恋に手は出すなって言われている」

そう言うとエプロンをつけて颯爽とキッチンに入っていくみっさん。やけにその姿は似合っていた。

「なんか似合ってるね、みっさん」

夜宵がぽつりとつぶやく。里羅も思っていたのか小さくうなずいた。

「ほら、早くしろよー」

私たちが立ち止まっているのを待ちかねたのかみっさんがキッチンから顔を出して声をかけてきた。その言葉にはっと気づいた私たちはいそいそと準備を始めた。


「うん、そうそんな感じ」

みっさんが細かく教えてくれるおかげで、私たちのザッハトルテづくりは順調に進んでいた。恋も珍しくおとなしくしている…というと語弊があるけれど、いつもよりおとなしいのは確かだ。

「前にみっさんが料理しているときにキッチン入ったらこっぴどく怒られたんだって」

里羅に理由を聞くとすんなり教えてもらえた。

「やっぱり邪魔はされたくないんだね」

「まあみっさんはしっかりやるタイプだしね」

そんなことを言っているとみっさんから叱咤が飛ぶ。

「しゃべってもいいけど、手を動かせよー」

そういう言葉を聞くと本当に先生みたいだった。

 そうこうしているうちに無事にできあがったザッハトルテは見事なものだった。まるで普通のケーキ屋さんに並んでいるみたいな。

「しかし、夜宵。お前分量はめちゃくちゃ精密に測るのになんで最後の最後で手を抜こうとするんだよ…」

「えーと…。なんか…気が抜けた?」

「気が抜けたってお前なぁ…」

そうしてラッピングまで終えるとお店に並んでいるものと遜色ないものに仕上がった。できあがったものを見てみんな溜息をつく。

「お疲れさん。で、明日頑張れよ」

そうしてエプロンを外してキッチンを出ていくまで様になっているみっさんだった。


 みんなそれぞれ、いろいろな思いを巡らせたまま、出来上がったものを持って家路についたのだった。


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