30、霜月11月 その2 夜宵の話
久納夜宵はゲーマーである。古今東西問わず様々なゲームに手を出す。そんな彼女を満足させるゲームはまだない。
「とか言ってもなぁ」
夜宵は一人つぶやく。早朝の教室、まだだれも来ていないほど早い時間。普段ならこんな早くはこないはずなのだが、暇を持て余していたため行動が早くなっていたのだった。
「あー暇」
そう言って机に突っ伏す。しかし、1か月ほど前までの忙しさが嘘のように今現在では時間が余りすぎている。
「まさかお仕事がお休みになっただけでこんな暇になるとはなー」
夜宵はゲーマーであり、プログラマーだ。その筋の人なら知らない人はいないくらいの有名な。しかし、彼女がプログラムするのはゲームのみ。面白いことにこだわった結果だった。
「おはよーって夜宵!?」
普段なら1番に教室にくるであろう里羅が夜宵を見て声をあげる。
「あ、里羅。おはー」
「…今日雨とか雪とか槍とか降らないわよね」
ひどい言いぐさである。確かに珍しいことではあるのだが。
「ひと段落ついたのー」
夜宵がそう言うと里羅は察したように頷いた。そこは慣れた友人である。
「で、なんで机に突っ伏してるのよ」
「ひーまー」
「暇っていつもならゲームとかしているんじゃないの?」
「ネタバレ同然のゲームって面白いと思う?」
今世間で出回っているゲームの半数近くが夜宵のプログラムがもとになっているらしい。そうなるとものすごい規模だが、結局占めているのは2つ3つの会社なのだが。
「まあ確かにあんまりおもしろくなさそうね」
そんな話をしていると、教室に続々とクラスメイトが入ってくる。その誰もが、教室にいる夜宵を見て驚いたような顔をする。
「あら、夜宵。今日は早いのね」
声をかけてきたのは恋。後ろに満もいる。
「その様子だとひと段落ついたんだな」
「んーまあね」
「おはーって夜宵!?」
柚樹が夜宵を見て驚く。その後ろから都もきて固まった。
「珍しいからって失礼すぎないか…」
恋が肩を叩くと柚樹と都がはっとしたようにしてフリーズが解ける。
「その表情すっげー暇だって言ってる」
「うん暇」
真澄と夏希がらいらと一緒に教室に入ってくる。
「おはよう、みんな」
「おっはー、おや今日は早いんだね夜宵」
そのまま夏希のタックルの餌食になる夜宵。力加減はされているのだが、さすがに痛い。そのまま背中に乗られている。
「夏希重い」
「女の子に重いって言うなよー」
「とりあえず降りて」
というと夏希はすぐに夜宵の上から降りる。夜宵がその勢いのまま体を伸ばすと、掲示板に張ってある広告が見えた。新聞に入れられていたやつを誰かが持ってきて張ったのだろう。
「ふーん、スイーツかー」
「何々? 興味ある?」
真澄が目を輝かせて聞いてくる。どうもチラシの犯人は真澄なようだ。
「放課後にでも行く?」
「行く? 行く!」
そうしているうちに始業のチャイムが鳴って授業が始まる。放課後はスイーツショップだ。
翌日、いつものように遅刻ギリギリできた夜宵の口から一言。
「またお仕事できちゃった。今回は何徹するかな…」




