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「アリスさんの席はあちらの空いている席です」
「はーい」
いよいよ王子との出合いイベントだ。
後ろの席へと歩いて行くヒロインが、王子の席の近くで転び王子に助け起こされるんだけど・・・
「きゃっ」
やっぱりヒロインそこで転ぶんだ。私がゲームの通りだと感心していると、ヒロインを心配する声が聞こえた。
「大丈夫?」
ヒロインは心配して差し伸べられた手を取り、助けてくれた相手を見て頬を赤く染める。
「ありがとうございます。あの、あなたのお名前は?」
「どういたしまして。私の名前はエリザベスよ」
「エリザベス様、ありがとうございました」
エリザベスに再び礼を言いヒロインは席に着いた。
そう、エリザベス!!本来ならばここは王子の役目。それが何故エリザベスになったかというと、王子とはクラスが違うから。もっと言えばこのクラスに男子生徒はいない、女子だけのクラスだ。
出合いイベントは無くなったけど油断はできない。どこかで王子に会い恋に落ちる可能性はまだある。でも私はそれほど心配はしていない。
この4年の間、攻略対象者との接触を諦めた私は、我が家が無くなる状況を考えた。
まず、お父様が悪事に手を染める可能性、けれど家は権力はあるし、お金も領地も王家に匹敵するくらい、ううん、もしかしたらそれ以上ある。それにエド兄様が隣国の王女と結婚して昨年男の子が生まれ、お父様は兄様に爵位を譲って隠居したがっている。そんな中で悪事に手を染めるとは思えない。
流行り病で皆が亡くなる可能性も考え、治癒魔法の勉強を頑張り、元々の魔力の高さと相まって私はこの国一番の治癒魔法使いになった。私も病に倒れた場合も考え、アル兄様の前で具合が悪い振りをし、心配したアル兄様が国内外の治癒魔法使いを集めたので今この国の医療水準は非常に高い。
他に何も思い付かなかった私は、最後にあるひとつの賭けに出た。
それは、王太子の正装を変更させるということ。
王太子の正装は“漆黒の軍服”。王太子は軍の最高司令官でもあるので“軍服”は変えられない。ならば色を変えれば良いのではないかと考え、アル兄様にお願いした。
「王太子の正装の色を漆黒から純白に変えて下さい」
「フィーのお願いは何でも叶えてあげたいけど、それは難しいかな」
王位継承に黒髪条件があるこの国は、若干黒色史上主義があるのだ。
「この前、孤児院の慰問に行く途中の教会で結婚式があって、純白の衣装を着た新郎新婦が凄く素敵だったんです。私もそんな結婚式を挙げたくなったんです」
「純白のドレスを着たフィーは綺麗だろうね」
「はい。それで旦那様にも純白の装いをしてもらいたいんです。アル兄様の正装は漆黒ですよね。だからお父様には、アル兄様以外の人を婚約者に選ぶようお願いします」
「ハハハ、何を言っているのかなフィーは。私の正装は純白だよ。だからフィーは私と結婚するんだよ」
こうして私は王太子の正装である“純白”の軍服を着たアル兄様と婚約誓約書を交わし、学園卒業後に王太子の正装である“純白”の軍服を着たアル兄様と結婚式を挙げる。
“漆黒”の軍服はもう王太子の正装ではなく、誰が着ようと問題はない。ヒロインが王子ルートにいっても他のルートにいっても私には関係ない。
ただ私に他の男性を近付けたくないアル兄様が、学園内で男子生徒と女子生徒が接触できないようにしたので、ヒロインが誰かと恋に落ちるかは不明である。




